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「きのこの山」の模倣品

「きのこの山」は、1976年以来のロングセラーであり、長く愛され続けている商品です。それだけに模倣品も多く、(株)明治も様々な知財戦略を行っています。

このブログで以前お話した「きのこの山」のイヤホンhttps://note.com/interbooksjp/n/nb1661f892946

この模倣品が中国で製造されていることがわかり、(株)明治は税関に輸入差し止めの申立をして、6月にイヤホンとイヤホンケースの輸入差止めが受理されました。
お陰で模倣品の流入を水際で抑えることができました。

これは、関税法69条の11第1~2項に基づく措置です。
「特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権・・・を侵害する物品」の貨物は輸入してはならないことが規定されています。
「税関長は、このような侵害貨物で輸入されようとするものを没収して廃棄し、又は当該貨物を輸入しようとする者にその積戻しを命ずることができる」

このとき差し止めの根拠となった商標権は、「きのこの山」という文字商標(5994108号)です。

商標登録第5994108号

この登録商標には「イヤホン」が指定商品として含まれています。
以下のニュース記事の写真からわかるように、模倣品のイヤホンパッケージには、「meiji」と「きのこの山」の文字があるため、「きのこの山」の文字商標を根拠に差し止めることができました。

さらに、立体商標の商標権も、(株)明治は行使したことがあります。

商標登録第6031305号

フクイという埼玉県の会社が「チョコきのこ」というチョコレート菓子を販売したところ、明治が立体商標権を行使し、「チョコきのこ」は販売終了に追い込まれました。

このほか、パッケージの写真も商標登録されています。

商標登録第5712015号

長年愛されてきたこの人気商品をあの手この手で模倣されることは、(株)明治にとっては困ることでしょう。
「きのこの山」の形状が斬新なだけに、お菓子の形状だけが独り歩きして、別の商品をつくり、それがさらに模倣されるという事態が起こっています。

しかし、考えてみれば、「きのこの形状」自体は決して珍しいものではなく、これは様々な商品に見られます。

「きのこの山」は、「傘がチョコレート、柄がビスケット」という斬新なアイディアの菓子であるからこそ、「この菓子と形状」のセットで、しかも「きのこの山」という商標と組み合わせてイヤホンをつくり、これが模倣されたのだと思います。
その証拠に、中国のイヤホン模倣品にも、「きのこの山」と表示されています。やはり「きのこの山」の名称がなければ、「きのこ形状」のイヤホンであっても模倣メーカーにとっては意味がないということです。

ところで、「たけのこの里」については、ビスケットをとがらせる技術が難しいとのことで、模倣され難いそうです。
「きのこの山」の方が形状が複雑で模倣され難い印象がありますが、実態は逆のようです。

弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子
翻訳家、執筆家、弁理士(奥田国際特許事務所)
株式会社インターブックス顧問、バベル翻訳学校講師
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)英検1級、専門は特許翻訳。アメーバブログ「英語の極意」連載、ChatGPTやDeepLを使った英語の学習法の指導なども行っている。『はじめての特許出願ガイド』(共著、中央経済社)、『特許翻訳のテクニック』(中央経済社)等、著書多数。