見出し画像

卒業制作 学生インタビュー #3【 統合デザインの卒展 】

1月に行われた 統合デザインの卒展 にて、学科内TOP20に選ばれた学生8人へインタビュー。

卒業制作に至るまでの裏話や影響を受けたもの、教授のアドバイスから得たものなど根掘り葉掘り聞いていきます。


──────────────────


今回は永井プロジェクトの古関真子さんにお話を聞きました。


──作品の紹介をお願いします。

古関:はい、私の作品はsketchという作品です。デザインというものは装飾的なものだけではなく日常の中の人の小さな動きとか癖の中にこそある、ということを感じてもらうためのインスタレーション作品で、電車の車内の人だけを抜き出して手書きアニメーションとして落とし込みました。


──手書きにしたのはなんでですか?

古関:手書きにしたのは、1番の自分の目的として、普段は無意識になっている人や動きへの意識みたいなものに改めて着目して見てほしいという思いがあったからですね。そこを見てもらうためにはどうすればいいか考えた時に、ただ撮影した画像や映像で見せるよりも、スケッチで手書きにして見せた方が、多分1番違和感なく、でも、より着目して集中して見てくれるんじゃないかっていうことを思って、手書きアニメーションの表現を選びました。

──実際に撮影したり参考にした資料はあるのでしょうか?

古関:最初の頃は実際に動画を撮らせてもらって、動画の上からなぞって描いてアニメーションにするロトスコープという手法でやっていたんですけど、途中からは実際に電車に乗って、この人を作品に取り入れようって思った人の動きを細かくメモをして、それを書いていました。

──人の動きだけダイレクトに収集しようとした、と。

古関: 長く乗ってる人はそのまま書いちゃうと短くても3分とかになってしまって映像としては長すぎるので、その人の特徴的な動きだったり座り方だったりそういう部分だけを抽出してアニメーションにする手法に切り替えました。


ただそのまま描くのではなくちゃんと動きを再現するために、メモを見て頭の中で考えて描いていたので、そっちの方が自分も作品に対して理解が深まったんじゃないかなと思います。



──この作品を作ろうと思った経緯について教えてください。

古関:卒業制作で何を作ろうかってなった時に、私は大学での集大成みたいなものを作りたいなって思って、 じゃあ大学での集大成ってなんだろうって考えた時に、自分がこの学科で1番学んだことだなと思ってそれをテーマにしました。

入学前の推薦入試で日常を観察して面白いと思ったことを1日3つ書くみたいな課題が出て、これが自分の中ですごい大切だなと思ったので、そこからこれ面白いって思ったものをメモして残しておくというのを続けていました。

その積み重ねから日常の中や気づかないようなところにデザインが潜んでいたりそこからアイデアが生まれるということに気づいて、これが、デザイン=見た目・装飾的なものというふうにずっと捉えていた私が、この学科で一番学んだことだな、と。それを卒業制作展で作品を見てくれる人に伝えたいなっていう思いでこの作品のアイデアに決定しました。

──日常の中でとくに電車に乗ってる人の仕草に着目したのはなんでですか?

古関:自分の中で、いかに人が日常的なのに無意識になっているかをテーマとして、環境とか場面を切り出せるかが一番のポイントになっていたからですね。
最初は候補があったんですけど、例えば、待ち合わせしてる人は街の中にいて人から見られている意識があるからか抜き出せるような動きが意外となかったりして没になって。もっと人から見られてる意識も薄くて、でも誰にでもある身近な光景っていうのを詰めて行った時に、電車内の人がベストだなって思って決定しました。



──テーマ決めからの制作過程について教えてください。

古関:最初のアイデア出しのときにあった、人のスケッチみたいなものを展示したいという案から大体のテーマが決定しました。そこからはいろんな場所の観察をしに行ってアニメーションや表現、題材にする場面や場所の決定を授業で先生と相談しながらやっていました。

アニメーション自体の表現にはかなり悩んで、どこを切り取るかの実験を、夏の教授全員による中間講評(以下クロスレビュー)があるまでやっていました。例えば顔と手だけを抜き出したらどういう風に見えるの?とヒントを先生がくれてそれを検証して授業に持って行って相談、みたいなことを繰り返してどの表現がいいのか詰めながら、アニメーションを描く練習と人の観察スケッチやメモをずっと並行していました。


大体もう方針が固まってクロスレビューをやって、そこで意識が向いたのが展示方法でした。

展示の仕方が大事だとアドバイスをもらってから9、10月ぐらいはプロジェクターを使いながら人の大きさを検証したり投影場所を検証してみたり、学校で展示方法の検証と家でのアニメーション制作という感じでした。

──そういえばプレ卒展というのをやっていましたよね。

古関:多摩美の芸祭の有志サークルで一度展示の形に落とし込むというのを、プレ卒展(以下 プレ卒)として行いました。実際に展示することによって、改善点が見えてすごい勉強になったなと。例えば、見る人が座る椅子がどれくらいあったらいいのかとか、キャプションの位置はどこがいいのかとか。
実際に展示しないとわからないことが多すぎて、だからこそ、本展示のときにあまり問題が起きなかったり、トラブルにならなかったんだろうなと思います。



──アニメーションの長さについて気になっていたのですが...

古関:これは11月あたりに結構悩んで、私は最初と最後がない10分ぐらいの映像がずっと流れてて自然にループになるものをやりたかったけど、3分ぐらいにしてちゃんとタイトルやコンセプト文を入れて、"映像作品"にした方がいいと先生にアドバイスをもらって最終的にああいう形になりました。
展示場所がシアタールーム(学内にある映画館型の部屋)と決まってからずっと、ループ映像を見せる展示方法はなんか違うなと自分の中でも思っていたので結果的によかったです。

──シアタールームを展示場所に選んだ理由は?

古関:この作品はすごい没入感を持って見てほしいっていう思いがあって、シアタールームだったら自分の作品だけを1対1で見てもらえるっていうところが魅力的に感じて選びました。
プレ卒の時は部屋の一角にプロジェクションして椅子を置いていたんですけど、そうすると座ってもらえないという問題がでてきちゃって。立ってなんとなく見るとか、ちょっと見て立ち去るとか、これだと体験としてダメだなって思って。

このへんの調整が最後の関門で、あとはどれだけ3分の中で仕草を描けるか人を増やせるか、を当日直前までやっていました。



──展示を行った感想を教えてください。

古関:やっぱりただの映像作品じゃなくて、インスタレーションとして空間全体で作品制作をしたことがよかったです。空間から電車内を意識させられるよう人の大きさを等身大に見せる、みたいなところまで意識を向けられました。

車内の環境音をつけたのも良かったです。何周もずっと見てくださる人やアニメーションの線自体の表現が面白いっていう感想をいただけたり、 そういうことを踏まえると、スケッチアニメーションに集中してもらえるような環境を、インスタレーションとして空間全体を作ることができてすごく良かったです。

──逆に反省点等はありますか?

古関:シアタールームについて、場所から来る先入観で"映像を見る"っていう感覚からどう体験に繋げるかとか、1列目だけに座ってもらって最大限に自分の作品を感じてほしいけど誘導しきれなかったりとか。
ちゃんと自分が思うような作品の体験の仕方をしてもらうことはすごく難しいんだなと思いましたね。これくらいやってれば大丈夫かなって設計するけど、それくらいじゃダメなんだ、って。

教室に箱を作ることも考えたんですけど、あまりにもアニメーションを書く手間がものすごくて...思っていたより時間がかかりました。
毎日何時間も使って書くこと以外に時間を割くのが難しかったのが現状で、もちろん個室を作るとかいうことをできたらもっとよかったなとは思います。ただどちらもやる選択をしてどちらも中途半端になることだけは良くないと思って、アニメーションの方に力をかける方を選びました。



─来場された方の反応はどうでしたか?

古関:ずっと座って何周も見てくれた人が多かったことが1番嬉しかったのと、アニメーション内に小さな子供の動きがあるんですけど、そういうところを見てくすっと笑ってもらえたり、見ながら あの人〇〇してるよ〜みたいな感じで、 一緒に来た人同士で話していたり、そういう小さい動きにちゃんと集中して言語化までしてもらえてるのを見て、自分の狙いがすごく達成できたんじゃないかなと感じることができました。
着眼点が面白いって言ってもらえたり、なんでこういうものを発想したの?って聞かれることも多かったです。

当たり前すぎることを抜き出す作品に触れ合う機会が普段そんなにないと思うので、ちょっと新鮮に捉えてもらったのかなって思います。

──日常の中の無意識なことってほぼ再確認だけど、それに気づく視点の新鮮さが、統合学生にありる気がします。

古関:ほんとにそう、統合っぽい考えだなってすごい思います。それを展示に来てくれるような統合関係じゃない人からしたら、多分新鮮っていうか、そういう風に捉えてくれてるんだろうなっていうのを感じたなあ。



──今後やっていきたいことがあれば教えてください。

古関:統合で学んできたことはこの先も意識して制作するとして、日々の観察的なことも続けつつ、春からはデザインやアートディレクションみたいなことをして社会人になっていくので、より人の気持ちや課題に寄り添えるように生かしたいです。

この日常の観察も、続けるために自分の中でハードルを下げてるところはあって。絶対に〇個発見しなきゃいけないとか決めると、人はめんどくさくなってやめちゃうけど、そうじゃなくて、気づいたらもうその場でちょっとスマホとかにメモしちゃうぐらいでいいんだって。そうやって少しずつ確実に続けていくと思いますね。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?