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【中国語講座】肺炎

新型コロナウイルスが日本に入り始めた頃は、よく「新型肺炎」とか「武漢肺炎」みたいな言われ方をしていたと思うのですが、覚えておられますでしょうか?このブログでも、過去の原稿を見ると「新型肺炎」と書いていました。

でも、最近は日本のメディアでは「新型コロナウイルスに感染した人」というような言い方が多く、病気の名前のような言い方はしていませんね。厚生労働省のHPを見ると「新型コロナウイルス感染症」という言い方がありましたが、「肺炎」という言い方はしていませんでした。

一方中国ではどうでしょうか。

正式には:

新型冠状病毒肺炎
xīnxíng guānzhuàng bìngdú fèiyán
(直訳:新型コロナウイルス肺炎)

でもふつうは省略されてこんなふうに言われますね:

新冠肺炎
xīnguān fèiyán

そう、一貫して“肺炎”と言っているのです。

どうして日本では、最初「肺炎」と言っていたのにいつの頃からか言わなくなったのでしょうか。

おそらく、感染しても肺炎まで行かない人も多くいらっしゃるからなのだと思います。無症状の人までいますからね。

僕の関わっているNHK中国語ニュースは、たいていの言葉は中国の通信社“新华社”の言い方を参考にしていますが、これに関しては“新冠肺炎”という言い方を使っていません。日本の多くのメディアと同じ「新型コロナウイルス」に感染した云々、という言い方を使っています。

新冠病毒
xīnguān bìngdú
新型コロナウイルス

中国でももちろん無症状の人がいるはずです。それにもかかわらず、なぜ“新冠肺炎”と言うのでしょうか。

報道でも言われたことがあるので覚えておられる方もいらっしゃるでしょうか。中国では無症状者は感染者の数に入れていないらしいのです。つまり、中国で例えば感染者の数を報道したりする時は肺炎の症状が多少なりとも出ている人の数ですから、“新冠肺炎”と言っても矛盾はないのですね。

ところが、人民日報などを見ると、日本の新型コロナウイルスの感染者数のことなどを伝えている時も“新冠肺炎”の感染者という言い方をしています。

いやいや、日本は肺炎まで行っていない感染者も数に入っているので“新冠肺炎”と言ったらダメでしょう!と思っています(笑)。そこはちゃんとしてほしいものです。

通訳・翻訳家 伊藤祥雄
1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了
通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当
「文法から学べる中国語」等、著書多数

2021年5月までの記事は弊社の「翻訳コラム」でお読みいただけます。