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【読書】邪宗門

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民子さんから「読め」と指名され,はっ!と了解して読み始めたが…。哲学・宗教的な内容なので,筋は面白いのだが読むのに大変な苦労がある。しかも面白いと言っても明るいシーンがほとんどなく,常に虐げ続けられている宗教団体…という感じで暗く読み続けるのが相当苦痛で,読むのが速い私でも相当時間がかかった,途中で気分転換で別の本読んだりしてて,しかも上下とあるので2か月くらいかかって読み終わりましたが,結局救われないどころか,終わり方が一番悲惨という…(涙)

太平洋戦争の前に生まれた新興宗教というか民間信仰というか,あるとてつもなく貧乏な女性が発狂する寸前に神が下りてきて,身の回りの人たちに奇跡を起こしまくるので神様と崇め奉られ,全国に百万を超える信者を集め組織的に動こうとする。目的はやはり「世直し」的なものになり,戦前で言えば治安維持法とか特高から弾圧を受け,宗教の本山などはダイナマイトで吹っ飛ばされたりという無茶苦茶。教主は警察に捕まり組織もメタメタに。

そうこうしているうちに太平洋戦争になり,信者も戦地に引っ張られ活動そのものも縮小したり,戦時中に国家の悪口言ってたら大変な事になったり,新天地を求めて満州に行き新天地でも布教しようと頑張っていたが,敗戦で全滅。日本の地を再び踏む事が出来なかった。

日本の信者たちも何百万人が数千人レベルに減ってしまったが,幹部が何とか盛り返そうと各地の残党に対して声掛けをはじめ,組織としてやり直そうとするのだが,結局世直しの方向に向かって,武力蜂起し町を自分たちで納めるまで行った。しかし米軍や日本の警察に壊滅させられ,何とか逃げた首謀者は,断食で生き仏になってしまい,一緒に生き延びた女性はその瞬間に舌を噛み切って死ぬ…というもはや救いようのない話。

この大筋の中に,色恋が出てきたり,福岡の炭鉱の話が出てきたり,昭和天皇に直訴するシーンとか,もう本当に色々な場面がちりばめられながら,明るい所は1ミリもなくむなしさが残る…。

貧者とは何ぞや、支配されるものなり
支配とは何ぞや、悪業なり
悪業とは何ぞや、欲望なり
欲望とは何ぞや、無明なり
無明とは何ぞや、執着なり
ああ、如何にして執着をのがれんや、ただ信仰によってのみ
信仰とは何ぞや、救済なり
救済とは何ぞや、死なり
死とは何ぞや、安楽なり

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