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卒業制作 学生インタビュー #2【 統合デザインの卒展 】

1月に行われた 統合デザインの卒展 にて、学科内TOP20に選ばれた学生8人へインタビュー。

卒業制作に至るまでの裏話や影響を受けたもの、教授のアドバイスから得たものなど根掘り葉掘り聞いていきます。


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今回は深澤プロジェクトの茶薗優花さんにお話を聞きました。


──制作した作品の紹介をお願いします。

茶薗: 私は「すくう」という動作について考えてそれを形にした105本のスプーンを作りました。 
暮らしの中での動作とその道具について考えようと思ったのがきっかけで、スプーンとかおたまとか身の回りにあるすくう道具が意外と同じ形をしてて1つで汎用性に長けているみたいなものが多いから、そういうのを、例えばプリンをすくうスプーンとか、対象物に対してそれぞれ形があったらいいかなっていうので、スプーンを105本作りました。


──ものによって使う木の種類を変えてるのですか?

茶薗: 木の特性とかも考えながら、この用途にはこの木がいいみたいなところまで決めて作りました。硬いものをこそげ取るようなスプーンには、硬い木を使ったりとか。

──アイディアは日常的にスプーンを使っている時に思いついたりしたのでしょうか?

茶薗: そうですね。具の入ってるスープを飲むときに、 使うおたまによっては、最初の人がすごい具が多くて、最後の人はスープしかないことがあると思うんですけど、具をすくったままスープの量を調節できるように、柄の近くに穴をつけて、具は出ないけど、汁だけ落とせるようにしたり。なんかそういう自分がなんか日常で経験したことを解決するような形を作ったりとか。
あとはタルトを食べる時、フォークだとガシャンって細かくなって食べづらくて、でもスプーンも使いにくくて、だからスプーンみたいな形だけど、先がフォークみたいになっててしっかりすくえるものだったりとか。人から聞いた、こういうのが欲しいとかこうだったらいいなとか日常の困った経験とかも反映させて作ってます。

──ちゃんとデザイン的に解決しようと考えてたということですか?

茶薗: 真っ向から解決しようみたいなのというよりも、すくう形の幅を広げたいみたいなところが大きくて。そのすくう道具と自分の作ってる中での対話みたいなのを重視して、もっとこの形だったらすくいやすいけど、この木の良さも生かせるとか。難しいけど、解決のためにデザインしましたというより、もうちょっと全体的に"すくう道具"としてのまとまりみたいなことを意識したかもしれないです。すくうについて考え尽くしたみたいな。




──この作品を作ろうと思った経緯を教えてください。

茶薗: 統合デザイン学科で学んでいて、1年生の頃からアフォーダンスとか、人間とものに対するその関係性とかをすごく考えてきたなっていうのがあって。それでプロダクトデザインを3、4年で深澤先生のところで学んだり、そういうことを思い返してみて、この大学生活の最後に自分は何を考えて作りたいかなって考えた時に、身近な自分の暮らしの中の範疇で起こる何か、自分と物の関係性みたいなものを考えたいって思うようになって。1人暮らしをして結構料理をするようになったり、スプーンって自分の食事とかで1日に何回も使う大事なものだったから、ふとご飯食べてる時に「あ、スプーン作ろうかな。」思い立って。とにかく暮らしと道具と人間の関係性について考えたいって思ったのがきっかけですね。

──作ったり食べたあとに洗い物したりすると、おたましゃもじとかいろいろ使ったなってなりますよね。

茶薗: そうそう。計量スプーンとか本当測るだけのためになんか存在してるけど、なんかもっと使えたり面白かったらいいのになとか結構思いましたね。誰もが使うものだし、なんかその身近さが自分の中での腑に落ちたポイントかな。




──テーマを決めてからの制作過程について教えてください。

茶薗: 8月中旬ぐらいにスプーンについて考えたいなって思い始めて...漠然とした構想は4月ぐらいに身近な道具とか小さな範囲のことについて考えたいなっていうのはありました。
最初は、こういうことしたいなみたいな漠然としたイメージがあっただけで、ちゃんと考えないとなって思い始めた8月に、元々カトラリーとか食器が好きだったのもあったしスプーンを作ろうかなって思いはじめました。

そこからは木を買いに行ってあまり経験のない木彫りに慣れることから、スプーンについてとか木の特性とかにも考えて。8月下旬ぐらいの感覚を掴んだ時期に1本目の、離乳食のスプーンを作りました。かなり時間がかかったので中途半端な本数で終わらないよう、そこからは1日1本目標に作る目標で方針を固めました。


で、10月の後半ぐらいにスランプが訪れて...今まではどんどん作って早くうまく上達していたけど、肝心なスプーンに対する考えがちゃんと深掘れてなかったことに後から気づいて、次何作ったらいいんだろうってなってしまった。
このままなあなあな気持ちで作ったら本当にただスプーンを作った人になっちゃうなと思って、10月後半は一度作ることをやめて、とにかくいろんなお店に行ったり、いろんな種類のご飯を食べに行ったり、アイデアを熟成させる期間にしました。

──効果はありましたか?

茶薗: アイデアの元になる経験を3週間くらい積んで、そしたらすごい、すくうことに対する考えが変わりました。前半の自分の視野が狭く感じるくらい視点が飛躍して広がって、第2章が始まった感じ。
そこからはひたすら掘る作業で、最終的には105本掘りました。すごく大変だったけど作業が単純だから無心になって向き合えたのでそこは救われました。って話を友人にしたら、すくわれてるね、スプーンだけに。って言われました(笑)
結局、1月6日まで制作をして一度切り上げて、そこからはブックレットだったりとか、展示の仕方を考えを詰めてく感じで順調に進めました。

──スランプが逆によかったんでしょうね。

茶薗:行き詰まっちゃって、もう案を考えても10本前ぐらいに同じようなのあったよな、先週作ったよなみたいな、苦し紛れの案しか出なかったので、その時はやばいって思ってたけど思い切って休んでみたのはよかったですね。
全部1回やめるって、それまでに培ってきた作業のスピードとか、手の感覚も失いそうじゃないですか。ここで燃えつきてもう作りたくなくなっちゃったらどうしようとか色々不安がよぎったけど、ずっと視野が自分の手の中と机の上の作業だけにしかなかった環境だったので、外に出て歩いてご飯食べに行って、人が食べてるの見て...とにかく外に目を向けました。

──リサーチしていてこの料理にこのスプーン面白いなとか、使い方面白いなみたいなのはありましたか?

茶薗: 担々麺のひき肉をすくうスプーンってすくうところの真ん中に穴が開いてるのが多いけど、あまりにも食べにくくて。食べる方に穴開ければ、汁が多すぎても、お皿のへりに当てながらすくえばいけるし、今あるものはすくい方と穴の位置が違う気がして。絶対これ自分で作れる!って思って作ったりとかしました。
あと、すごいしょうもないけど、3色団子を食べてて、あれって並び順的に必ずピンクからしか食べれないなって思って、そこから団子用のスプーンとかも作ったりとか。指輪のスプーンとかも作ったんだけど、指につけといて人が食べてるものをひとくち頂戴ができる、とか。
現実的じゃないでしょって言われちゃうかもしれないけど、そういうすくうことに対しての夢とか遊び心を結構考えられたなあ。なくてもいいけど、ちょっとあったら使いたくなるかもみたいな。あと、新しい木にもチャレンジしました。


──材料は自分で木材センターやホームセンターに行ったりとか...?

茶薗: 自分で木の売ってるところに行って、節とか模様とかも全部全然違うから自分で見て選定して、なんか毎回すごい荷物で帰ってきてました。



──展示空間について教えてください。

茶薗: 展示形態は、最初は壁にたくさんスプーンを掛けようと思ってたんだけど、スプーンってすくう道具だし、すくう動作と形の関係性について見せたかったから、なるべく他のところの違和感を減らしたくて、シンプルな平置きを選択しました。1個1個が作品に見えるように、スプーンの間を開けたり、自分がすくう動作についてどう考えてどう考え方が変わって作っていったかっていうのが自分のテーマでもあったから、作った順に並べたり。U字に並べてその対極で1番最初に作ったスプーンと最後に作ったスプーンが背中合わせで近くで見れるように、とか。そういうのは展示内容に反映できたかな。




──展示を行った素直な感想を教えてください。

茶薗: よかった点は、会場に来てくれた皆さんが、すごい!とかめっちゃある!みたいな反応をしてくれたことかな。ぐるぐる見てくれる感じも嬉しかった。
作品のすくう道具に対して自分が考えたことはあえて展示台とかキャプションには書かず、ブックレットにしか書いてなかったんだけど、来た人がそれぞれ、これであれ食べたいな〜とか、それぞれの考え、それぞれの食卓の想像をしてくれて、その姿を見てるのが、すごく幸せな時間だったなって思いました。

──私も考えましたよ!

茶薗: 自分が大学はいってから展示を見に行ったり、先輩の卒業制作とか見てて、ああそうなんだって理解する作品じゃなくて、作品を見て何か考えてほしい、作品を見た先に、それぞれの人の中にそれぞれなにか違う気持ちが生まれたらいいなっていうのが作品作りのモットーにあって。だから自分の作品を見て、それを超えて先を考えてくれる人が結構いたっていうのは、めちゃくちゃ嬉しかったです。

──スプーン、触りたいなってすごく思っちゃいました。

茶薗: それがちょっと悔やまれてるところで...
本当は触って欲しかったけど、やっぱ繊細なもので、壊れちゃったりとか、もし折れてささくれとかになっちゃったりとかで何かあっても良くないし。でもやっぱり、すくいたいって言ってくれる人も多かったのもあって一番の心残りですね




──今後やっていきたいことがあれば教えてください。

茶薗: ペースは落ちたとしても、すくう道具をちょっと考えて作っていけたらなっていうのと、あとは、社会に出て全然デザインとは違う道に行くけれど、日常の小さな自分とものの関わりについて、考えることは続けたいなって思います。
今思うと1つのことを深く考えるっていうことにかなり打ち込めた制作期間でした。うん。毎日ずっと四六時中、夢にもスプーンが出てくるほど考えたことはなかった。今でもお店に行くとスプーン見ると考える癖みたいなのがついちゃって(笑)でもそういう日常にある小さいことについて考える癖は大事にしたいな、と思います。

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