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「ショッピングを文化にする」~暮らしを豊かに -その②

働く人も一緒になって、ワクワク感を楽しもう
「ショッピングを文化にする」を合言葉に、「interval studio(インターバル スタジオ)」が2021年も年初めから本格始動しています。

interval studio代表の髙草木晶(たかくさき・あきら)は「そこで働く人と一緒になってワクワクできる売り場をつくろう」と呼び掛けています。


知恵を出し合い、活気ある売り場に


——2021年、どのような展開をめざしますか

売り場の人と一緒になって、新しい売り場のかたちを創造したい。
どうしたら楽しい売り場にできるのか。そこで働く人と知恵を出し合い、現場の発想と感覚でワクワクできる売り場を生み出したいですね。


売り場の人がいきいき働いていたら、ご来店されたお客さまにもきっと、その思いが伝わります。共感してくれる仲間とともに、売り場で働く人を応援します。


——売り場で働く人を応援する。その原点を教えてください。

以前働いていた京阪百貨店の食品売り場がぼくの原点です。ぼくが食品部門のマネージャーをしていた1990年代の後半ですが、食品売り場には500人くらいが働いていました。

社員のほか、パート社員さん、アルバイトさんがいて、全体の6割か7割くらいは取引先から派遣された従業員さんでした。


食品を取り扱う売り場には活気がありますが、働く立場でいうと朝早くから夜遅くまで働き詰めで過酷な職場が多いです。それでも生活を営むために働く人が売り場を支えています。


当時、厳しい仕事の中であっても目を輝かせて働いている売り場の人たちの姿に心を打たれることがたくさんありました。


その姿を見て「働きがいのある職場に」と考えました。


——当時を振り返ると、楽しそうですね。

「しんどいけど、ここに来たら頑張れるねん」


そんな雰囲気を大切に、やりがいを実感できる職場を実現したかった。大きな失敗もしましたし、大変だったけれど、充実した毎日でした。


職場を無断で逃げ出し、「辞めたい」という若い社員に夜通しつき合って「もう少し、続けようや」と励ましたり、知的障害のあるパート社員さんと交換日記を続けて仕事の進め方を伝えたり。現場を支える人との人間関係を大切にしました。


夜遅くまでアイデアを出し合い、定休日を利用してお取引先さまや産地を訪問しながら社員たちと一緒につくった売り場は忘れることができません。朝から晩まで商品出しや接客に追われ、いつの間にそんな斬新なプランを考えてたんや? と彼らのパワーと情熱に驚かされました。


それらの売り場はいずれも評判がよく、お客さまから好評を得たものがいくつもあります。


流通業の会社生活を離れた今、当時のその思いはますます、大きくなる一方です。現場で働く人が持つポテンシャルを発揮する機会を増やすことを自分のライフワークと位置付けたいと考えています。

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「ありがとう」の気持ち、間仕切りのない人間関係を重んじて


——やりがいを実感できる売り場には、何が必要ですか。

「ありがとうね」「きょうも、ありがとう」


このひとことで感謝の気持ちをちゃんと伝え合える関係を築けたら、現場の人は輝きます。


現場の実務を通じて仕事の仕方を学び合う「オンザジョブトレーニング(OJT)」の発想も生かしたい。


仕事の現場ではリーダーシップはとても重要です。しかし形式的な上下関係は必要ありません。リーダーはプレイングマネージャーであり、メンバーとともにフィールドでプレーしないといけない。誰一人としてスタンド席で傍観する人間は不要です。


フラットな人間関係に、間仕切りを設けたくありません。


今の事業もそうです。マネジメントする人間が「私、考えて企画をつくる人。あなた方は売り場で売る人」では、やりがいを実感できないと思っています。


——どのように売り場をプロデュースしますか。

「ショッピングを文化に」と提案しています。


基本は、人です。売り場で働く人が尊重され、その人が自分の存在を確かめられる。


売り場にアイデンティティーを感じる人たちの立ち居振る舞いやまなざし、言葉づかいこそがその売り場の雰囲気を生み出します。


見えないものが見える。気づかないことに気づける。感じられないものを感じる。そんなチカラが宿ってくるのではないでしょうか。


気の利いた品ぞろえや鮮度のよさ、陳列の美しさ、臨機応変なサービスを生み出します。季節の変化や日常のちょっとしたうれしさや楽しさをさり気なく感じさせ、気分転換のきっかけを与えてくれる。そのチカラのたまものだと思っています。


生活のためのお買物でも素敵な瞬間に出会えれば、日常の景色が変わると思っています。


「この店きれいやね」「いい感じの売り場やね」。こうやってお客さまが感じてくださる売り場の空気感は売り場で働く人と、その売り場に来て喜んでくださるお客さまがつくり出します。ぼくはここにショッピングの文化的な役割の基本があると思っています。


ぼくらしく、自分の足りない部分を補ってくれるinterval studioのパートナーと一緒になって売り場で働く人たちの感覚を重んじたいのです。


だから課題に向き合うときには、お互いの心の距離を近づけることから始めます。


現在のクライアントさまとのお仕事も、売り場のスタッフのみなさんと時間をたっぷりかけて、ざっくばらんなフリートーキングからはじめました。緊張感やバイアスを外して率直な思いを交換するのです。


現場の景色を共有し、徐々に芯になる課題をつかむよう心がけています。
ミーティングで言い忘れたことや後になって気付いたこと、売り場でひらめいたことなどをすぐに発信し、メンバー間で共有し合えるようにコミュニケーションツールとしてslackを駆使し、距離や時間を分かたない関係を築いています。

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意外性は、異質なものの組み合わせから


——新しい売り場のイメージを提案してください。

異質なものが結びついて交じり合うと、意外性が生じます。異質なものを並べると化学反応が起こり、魅力ある場やものに変わります。


何かしら一見、異質や異文化だと思われるもの同士が組み合わさり、ありきたりでない関係ができたら思いがけない新鮮な発想が生まれると思っています。


例えば商店街やマルシェ、大きな社寺で開催される〝市〟なんて、ものすごく楽しいですね。初めて訪れる場所は好奇心でワクワクして胸が躍ります。
そんなところにたくさんヒントがあると思っています。

例えば〝市〟で隣り合っている刃物屋さんと、トンボ玉のお店。共通項を考えてみると意外に面白いアイデアが浮かびます。ガラスも刃物鍛治も両方とも火を使う。そこから「火」や「炎(ほむら)」をモチーフにした商品やアートを集めてみるとか……。そんなことばっかり考えています。

これもショッピングを文化にしようという発想の原点です。

ストーリー性やカテゴライズされた売り場ばかり見ていてはなかなかひらめきません。


——「interval studio(インターバル スタジオ)」の「interval」は「間」という意味ですね。

ほどよい「間」を大切にしたいとこの名前にしました。相手との距離を意識しつつ、一体感や共感できる関係を築きたいのです。


演劇や芝居の幕間には「次の展開は?」というワクワク感がありますね。その幕間を待つ間も「間」です。時間も空間も仲間も、みな「間」です。


新型コロナ感染拡大で、人と交わらない「バーチャルな関係」が定着しています。こんな時代だからこそ時間や空間を共有できる仲間との関係を大切にしたいと願います。


——最後に、年初めらしく夢を語ってください。

ぼくの夢は、売り場ミュージアムをつくることです。


「昔は、こうやって売ってたんやで」と昭和の八百屋を再現して、ざるで小銭をやり取りしたり、当時を知る人に語ってもらったり。

ブラックボックスに閉じ込められた売り場の舞台裏を〝見せる化〟するとか。一緒になって、そんな光景を夢見ませんか。

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▼ インタビュー前編はこちら



語り手・髙草木 晶
interval studio 代表/プロデューサー
京都府出身。大阪府枚方市在住。1984年 関西学院大学社会学部を卒業後、株式会社京阪百貨店に1期生として入社し、食品部門に配属される。複数の現場を経験した後、1996年 枚方店 食品、1997年に守口店食品部門マネージャー。2002年MD推進室マネージャーに着任し、数々のリニューアルや新規プロジェクト、新店開業に携わった後、2009年に取締役就任。MD推進室、経営企画、新店準備室担当として業容・業態の拡大に努める。
2013年 株式会社京阪流通システムズに転籍。取締役として京橋「京阪モール」、販売促進室、高架街部門等を担当する。また(一社)日本ショッピングセンター協会 近畿支部副支部⾧を7年間務め、大手資本に属さない地域密着型の“単館ショッピングセンター”の発展に寄与すべく「単館SC交流会」の立ち上げリーダーなどを務めるとともに、同協会の接客ロールプレイングコンテスト全国大会の副実行委員⾧なども務め、業界の活性化にも注力する。2020年6月に株式会社京阪流通システムズを退社。同年9月にinterval studioを設立する。



聞き手・中尾卓司
interval studio  “column”(note)欄 編集・監修
1966年、兵庫県篠山市生まれ。1990年、毎日新聞入社。
松山支局、奈良支局、大阪本社社会部、東京本社外信部、ウィーン特派員、岡山支局次長、社会部おおさか支局長を経て、社会部編集委員を歴任。
2020年3月、毎日新聞を退職後、新聞記者として30年の経験をもとに「情報発信の伴走支援サービス」として「つなぐ、つながる、つなげる」をテーマに新たな情報発信サービスや取材・執筆事業にチャレンジ。現在、大阪大学と関西大学で、「ジャーナリズム論」の非常勤講師も担当。


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