<3 これからのこと>/「ニューヨークから今、これから」イラストレーター 森 千章さん/公募インタビュー#3
3 これからのこと
コロナで考えさせられた。
──コロナ以後、お仕事はどういう状況ですか?
森さん これからどうなるかわからないけど、コロナ以前に進めていた仕事は遅れてるし、総量的には減ってるなっていう感じはあります。
聞いた話では、ファッション雑誌ではモデルさんを集められないからその企画がなくなっちゃった、とか。
私がやってる、ある雑誌は、製品の製造の遅れとか、社員が集まれる時間が少ないので話し合えず、なかなか決まらなくて、それで遅れてる。自粛生活によって止まっちゃってますね。(←※インタビュー当時。 最近は動き始めた感があります。(2020年6月中旬 森さん談))
──自粛明けてまた動けばいいけど、倒産とかも…
森さん あるとこはあるんでしょうね。これからどうしようって、今回のことですごく考えましたね。
働く形 フリーランスと会社員
──イラストレーターって、会社に所属するっていう形はないんですよね?
森さん あればいいんですけどね、なかなかない…でもゲーム会社だったらあると思うなあ。CGアニメーションとか、背景イラストレーションとか、そういうお仕事は募集しているところがありますけど、手描きじゃなくてある程度何かのアプリケーションを使って描く感じでしょうね。
──今のところ、どこかに所属することとかは考えない?
森さん 全然、可能性があればやってみてもいいと思ってます。自分が将来、どうやって生きて行こうかってすごく考えますから、1つの選択肢として、ありますよね。
私は独身だし、自分で独立して生きていかなきゃいけないから。楽しい楽しいだけでイラストレーターはやっていけないわけだし。どういう風に自分が生きていきたいのかって考えます。
私は一応フリーランスで仕事してますけど、ビジネスマンとしては全然まだまだです。フリーランスって言うと、好きなことを仕事にしてるっていうことにフォーカスされますけど、やっぱり商売だから、商売をどう自分で、今何年かだけじゃなくて、何十年もこれを続けていくかを考えると、戦略的なことも必要だなと、ここ最近すごく思ってます。
──一生自分を食べさせていくわけですもんね。
森さん そうそう。年金をもらえるかどうか、もう、不安で不安で。(笑)
フリーランスになった理由も人それぞれで、みんながみんな同じ価値観を持っているとは限らないから、本当にみんな違うんですけどね。
それから、一人じゃできない仕事も多いなってすごく思います。やっぱり仕事は、誰かと一緒にやらなきゃ大きくはできないなってここ最近痛感します。限界があるなあと思う、一人は。
私は、ゼロから1を立ち上げるのは割と得意なんですけど、1から2へレベルアップしていくのはすごく大変で、まだ方法が見つかってない感じかなあ。その仲間探し、自分がどういう風に社会とつながっていくのか、それは自分が仕事をどうやっていくかを探るということにもつながると思うんですけどね。
三味線とアニメーション
森さん 最近は、動かせるアニメみたいなもの(イラストの一部が動くgifアニメーション)も作ってて、それも面白いからやりたいなと思ってます。
──ストーリーもあるアニメーションを作ることも考えているんですか?
やりたいと思っています。芸大の大学院にアニメーション学科があって、何年か前から行きたいなと思ってて。どうせ日本にいるんだったら、この機会に、たくさん働いてお金を貯めて、行く準備をしようかなって考えてます。
──アニメで好きな作品はありますか?
森さん ジブリだったら高畑勲さん派です、私。「平成たぬき合戦ぽんぽこ」とか「かぐや姫の物語」とか。
ああいう和風のものを作ってるのも面白いなと思う。
──和風のものにご興味が?
森さん あります。留学時代、自分が日本人だなーと実感する割に全然日本のことを知らないから、日本に帰ったら1つ日本のものをやろうと思っていたんですが、最近ね、三味線を始めたんです。
その三味線の曲も、昔の流行り歌とか歌ってるものなので、内容は色恋とかが多くてとっつきやすいはずなんだけど、昔の言葉だから、知らない人は聞いているだけだと何言ってるかわからないんですね。だったら、三味線の歌の内容をアニメーションにしたらわかりやすいし面白いかなと思って、それも考えてます。
──いいですね。三味線って、弾きながら歌うっていうのがセットなんですか?
森さん 基本、そうです。まだ全然私はそこまで行ってないんですけど。流派によって違うのかもしれないですけど、私が習ってる三味線のところは、端唄(はうた)って言って、1つの歌が1分もないんですよ。要は芸者さんがお客さんをもてなすためのお囃子みたいな感じだから、本当に内容とかも堅苦しいことはなくて。明るい感じで、楽しいですよ。
──全然知らなかった。何がきっかけで始めたんですか?
森さん ひいおばあちゃんが三味線が好きで、壊れた三味線がずっとおばあちゃんの家にあったのを知ってたんですけど、そのままになっていたんです。たまたま友達が10年近く三味線を習っていて、この三味線って直せるのかなあ?って聞いたのがきっかけ。その子が先生を紹介してくれて、その先生がすごく面白い人だったから、楽しいかなあと思って。
──その三味線は直せたんですか?
森さん 直せました。ひいおばあちゃんの三味線使ってます。
──すごい!何年も前のものですよね。
森さん 80年ぐらい前の。ほとんど張り替えてますが。
昔は本当に遊びみたいな感じで、三味線を弾ける人が多かったみたいですね。沖縄の三線(さんしん)みたいな感じで、音楽がほしければ弾くみたいな感じだったらしいから、弾けてすごいものではなかったみたいですけど。
──日常に根付いてたんですね。
仕組みづくりも考えないと。
──個人的な興味でお尋ねしますが、布の模様を描く仕事ってあるんですか?リバティとか、かわいい模様の布ってたくさんあるけど、ああいう柄ってイラストレーターさんに発注する仕事なのかなあと思って。
森さん イラストレーターさんでテキスタイルブランドやってる人、多いですね。私はまだやったことがないです。
──今後やることはありそうですか?
森さん 「ローカル・ニューヨーク百景」みたいなイラストだったらかわいいかもしれませんね。
今後、ライセンスビジネスをやっていかなきゃなと思っていて、その1つで布も考えているかな。
──ライセンスビジネスを考えているんですね。
森さん 依頼されてやる仕事だけじゃなくて、自分が動かなくてもお金が入ってくるシステムを作らなきゃと思っています。本の印税みたいな感じですね。
一人ですべてやっていると、時間がいくらあっても足りなくて。描くのは楽しいから全然いいんですけど、そればかりに時間がかかっても、同時に年をとっていくわけだから、ずっと続けられるわけでもないことも考えて、そういうこともやっていかないとなあと思っています。
布、いいですよね。生活に密着しているもので、手にとりやすいし。絵をどういう風にみんなの暮らしの中に取り入れてもらうかって、よく考えますよ。
私自身は、正直、絵のついたグッズは全然買わないんですね。イラストレーターだけど(笑)。洋服も無地のほうが好きだし。
みんなは何を買うのかって考えてて、1個思いついてるのが、お土産屋さんに置くグッズ。ご当地のトートバッグみたいなものを作ろうかと思っています。みんな買いやすいしお土産にもなるし、トートバッグってまあ消耗品だから、いくらあってもいいし。
その街のイラストマップを描いて、それをプリントしたグッズを販売してもらうようにしたらいいかな、などと構想中です。
(終わり)
聞き取り:インタビュアー田中
*イラストはすべて森千章さんご本人の手によるもの。記事内容に合わせ選んでいただきました。クリックすると大きいサイズで見られます。
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インタビューされたい方から応募いただき、インタビューするシリーズ「インタビュアー田中の公募インタビュー!」の第3回は、イラストレーターの森千章さんにお話を伺いました。
森 千章(もり ちあき)さん
米国NYの美術大学、Parsons School of Design イラストレーション学科卒業。卒業後NYのイラストレーター・エージェンシーに勤務し、帰国後は同エージェンシーの日本事務所代表、米系化粧品会社の制作部勤務等を経て独立。手書きの風合いを大切にした女性らしいタッチと都会的でスタイリッシュな作風が注目され、現在、雑誌・書籍・広告・Webなど幅広いメディアで活躍中。(森千章さんHPより引用)
※インタビュアー田中の発言の前には──が付いています。
付いていない発言は森千章さんの発言です。
※個人的な経験と記憶に基づいたお話です。事実、あるいは現状と異なる箇所があるかもしれません。
※今回は森千章さんの活動内容を踏まえ、ご本人の同意のもと活動名を掲載しています。(普段は匿名のインタビューを基本としています。)
豊富な経験と好奇心を礎に、未来へ向かっていく森さんのお話は刺激的でした。そしてお借りしたイラストがなんと記事をカラフルに彩ること…!絵の力を改めて感じました。
お読みいただきありがとうございました!
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