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統合デザイン学科卒業生インタビュー#04瓜田理揮さん

瓜田理揮(うりた りき)
事業会社勤務 デザイナー
統合デザイン学科4期生 菅俊一プロジェクト出身

領域や文脈に縛られないメディアテクノロジー表現や体験デザインを探求。戦略デザインファームへの参画を経て、現在は事業を通じて社会課題解決に取り組むソーシャルエンタープライズの事業会社にて新規事業領域のブランドデザインを担当。


ー統合デザイン学科を卒業されて、現在は何をされていますか?
LIFULLという事業会社でデザイナーをしています。
ブランドデザインチームの一員として新規事業のロゴやグラフィック制作、新しいアプリやWebページのUIUXデザイン。他にも広告やサービスの企画、自主的な新規事業立案など多岐にわたって活動しています。


ーデザインに興味を持ったきっかけはなんでしたか?
美術予備校で「デザインが分からない」と学生講師に質問した際、勧めてくれた「単位展」という展示がきっかけでデザインに興味を持ち始めました。そもそも美術予備校に入ったのも高校までギターだけやっていた自分を心配した親が入れてくれた、という経緯もあり興味も理解もゼロでした。

そんな分からず屋でも面白いぞ!となった「単位展」のコンセプトリサーチを担当されていたのが、大学のプロジェクトでお世話になる菅先生でした。
その展示で見た、1GBという単位を1GB分の文字量や映像でビジュアライズした作品や、単位をさまざまなものに置き換えていく映像作品によって、「今まで知っていた、と思っていたものを捉え直す」体験ができたんです。予備校で教わっていたデッサンや色彩構成などの表現的なものとは違うけど、デザインがそれだけではなく多様な面白さがあることを知って興味を持ち、デザイン科を志望し受験しました。


ー統合デザイン学科では特にどのようなことを学んでいましたか?
プロジェクトで主に、デザインという視点から、未来社会のプロトタイピングとして研究・課題制作を行っていて、そのための思考技術・制作技術・表現技術の3点を学びました。前提にとらわれることなく、特性の本質を純化して見つめることで新しい視点や可能性を探るプロセスも学びました。


ー学生時代から今までで自分らしい作品orお気に入りの作品は何ですか?


息を吹き込むとポップコーンがはじける映像体験作品です。
息を吹くと映像が再生される機構をデザインしその機構ならではの映像体験を考え作ったもので、人間の呼吸機能がインターフェイスとして入力の起点となり本来関係のない2つの現象に関係性を見出してしまう作品です。

息を吸って吐くということが何かのインターフェースとなる点に着目し制作しました。人間は呼吸をしなければ生きれません。ということは、呼吸機能が必ず全ての人に備わっているインターフェースとも言えると思います。
この研究をもとに未来社会で「息を吹いたら電気が消える」といった息と環境とのマッチした体験に転用できるな〜とか、あらゆる人が喜びを得られるから多様性も重んじられるなとか、自分の視野が広がりました。それは本質的な関わり方に執着し考え辿り着いた根源だからだと思っています。「執着して作りながら考える」ことで根源に辿り着く姿勢が卒業制作にも繋がってくるので、とても思い出の作品です。


ー卒業制作では何をしましたか?

「ひかりおこし」という作品群を作りました。
人類がこれまで原始的な方法で行ってきた「明るさを獲得する体験(例:火おこしなど)」の動きや構造を抽出し、現代の技術を誤用することで再構成した作品群です。

例えば動画冒頭の「ひかりおこし」では火おこしを再構成しています。
火起こしは、人間の腕の振り子運動で石と鉄をこすり細かく鉄を砕くと同時に摩擦熱を発生させたとき崩れ落ちた鉄が燃えることで火種ができるという原理なんです。その火種ができる現象の再構成を考え、天井から吊るされた振り子運動をする装置と天板がこすれた時に電極がつながり通電することで光がつくという仕組みに辿り着きました。

次の「ひかりふいご」では、ふいごで風を送り込み火を少しずつ育てていく体験の再構成をしました。本来、電気はボタンを押せばすぐにつくけれど、光を育てていくみたいなことは今のテクノロジーなら絶対に起こらないわけです。そういったアプローチで作品を制作しました。
再構成する上で気をつけたことは、火を起こす「熱」「酸素」「燃える素材」の3つの要素を、「電気」「金属」「LED」に置き換えつつ、どうやったらテクノロジーで再構成していることが最大限伝わるのかということを考えていました。
この作品の根源となるテーマは別作品の試作を誤用して見つけたんです。
本来の意図とは違う使い方(誤用)で発見した面白さも素材が持つ特性の拡張として捉えてみると、視野が広がって面白いものに辿り着けると思います。「執着して作りながら考え」なければむしろ想像を超えた面白さに辿り着けなかっただろうなと思っています。


ー卒業制作展まで頑張れた原動力とは何でしたか?
わからないことを制作を通してわかるようにしていく面白さを探求する環境(プロジェクト)があったからだと思います。
そもそも一人だと何か企画を思いついたときが面白みのピークだったりして想像をそこから超えないし、頭の中を再現するのもめんどくさいとか思ってます。卒業制作はそんな作り方で作らないので、各々わからないことを制作を通して根源的な魅力や面白さ・心動かされる現象として磨き上げようとしている感じが原動力になっていたかもしれないです。


ーこれから、どんなデザインをしていきたいですか?
既成概念にとらわれない根源的な喜びを与えられるデザインをしたいです。
世の中の物事ひとつひとつの思い込みや既成概念に対して視点を変える発想をすることで、あらゆる面白さを感じてもらったり、あらゆる人の楽しい発見や喜びを与えらる人でありたいって思います。
また、それを1人だけではなくチームを巻き込んで実行できるような環境を作るために自分自身がデザイン領域にとらわれず上流の戦略から足元のアウトプットも含め一気通貫であらゆる体験設計できるようになりたいです。

(インタビュー・編集:野村華花・海保奈那)

Twitter: @urikitex
Vimeo: https://vimeo.com/urikitex


次回の統合デザイン学科卒業生インタビューは…!

古林萌実(ふるばやし もえみ)さん
広告代理店勤務 デザイナー
統合デザイン学科3期生 永井一史・岡室健プロジェクト出身
2022 Young Cannes JP GOLD 日本代表

高校の進路選択の頃、アートディレクターの職種を知りデザインを目指すようになった古林さん。
自分が素直に感じていることを形にすることを目標に、2020年度の統合デザイン学科卒業制作展のメインビジュアルを担当したそうです。
カラフルなビジュアルを制作した意図は何なのか?
卒業生インタビュー第5弾は明日公開です!乞うご期待!



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