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「ミッキーマウス」の名称が入った公園って大丈夫?

北海道旭川市に「神居ミッキーマウス公園」という公園があることが、北海道新聞、Yahoo!ニュースに取り上げられました。ディズニー社の許諾は得ているのでしょうか? 得ていないとしたら、著作権管理に厳しいディズニーなのに大丈夫でしょうか?

ディズニーは多くの登録商標を有しており、たとえば「遊園地の提供」を指定役務とする以下の商標があります。

商標登録3087517号(ディズニー エンタープライゼズ インク)
J-PlatPat(特許庁、INPIT)よりダウンロード

この公園は1979年に建設されたとのことで、当時はサービスマークの登録制度がありませんでした。上掲のディズニーの「MICKEY MOUSE」商標はサービスマークが導入された1992年に早速出願され、1995年に登録されたものです。

このディズニーの商標権は、商標登録されていないと予想される「神居ミッキーマウス公園」に当然、及びます。また、この公園の名前は、「ミッキーマウス」という「他人の著名な商品等表示と同一若しくは類似のものを使用している」(不正競争防止法2項1項2号)として、不正競争を構成する可能性もあります。

ミッキーマウスの知財と言えば、思い出す事件があります。1987 年、滋賀県の小学校で児童たちが卒業制作として、プールの底にミッキーマウスの絵を描いたところ、ディズニー社から撤去するように要求され、その絵はあえなく撤去となりました。
 
子供の絵だから認められる、学校の授業の一環だからよいとの言い訳は通りません。著作権法35条には、「学校で教育を担任する者、授業を受ける者は、授業の過程における利用に供する目的がある場合は、公表された著作物を複製できる」ことが規定されています。
卒業制作は授業の過程ともいえますが、プールの底に描いた絵は不特定多数の人々の目に触れる、空からも見えるし、子供たちの卒業後も学校の施設の一部として残ります。授業で配布するプリントに絵を載せるのとは訳が違います。プールの底のミッキーマウスの絵は、大々的に学校の設備の一部となります。だからこそ認められなかったと思われます。
 
これだけ厳しいディズニーですから、北海道の小さな公園であろうが、「ミッキーマウス」の言葉が入った公園を見つけて何か言ってくるのではないかと心配になります。

弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子
翻訳家、執筆家、弁理士(奥田国際特許事務所)
株式会社インターブックス顧問、バベル翻訳学校講師
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)英検1級、専門は特許翻訳。アメーバブログ「英語の極意」連載、ChatGPTやDeepLを使った英語の学習法の指導なども行っている。『はじめての特許出願ガイド』(共著、中央経済社)、『特許翻訳のテクニック』(中央経済社)等、著書多数。