【中国語講座】儿って何だ
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中国語を勉強する中で、いつも不思議だなーと思うのが“儿"です。
この字、日本語の漢字形は「児」です。発音は、単独では「ér」です。例えば、
儿童
ér tóng
児童
儿子
ér zi
息子
しかし、この“儿"という字、色々な単語の後ろにヒョッコリくっついていることがありますよね。発音も単独で「ér」と読むのではなく、前の音節と同化します。例えば、
事儿
shì + ér → shìr
そして、多くの場合この“儿"は、あってもなくてもいいのです。本当に不思議(笑)。例えば:
歌儿
gēr
うた
この“儿"は、別に無くても大丈夫です。でもテキストにはよく“歌儿"と書いてあったりしますよね。他にも:
画儿
huàr
絵
小孩儿
xiăo háir
子供
いずれも“画"“小孩"と言っても大丈夫です。特に南方では“儿"が無いほうが普通かもしれません。
ものの本で“儿"があるのと無いのとでは意味が違う場合がある、と書いてあるのを見たことがあるのですが、そんなに多くはないようですし、ほとんどはおそらく北京語という方言の中の話ではないかと思います。少なくとも我々外国人が気にする必要はほとんどない、と僕は思っています。
そして基本的には名詞にくっつくようですね。
画画儿
huà huàr
こう言った場合、一つ目の“画"は動詞「描く」という意味で、残りの“画儿"は「絵」という名詞。つまり全体では「絵を描く」という意味になります。
“花"という字も、動詞の意味がありますよね。「(お金・時間を)使う、費やす」という意味です。これも、動詞として使う場合は“儿"がつきませんが、名詞(「はな」という意味)で使う場合は“儿"がつくことがあります。
というわけで、基本的に“儿"は名詞の語尾にくっつくのですね。でも例外もあるようです。僕が知っている限りでは、1つだけ例外があります。
玩儿
wánr
遊ぶ
これは動詞ですが、たいていの教科書には「玩儿」と書かれています。
でもこれにしたって、“儿"がなくてもOKなのです。特に南方の人々は“儿"をつけずに「玩 wán」と言うようです。
あっても無くてもいいなんて、不思議な存在ですよねー。でも、“儿"の発音が苦手な人は、無視しても大丈夫そうなので、そういう意味ではありがたいかも(笑)。
ちょっと注意しなければならないのは、以下の3つ。
这儿 zhèr ここ
那儿 nàr そこ、あそこ
哪儿 năr どこ
この3つは、“儿"を無視してしまうと意味がかわってしまいますね。
这 zhèこれ
那 nà それ、あれ
哪 nă どれ
ですから、これらは“儿"を無視できません。が、回避方法があります。「ここ」「そこ、あそこ」「どこ」という意味を表したい時は、別の言い方がありますよね。覚えていますか?
这里 zhè li ここ
那里 nà li そこ、あそこ
哪里 nă li どこ
これらを使えば、“儿"を回避することが出来そうですね〜。
まぁ、“儿"以外にも「er」という発音は出て来るので(例: “二" èr、“耳" ěr など)、「r」の練習は、してくださいね(笑)。
通訳・翻訳家 伊藤祥雄
1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了
通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当
「文法から学べる中国語」等、著書多数
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