レビューの成功は、レビュー前に決まっている
レビューは仕事のコミュニケーションの原点にして頂点。工夫できることがたくさんです。
そんな中、前回の記事では「レビュイー(レビューされる人)が工夫できること」をお伝えしました。
しかし、レビュイーだけでできることには限りがあります。レビュアーがテンプレートを用意し、どれだけお願いしても、レビュー依頼が上手にならないこともあります。
今回は立場を変えて、「レビューの前にレビュアーができること」について私がやっていることを書いてみます。
レビューの成功はレビュー前に決まっている
伝えられる情報が足りないからと質問攻めにしていませんか?
質問をしても望む回答を得られないことがよくあります。私もやってしまいがちですが、この状態で質問を重ねるのはよくありません。メンバーは「詰められている」と感じ、「レビュアーが望む答えをなんとか捻り出さなきゃ」と無意味な情報提供を続けてしまいます。
チャットで事前質問したり、レビュー用のテンプレートを用意しても同じです。うまくレビューの準備ができないのは「レビュアーに何を質問されるかわからないから」だけではないことがよくあります。
大抵の場合は、メンバーに言語化力が足りていません。レビューが始まってからでは手遅れです。
良いレビューには言語化が必須、でもとても難しい
子育てをしていて、後輩の振り返りに同席していて強く感じます。言語化はとても難しい。
語彙が増えても言語化は上手になりません。言葉はあくまで記号であり、イメージを相手に伝えるためのツールです。「このイメージ/感覚を、なんという言葉や文章で連想するのか?」というイメージと言葉の組み合わせが出来て、初めて上手な言語化ができるようになります。
初めてやることにおいて言語化がうまく出来ないのはよくあることです。日本語が話せるからと言語化が上手なわけではありません。言語化が上手なのであれば、それはきっと自分が慣れ親しんだ領域で、他人と何度も考えを伝えてきたから言語化が上手になっているだけなんです。
だから、メンバーの言語化をサポートしよう
専門用語を覚えてもらうのでは意味がありません。本を読んでも同じです。メンバーにやってみてもらって、イメージを脳内に作って、それを言葉にしてもらいましょう。
ここからは私が実際にメンバーにやってもらっていることを記載します。
1. ログを取りながら作業/思考をしてもらう
メンバーにメモを取りながら作業をする癖をつけてもらいましょう。これをログと言っています。ログは大事です。
手間はかかりますが、メンバーにはログを取ってもらい、レビューするときはログにもコメントをするようにしましょう。このときメンターがするのは質問攻めではありません。「これはこういうことだよ」とたくさん言語化してあげましょう。
慣れないことをしている場合、よくわからずやったことが後で問題になったり、作業の意味もわからずガチャガチャやっていたらうまくいってしまうこともあります。作業を理解できていないので次は問題を起こすかもしれません。
マニュアルがあったとしてもログは取ってもらいましょう。大抵の場合マニュアルにはやることしか書いておらず、なぜ他のやり方ではダメなのか、どうしてこのめんどくさい手順をしないといけないのかは書いてありません。暗黙知になっていて、新規メンバーとの間の壁になっています。
ログを書くのは時間がかかりますが心配はいりません。このログ取得が大変なのは始めたときだけです。ログを取る文化とレビューする文化があると、誰かの作業ログがそのまま次の人の教材になるので、チームの言語化レベルがどんどん上がっていきます。
2. 社内チャットでtwitterのように呟きながら作業してもらう
ログを取るのが苦手なタイプも半分くらいいます。その場合は「作業のつぶやきを気軽にできる専用の社内チャットルーム」を作ってあげましょう。
作業ログとなると「自分しか見ないもの」と感じやすく、メモを取るのを怠りがちです。しかしチャットルームとなれば誰かがみてくれる場所になるので自然と発言が増えます。
イメージはtwitterです。「おなかすいた」「検証、全然進まん」くらいの感じで呟きながら作業してもらいましょう。
言語化は「イメージに紐づけて行う」と書きました。人は感情が動いたときに強く気持ちが動き、誰かに話したくなります。アウトプットには現れないメンバーの思考プロセスはつぶやきでも十分拾えるので社内チャットを使うのはおすすめです。
つぶやきを続けてもらうコツは「つぶやきに対してリアクションを返す」「できればすぐに返す」ことです。見てくれているんだ、こういう弱音に近い発言をしても受け入れてもらえるんだ、と思ってもらえるとつぶやきがどんどん増えていき、レビューがとても楽になります。
3. 夕会で日々ヒアリングをする
作業ログも取らず、呟きもしないメンバーにはレビュータイミングとは別で、言語化する機会をとりましょう。おすすめは毎日。私は夕方に15分ほどの振り返り時間を設けることが多いです。
大事なのは言語化されることなので、個別でやる必要はありません。夕会で振り返りを順番にやることで、メンバーは他の人の振り返りからも言語化を学びます。
鉄板の問いかけは「今日の気持ちは5点満点で何点?」です。点数をみれば、前日との差で苦労していたり、うまく行っていたりがわかります。すかさず「お、昨日よりも点数が低いけど何かあった?」と聞けば言語化が始まります。
やったことを聞くだけにするのはやめましょう。うまく進めなかった日は険悪なムードになります。ふりかえりの時間を設けるのはきっとチームジョイン時などの最初の頃で、うまくいく方が珍しいはず。
感情を起点に質問し、言語化を促すのがおすすめです。「自分の話を聞いてもらえている」と感じやすく、ギスギスすることなく「何をやったのか」「どう考えたのか」の言語化も促しやすいです。
「お、珍しいね。何がきっかけだったの?」
「それ、大変そうだね。どんな気持ちだったの?」
「どんなシーンで気持ちが落ち込んだの?楽しかったの?」
言語化を促す問いかけとしては他にもあります。「問い詰められていると感じない問いかけ」は多数あるので、試行錯誤してみてください。
4. レビューのもらい方を振り返る
ここまで書いてきたことは「言語化をしてもらうために、メンターから寄り添おう」ということでした。
でもこれではいつまでもレビューとその準備は楽になりません。全部の作業をログに取るのも、メンターが全てにコメントを返すのもずっとやり続けることは不可能です。
だからレビューのもらい方を振り返りましょう。
「この情報もらえるとレビューしやすい。**という理由で」と振り返ります。一緒に「どの情報を伝えるとbetterか」を取捨選択していくことで、レビュイーがログを取るのも楽になり、レビュアーが受け取る情報も少なくなります。
必ず「たくさん言語化する→情報を取捨選択する」という流れでやりましょう。どの情報を伝えるべきかがわかっていないからメンターから見てトンチンカンなレビュー依頼が来るのです。「情報を取捨選択する」のを一緒にやることで、「伝えて欲しい情報」を理解してもらいましょう。
また、これは抽象化力の訓練になります。抽象化力とは「重要な情報をzeroから言語化する力」ではありません。抽象化とは要約です。「今の状況において不要な情報を取り除く作業」を繰り返すことで、抽象化力を鍛えていくことが可能です。
【まとめ】レビューのために普段から言語化を鍛えよう。話はそれからだ
初心者やジョイン初期のメンバーへのレビューは正直とても大変です。1日かけて作ってもらったアウトプットのレビューに数時間かかることはよくあります。
でも、それは初期だけです。本人に経験が貯まればレビュー時間は激減します。意識的に「言語化する機会」を用意すれば、思考力もしっかりつきます。
レビューはアウトプットの品質を上げるだけではなく、メンバーの基礎能力を高める絶好の機会なので、ぜひ時間をかけてみてください。
今回の元記事は以下のScrapbox Pageです。リンク先にもいろいろ考えを載せているのでよかったら参考にしてください
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