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ヒューマンネイチャー その2 メロスは走った

ライブインタラクション®コーチのまぁこです。

前回の続きです。


ヒューマンネイチャーを理解する

マズローの欲求段階説で5段階(6段階とも)があります。

自己実現の欲求 (Self-actualization)
承認(尊重)の欲求 (Esteem)
社会的欲求 / 所属と愛の欲求 (Social needs / Love and belonging)
安全の欲求 (Safety needs)
生理的欲求 (Physiological needs)

ところで私は芝居をやっていて、役のキャラクター作りの時にこういうのを利用します。リアルにこのキャラクターが芝居上で生きるためにはどう行動するかなと考えるわけです。

折角なので以前稽古で使ったキャラクターで説明しますね。

ヒューマンネイチャーから人間を理解する

太宰治作「走れメロス」は有名な作品ですが、これを元に地元でミュージカルを上演しました。

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ご存じの通り、メロスは残酷な王様に友達を人質に取られて、日没までに戻らなければその友達を殺される、という設定です。

まぁ、メロスとか王様はセリフも多いし、脚本にも色々書かれているので、その役を構築する情報は多いのですが、ほとんどセリフのない役も、例えば2時間の上演時間中にちゃんとそのキャラクターで生き続けなきゃいけないわけです。

そこで「役つくり」として、そのキャラクターの人格を構成していきます。

キャラクターの持つ背景

今回は国王に仕えている戦士について考えました。

その者は警備隊長でメロスの友人の処刑も執行する人です。一体どういう経緯で警備隊長になり、なぜ罪なきメロスの友人を処刑することが出来るのだろう?

そこで彼の生きてきた物語を作りました。

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男はスパルタ(現在のギリシャの一部)に双子の兄とともに生まれた.兄はそれはそれは優秀で,子供の時から父親に褒められるのはいつも兄であった.男はいつも兄の引き立て役で,そして父の叱られ役であった.


青年になったとき,二人は父と同じように軍隊に入った.当時のスパルタは隣国のアテナイと戦争が長く続いており,戦果を挙げたものは英雄であった.当然兄は数々の華々しい活躍を見せ,瞬く間に高い地位に登りつめていた.一方,男の方はあまり活躍も出来ず一兵士のままであった.

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アテナイを打ち負かし,ギリシャ全体がスパルタの支配下に置かれた頃,近くのシラクサで僭主の地位を勝ち取ったディオニス王から,スパルタ王に傭兵の徴収要請があった.ディオニスと言えば先のカルタゴとの戦いで手柄をあげ,役人から僭主にまで登りつめたと聞く.男はこの傭兵徴収に手を上げ,スパルタから海を渡りシラクサへ入った.

シラクサはアテナイと比べるとまだまだ小さな国家だった.そして常にカルタゴと戦闘状態だった.ディオニスは襲撃を偽装して自分の命が狙われていると見せかけ,護衛のための個人的傭兵を持っていた.傭兵たちは,シラクサは元より周辺各国から寄せ集められていた.しかし,男にとって自分の兄以上に優秀な兵士を見ることはなかった.

男は策をめぐらし,まるで兄の現身のようにふるまうことで,とても有能な兵士という印象を傭兵たちに植え付けることに成功した.剣も槍も馬の扱えさえも有能ではなかったが,しかし形をまねることは一流であった.いつしか戦場に行かずともその立ち振る舞いで男は地位を駆け上がることに成功した.

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傭兵は1000人にまで増員していた.ディオニスは傭兵をシラクスのポリス共同体の隅々にまで配置した.そしてその指示を先導したのは,他ならぬこの男であった.男は隊長にまで登りつめた.王の指示を的確に兵士に伝えれば,あとは有能な兵士どもがすべて片づけていた.

ある日シラクス内を見回り,石切り場に来た時であった.当時王の命によって作られた円形劇場は奴隷や捕虜の殺し合いを王や観客たちが楽しむ場になっていた.その劇場を造る際に石を切り出していたのがここであった.街人が強い日差しを避けてその空洞に入り込み,何事か話をしていた.男は特段気にすることもなく,その石切り場の頂上に登り,そこからの眺望を眺めようとした.

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「・・・持っていったんだそうだ.それを聞いた亭主がえらい剣幕でかみさんを怒鳴りつけて.」「あんな人の良さそうな顔したあの人がかい?」


急にどこからともなく人の会話が聞こえた.男は周囲を見回したが誰もいない.不審に思い辺りを歩き回った.


「そうだよ.あの人は・・・」
「・・・災難だったね.」
「いや,私は聞いた話・・・」
「・・・ちゃったじゃないか!ははは.」


明らかに,ある1点に立つと話し声が聞こえる

男はもしやと思い,その聞こえる点に跪き,石の隙間から下をのぞき見た.


「早とちりしたのはどっちだい」「はい.私でございます.」「ははは・・・」


先ほどの街人が中で談笑している.身振りからして今聞こえている話は彼らがしているもので間違いなかった.


「これは使える.」

男は早速王宮に戻り,王の許可を得てその石切り場に新たな牢獄を作った.政治犯や敵国の捕虜を選抜して投獄し,牢の番と称してその噂話を男に伝える兵士も備えた.


果たして効果は絶大であった.敵国がいつ侵略しようとしているか,王に謀反を企てようとしてまだ捕まっていないものは誰か.彼らは石の牢屋に囲まれて警戒を解き,それは饒舌に語った.男は兵士から報告を受け,逐一ディオニスに報告した.王は男の先見と情報網に感心し,男を自身のもっとも近い親衛隊長に任命した.

これで男は完全に戦場に行くこともなく,自身の戦術を示すことなく王を警護する役目と,自身の安寧を手に入れたのである.

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如何でしょう?ほとんどセリフのないキャラクターでも、そこに生きているように感じませんか?

またまた長くなってしまったので次に続きます。


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