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【中国語講座】声調の話

久しぶりに初心に帰って、声調の話でもしましょうかね。

時々本欄でもご紹介しているYouTubeの「李姉妹ch」、最近は「新しい動画がアップされていないかな~」と覗きに行く日も多くなりました(笑)。この姉妹はもう一つ動画チャンネルを持っていて、そちらは基本的に中国語で話しています。よかったらどうぞ。「李家姐妹在日本」という名前です。

さて、基本日本語で話している方の「李姉妹ch」の方で、「声調確認アプリ試してみた」という動画が上がっておりまして、これが結構面白かったです。李姉妹は日本語(三重弁?)ペラペラとは言うものの、二人とも中国人ですから、ネイティブがやったらどうなるのかを検証している感じですね。

李姉妹、ご自分たちでもおっしゃっているように、妹さんのほうは日本で育った感じなので中国語より日本語のほうが得意、お姉さんの方は中国でも教育を受けていたようなので日本語と中国語はほぼ同レベルだそうです。

で、この声調確認アプリをやると、もちろんネイティブだって発音の癖とか声質とかもあるので正しく判定できなかったりもすると思うのですが、妹さんのほうの第2声があまり良くなかったようでした。いや、まぁ十分きれいな2声だと思うのですがね、声調確認アプリではちょっと低めに判定されてしまっていまして。ご自分でも第2声は低くなってしまうという自覚はあったらしいので納得されていましたけど。

でも、やはり日本語ネイティブに近い妹さんの発音で第2声が低めに出てしまうというのは、なかなか示唆的ですね。

僕たち日本語ネイティブも中国語を話す時はやっぱり第2声はちょっと苦手な人が多いのではないでしょうか?結構しっかり高く引き上げているつもりでもうまくいっていない、ということが結構あると思います。

そう、実は日本語ネイティブって結構自分の声の範囲(高低の範囲)の中で低めの所を使って日本語を話すことが多いですよね?強調したいところは高い声を使って言いますが、それ以外の部分は低いところで話す傾向があると思います。

だから、中国語を読んだり話したりする時、高い声を出さないといけない第1声とか第2声、第4声が苦手。第1声なのに低い声で発声してしまったりするわけです。

ところが中国語は実は第1声の高さが基本。力を抜くと第2声も第4声も第1声に近くなります。例えば:

他的行为被认为是反社会的。
Tā de xíngwéi bèi rènwéi shì făn shèhuì de.
彼の行為は反社会的だと思われている。

これを読むとき、“被 bèi”は受け身を表すだけであまりはっきりした意味を持たない字ですから、軽く短く読まれることが多いと思います。日本の人に、「この“被”は軽く短く読んでください。」とお願いしてみると、大体の日本の人は低い声で小さく「ペイ」と言うと思うのですが、中国語ネイティブが力を抜くと、逆に高くなるのですね。ですからこの“被”もほぼ第1声の位置からほとんど低くなることなく、高い声で軽く「ペイ」と言います。この「声調確認アプリ」のようなもので判定してみると、きっと第1声の高さからほとんど落ちないような線が表示されることでしょうね。

つまり、日本語ネイティブは低い声をよく使う、中国語ネイティブは高い声をよく使う、ということをよく覚えておいてください。中国語の第3声は低い声を使いますが、第1声や第2声や第4声はしっかり高いところを使って発音できるように、思い切って、タレントIKKOさんの「どんだけ~~~!」のようなテンションで高い声が使えるように練習してみてください。

ちなみに、上で李姉妹がやってみたという「声調確認アプリ」は「NHKゴガク」というスマホアプリの中に入っている「声調確認くん」という機能です。無料のアプリですので、まだやったことのない人はやってみてください。ゲーム感覚で楽しめると思います。

通訳・翻訳家 伊藤祥雄
1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了
通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当
「文法から学べる中国語」等、著書多数

2021年5月までの記事は弊社の「翻訳コラム」でお読みいただけます。