ロシア研究者から公然とウクライナ戦争で北朝鮮のロシア支援を期待する声が上がる~ロシア報道から
◆「露朝関係の密接化」でウクライナでの戦いが変わる~ワシリー・カシン氏(アジア・中国専門研究者)
先の北朝鮮最高指導者「金正恩」総書記のロシア極東地区への異例の長期訪問は、ロシア国内にさまざまな論調を起こしている。経済関係と共に軍事強力関係についても、大きな変化をもたらすことを期待する声が上がっており、これは首脳会談を行ったプーチン大統領やロシア国防省の”控え目”な説明=「国連安保理で決議された対北朝鮮制裁などによる制限を遵守しつつ、軍事を含めて協力・交流をしていく方向を検討する」との言明を踏み越えるものとなっている。
具体例として、9月13日付の新聞「モスコフスキー・コムソモーレツ(モスクワ共産主義青年同盟員)」に掲載された高等経済学院(専門大学)総合欧州国際研究センター長でアジア・中国問題の専門家、政治学博士候補のワシリー・カシン氏のインタビュー記事を訳出し、要旨をお届けする。こうした研究センターは、ロシア政府の対外政策などに影響を与えるシンクタンクであり、そこを念頭にロシアが取りうる対北政策を予想する上での参考として読み込むことが有益だ。
ちなみに「「モスコフスキー・コムソモーレツ」は、かつてソ連時代のレーニン記念全ソ連邦共産主義青年同盟モスクワ市委員会の機関紙だったが、ソ連崩壊後にほどなくして独立した”保守系”のメディアとなっており、現在は直接的にロシア国内の共産主義系団体とは関係しないものとなっている。紙名は”歴史の名残”として使われているにすぎない。
(以下、記事要旨)
◎COVID-19(コロナウイルス感染)後に飛躍的が”太く”なった露朝関係
▼最近まで露朝関係はそれほど動いておらず、2021年の貿易額はほとんどゼロに近いものだった。その時、北朝鮮では COVID-19 に伴う制限措置が導入され、ロシアは 2017年の国連安保理による対北朝鮮制裁に参加していることが対北朝鮮交易不活発化の背景にあった。
▼COVID-19 前の北朝鮮の対外取引におけるロシアの割合は2~3%であり、一方90%以上は中国。
▼2022年11月から、露朝間では徐々に鉄道による連絡が再開し、貨物輸送などが再開。再び本格的に連絡が動き始めたのはここ数か月のこと。
◎北朝鮮貿易の中国偏重の原因は同国の外貨不足~ウクライナ侵攻後の制裁で置かれたロシアの立場が北朝鮮の立場に接近
▼中国偏重が著しかった背景には、北朝鮮の外貨不足がある。現在、ロシアも西側の金融システムから排除され、制裁という観点では、露朝は似たような状況に置かれている。以前には注目していなかった一部の北朝鮮製品が、ロシアにとって魅力あるものとなった。
◎労働力不足のロシアにとって「北朝鮮人は理想的な労働移民」
▼さらに労働力の問題~かつて、いまのような制裁などがなかった時代、北朝鮮はロシアの 各地で働く質の高い労働者を数万人単位で供給していた。
▼ロシアは現在、失業率が記録的に低い水準で、労働力が不足している。北朝鮮人は理想的な労働移民。なぜなら、滞在国に留まることはなく、厳しくしつけされた環境のなかで、閉鎖的な北朝鮮人社会を形成する。勤務態度に問題はなく、労働生産性も高い。ロシアの雇用者らは通常、北朝鮮人を歓迎する。
◎軍事技術協力は「直接的」にではなく、「間接的」に行われる可能性~”非軍事”面での協力の効果が波及
▼軍事技術協力については、ロシアは対北朝鮮制裁を遵守してきたため、1990年代以降、行われていない。再開されるかどうかはまだ分からない。
▼軍需製品のほかに、北朝鮮にはロシアが関心を持ついくつかの製品がある。例えば、工作機械などは、最先端とはいえないものの、十分なレベルのものが作られている。
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