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通訳あるある_英会話:通訳者は英会話が苦手?

この仕事をしたかったら、例えば原材料表示のラベル見て、これは英語でなんて言うんだろう、って一つ一つが気になるくらいじゃなきゃダメだよ、と言われたことがある。自分には無理だなとその時は思った。しかし最近、例えばテレビの街角インタビューを見ながら、頭の中でなんとなく英語に置き換えている。意識はしていないのだが、ぼーっとしていても、脳が同時通訳モードになっているようだ。英語ではない外国映画の日本語字幕をぼんやり見ていて、ふと気づくと、頭の中で英語にしていることもある。なぜわざわざリレー通訳までしているのだ。
 
しかし英語でものを考えるとか、つい英語が口から出てしまうとか、英語で話す夢を見るとかはない。(通訳しているのにちゃんとした訳出にならず怒られる夢、はたまに見る。)日本語を介してしか英語を使わないので、どこまでいっても英語は自分の言葉にはならないのかもしれない。
 
日本語話者で普段特に英語を使うこともない人が、「カッとなって、つい英語で怒鳴ってしまった」と話しているのを聞いたことがある。感情的になったときほど普段の言葉(方言含め)が出る気がするが、逆なのだろうか。酔っ払うと口が滑らかになって英語で話せる、という人もいる。やってみたが、呂律が回らなくなっただけだった。
 
かくして、英会話はなかなか上達しない。特に通訳がリモートになってから、外国人と英語で雑談をする機会も激減した。それでも聞こえてきた音声を条件反射で訳してしまうのは、英語が好きというより、訳すプロセスそのものが心地よくなってしまったのかもしれない。
 
 

“執筆者:川井 円(かわい まどか) インターグループの専属通訳者として、スポーツ関連の通訳から政府間会合まで、幅広い分野の通訳現場で活躍。 意外にも、学生時代に好きだった教科は英語ではなく国語。今は英語力だけでなく、持ち前の国語力で質の高い通訳に定評がある。趣味は読書と国内旅行。”