ラーメンチェーン店「AFURI」の登録商標
ラーメンチェーン店AFURI(株)は、自社の登録商標「AFURI」に、吉川醸造(株)の「雨降」が類似するとして、特許庁に無効審判を請求しましたが、無効であるとの判断は得られなかったため、さらに裁判所で争われました(令和5(行ケ)10122号、知財高裁)。
そして「AFURI」側が敗訴しました。つまり、吉川醸造の「雨降」の登録商標は無効ではない、との判断です。理由は、両商標が非類似だからです。
商標が類似するか否かは、外観、称呼(発音)、観念(意味)の3つで判断します。この2つの商標が外観、観念が異なることは言うまでもありません。
称呼については、「雨降」が「アメフリ」「ウコー」のほか、「アフリ」と発音される場合があることも裁判所は認めています。「雨降山」が「アフリヤマ」と発音されることが多いからです。
しかしそれにしても、外観と観念が異なり、たとえ発音が共通する場合があっても、これを凌駕してしまうため、両商標は類似しないと判断されました。
また、「AFURI」にそこまでの著名性はなく(首都圏で16店舗に留まっている)、「雨降」がこれと混同を生じさせるとも認定されませんでした。
しかも、「雨降」は酒類の名前であり、「酒類」と「ラーメンの提供」の需要者が共通するとも認めがたい、と判断されました。つまり、業界が異なるということです。
しかし、この事件はまだ終わっていません。上記に紹介した判決は、「雨降」という登録商標が「AFURI」に類似していないことを判断したのみです。
この点では、「雨降」やそれに類似する商標「あめふり」「アメフリ」「あふり」「アフリ」を吉川醸造が使用し続けることは可能ですが、もう1件訴訟があります。
商標権侵害訴訟です。
吉川醸造は、「AFURI」という文字を日本酒の瓶に表記しています。これが商標権侵害であると「AFURI」ラーメン店側は主張しています。
ところで、ラーメン店がなぜ酒類の商標に対して無効審判を請求したり、酒造会社に侵害訴訟を提起したりするのか不思議に思われるでしょう。
AFURI(株)は日本酒の分野への進出を計画しているからです。
この点については次回お話しします。