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猫はなぜニャーと鳴くのか

私の実家では、猫を3匹飼っている。

もともと、今は亡き祖母が可愛がっていたアメリカンショートヘアの老猫が1匹(私の中のあだ名は「ねこ」)。

そして、黒猫が2匹である。

この黒猫というのが大変紛らわしいのだが、1匹は半ノラ猫(メス)で正しいあだ名は「くろちゃん」、もう1匹は完全なるノラ猫(オス)で、あだ名は「忍田くん」と言う。

ここで、なぜかこのnoteにたどりついてしまって、読んでしまった、勘の鋭い人は思うだろう。

え、半ノラ?とノラ?
くろちゃん、この「正しい」あだ名ってなに?
忍田くん、どうしてそんな名前になったの?

たぶん貴方の方が正しいと思う。

でもちょっと待ってほしい。ちゃんと順番に説明するし、タイトルにもつかず離れず、私は文章を綴ります。

くろちゃんが、我が家の敷居をまたぐようになったのは、たしか私が就職する間際ぐらいだったので、今から6年前の2016年あたりだと思う。

実家の周辺に立ち並ぶ住宅地を訪ね歩き、優しい人間たちから御飯をもらってはその日を生き延びる、当時は大変警戒心の強い猫だった。

かつてのくろちゃんにとって、その訪問先の一つが我が家であった。

ただ、外の世界を生き延びるノラ猫というのはたくましいもので、「御飯がもらえる頻度が高い」「世話をたくさん焼いてくれる」といった、いわゆる条件の良い家には訪問回数が高くなる。

まだ「完全なノラ」であったくろちゃんも、次第に頻度が高いどころか、ほぼ毎日、我が家を訪ねるようになり、おおよその家族の帰宅時間も覚えて、路上に出現。そしていつしか玄関先の庭、ついに家のドア前まで、我が家の人間たちと距離が近づいていった。

(ただ、得てして人間というのは都合の悪いことは全て忘れる。くろちゃんを家猫にしたファーストステップとして、玄関先で「おいでおいで」をしたり、試しに無理やり抱っこして家の中に入れてみたりしたのは私なのだが、我が家ではその事実はなかったことにされている)

まあ、そうしてなんだかんだと、くろちゃんは家の中に居るようになり、
いつの間にか年月を経て、我が家に「居心地の良さ」も感じたようで、
今は「君、まるで家猫じゃん」と言いたくなるほど、ほとんど家にいる。

ただ、ここで話しを戻して、なぜ「半ノラ」かというと、
彼女にとって「ずっと家にいる」ことで「家猫」のように扱われることは、
おそらくプライドが傷つくことであるらしい。

そこでくろちゃんは二日に一回、もしくは一日のうち数時間は「外に散歩」することで、彼女の「完全なる家猫ではない」という体裁を保っている。

次に、忍田くんの話である。

私も人間(NINGEN)なので、猫(CAT)の世界、ましてやノラ猫(STRAY CAT)の社会の仕組みはよく分からないのだが、くろちゃんはおそらく階級制度でいったら間違いなく地位の高い方にいた。

なぜなら忍田くんの前に、僕(しもべ)のようにくろちゃんに付き従う一匹の三毛の雄猫(名前は福田くん)がいたのである。明らかにパートナーではなく、兄弟でもなく、ただ御飯は必ずくろちゃんが優先で、福田くんは家の中に入ってはいけないという暗黙の了解があった。

その福田くん。いつの間にかいなくなって、次に現れたのが忍田くんだった。当時はまだ彼も警戒心が高く、出現するのは必ず夜と決まっていた。まだ大学生だった私が帰宅すると、暗がりにいて、びっくりするのはこちらなのに、私がびっくりさせたかのように、目にも留まらぬ早さで走り去って行く。常に、夜に「忍ぶように」登場する。

だから私は彼に「忍田くん」と名付けた。
今は姿を見せない「福田くん」の面影を残すため、「田」だけ使った。

これが最近気温が下がって「夜も冷え込むだろう」と玄関前に設置した、もふもふベッドにほぼ毎日ずっといる、一応「ノラ」の忍田くんの話し。

さて、タイトルに少しずつ近づいていきたいので、
くろちゃんの話に戻す。

コロナ禍になり、在宅勤務が当たり前になった時勢において、私ももれなくテレワークと出勤が半々ぐらいの社会人になった。

私は文章を書く仕事をしている。
だから仕事といえばパソコンを開くのが常である。

そこで登場するのが、くろちゃんなのだ。
机上で資料を準備し、パソコンを開くと彼女はやってくる。

資料の上に鎮座したり、勝手にパソコンをまたいで邪魔したり、椅子を占拠して寝たり。

ただ働きすぎてしまうきらいがある私には彼女の存在はありがたい。
まあ今日はこの辺でいいかとキリが付くからだ。

(おそらくこれは私の憶測だけれど、作家が猫を飼いがち、というのは同じような理由ではないかと思う)

だから最近のくろちゃんの陰のあだ名は「人間を働かせない大使」、略して「タイシ」になっている。

ただ、くろちゃん改めタイシは、とにかく頭が良い。
本気で忙しいときにはあまり邪魔をしない。
きちんと人間を、今の状況を観察しているのである。

だからこそ、面倒でもあり可愛い存在だ。
少し前まではべったりだった母の周辺にはあまりいなくて、常に私の周辺にいる。ある人の言葉を借りるなら「ひっつき虫」である。

ただ私は知っている。
母の近くにいなくなったのは、彼女が膵臓がんで闘病中だからだ。きっと余計な負担をかけないように。母にはあまり「構ってかまって」をしなくなった。代わりに「思いっきり構って」をする対象が私に移行した訳だ。

ここでやっとタイトルの話につながるのだが、
タイシは、まじで「ニャーニャー」とよく鳴く猫である。

こう言い切る自信はある。
こうもよく鳴く猫は、そう滅多にいるものではない。

ではなぜニャーニャーと鳴くのか。

おそらく彼女は「しゃべっている」のだ。
猫語で一生懸命に。

そして私が猫語は分からないが、きちんと猫自身の「構って」という意図、「外に出かけたい」という気持ちをくみ取ってくれることまで知っている。

だからこそ面倒くさくて愛らしい。

たとえば私が屋根裏部屋で一人、煙草をのんでいる時。
階下でニャーニャー鳴いたら、私は「どうした?」と返事をしてあげて、
「構ってほしいの、いいよ、こっちにおいで」とちゃんと3階から階段の下をのぞいて呼びにいかなくてはいけない。

これは冗談ではなく、本当にそうしなければ永遠に「ニャーニャー」と鳴き続けるのだ。(やはりここはノラ猫。辛抱強い)

今日11月11日も、いつにもましてニャーニャー鳴いていた。
わたしが一日在宅であったことを知っていたからだろう。

このnoteのつづきを書き始めたのは22時すぎだが、
パソコンを開いたら早々に人間を働かせない大使として軽くパソコンの横で邪魔したふりして、今は私のベッドでまるくなって寝ている。

ただの趣味で文章を書いていることも、分かっているのだ。

ああ、やはり面倒だが憎めないのがこの黒猫である。

だから私は彼女がニャーニャー鳴くたび、
最後はこう言うのだ。

「君さ、本当そろそろ人間の言葉を覚えて、はやく日本語しゃべれ」

追記
きょうは「チーズの日」でもあった。

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