見出し画像

【中国語講座】“了”が2個

弊社の「翻訳コラム」で公開された、ご好評いただいている記事を移動しました。

動作の持続時間の表し方って、分かりますか?つまり、「私はあなたを2時間も待ったんだよ。」の「2時間」は「待つ」という動作の持続した時間ですね。「中国語を10年間勉強しています。」の「10年間」もそうですね。

動作の持続時間は動詞と目的語の間に置きます。例えば、「私は昨日テレビを2時間見た。」だったら:

我昨天看了两个小时电视。
Wŏ zuótiān kàn le liăng ge xiăoshí diànshì.

“两个小时(2時間)”という持続時間は動詞“看”と目的語“电视”の間に入っていますね。

「私は3年間中国語を勉強しています。」だったら:

我学了三年中文了。
Wŏ xué le sān nián zhōngwén le.

“三年”という持続時間は動詞“学”と目的語“中文”に挟まれています。こんな位置に入るんですねぇ。

さて、2つ目の例文では、“了”が2つありますね。気が付きましたか?

この現象について説明している文法書やテキストはとても多いです。いわく、“了”が2つある場合は、動作の継続を表す(その動作を今も続けている)、というような説明が多いですかね。

もちろん、その通りだと思います。上の例だと、「私」が中国語を勉強し始めたのは3年前で、3年間中国語を勉強し、今も勉強は続いている、ということになるはずです。つまり、3年前のある日から、現在に至るまで、ずっと勉強は続いており、今も継続中だ、ということになります。

それに比べて1つ目の例文はどうでしょうか。1つ目の例文は“了”は動詞“看”の直後にしかありませんね。この言い方だと、テレビを見始めたのは昨日のある時点であることだけは確かですが、明示されません。とにかく昨日の間に2時間テレビを見たということで、いつからいつまで見たのか、今見続けているのか、そういったことは言葉からは分かりません。

なぜ???(笑)

多くのテキストではその事実のみを記載し、「なぜそうなるのか」までは踏み込んでいない気がします。では、動詞の直後と文末と両方に“了”がある場合と、動詞直後にしか“了”が無い場合とを比べて、なぜなのかを考えてみましょうか。

1つ目の“了”は動作の完了を表します。中国語を3年間勉強するという行為が完了していることを表します。

2つ目の“了”が無ければ、中国語の勉強がいつ始まっていつ終わったのかが明示されません。動詞直後に置かれる“了”は動作の完了しか表しませんから、とにかく過去のある時点でその動作が完了していることのみを表します。さっきのテレビの例文と同じですね。

しかし、文末に2つ目となる“了”を入れると事態が急変します(笑)。

そう、この2つ目の“了”は、変化を表す“了”です。変化の“了”はふつう文末に置かれ、「そういう状態に今なった」というニュアンスを添えます。

つまり、「3年間中国語を勉強する」という行為が、今終わった。今現在3年たった、つまり3年前から始まって今3年がすぎた、ということになりす。だから、3年前から始まって今につながっているので、結果として「継続」というニュアンスも出てくるというわけです。

ですから、1つ目の例文も文末に“了”を置いてみると意味が変わってしまいます。

我看了两个小时电视了。
私は2時間テレビを見ています。

これだと、「2時間テレビを見た」という状態に今なった。つまり2時間前から今までテレビを見ていた(そして今もまだ見ている)、ということになるのです。

う~む。変化の“了”って大活躍なんですね~!色々なところに出てきます。僕、変化の“了”って大好きなんですよ(笑)。

通訳・翻訳家 伊藤祥雄
1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了
通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当
「文法から学べる中国語」等、著書多数

2021年5月までの記事は弊社の「翻訳コラム」でお読みいただけます。