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統合デザイン学科卒業生インタビュー#01宮田陵平さん

宮田陵平(みやた りょうへい)
広告会社勤務 プランナー
統合デザイン学科1期生 中村勇吾・菅俊一プロジェクト出身


世界中の色んな固定観念を壊すことを楽しみながら生活しています。
座右の銘は「口の中の内側の味を忘れるな」です。歯や歯茎にも味がありますが、そんなことはついつい忘れてしまいます。しかし、そういった一見当たり前な事象にも光を当てていくことで、新しい価値を発見・創造することが出来ると信じています。


ー統合デザイン学科を卒業されて、現在は何をされていますか?
博報堂という広告の会社でCMやキャッチコピー、ブランディングに携わる仕事をしています。プランナーですね。グラフィックデザインではなく、企画をしています。


ー統合デザイン学科に入ったきっかけは何でしたか?
中学生の時から映像制作に興味があり、統合デザイン学科は映像を含めたいろんなことを学べると耳に挟んでいたので志望しました。


ー統合は入ってよかったですか?
統合デザイン学科じゃなかったら人生変わってたかもなって思うくらい、入ってよかったです。もともと制作は好きでしたが「デザインとは何か」を言語化できていなかったんです。統合デザイン論やインターフェースといった講義で、その意味や役割など、物事を考える上での大事なポイントをしっかりと固められるようになりました。


ー統合デザイン学科では特にどのようなことを学んでいましたか?
中村・菅プロジェクトではメディアの新しい使い方を探究していました。例えば「映像作品を作りなさい」と言われたとき、プロジェクトに入る前は「どんなストーリーにするか」「どんなビジュアルにするか」といったアイデアしか持っていなかったのですが、様々な課題を通し「スマホを動かしながら観る映像」や「鏡越しに観る映像」など、メディアとの関わり方を前提から考え直せるようになりました。それに加え、「過去の様々な研究や作品のリサーチ」を前提として制作を行わなくてはならなかったので、新しい学びや固定観念が壊れる気づきの連発で非常に刺激的でした。


ー自主制作時の関心事もプロジェクトの研究テーマと一致していたのでしょうか?
そうですね。例えば普段私たちが動画を視聴している時、光の反射で画面に映った自分の顔も一緒に見ているはずなのに、意識に上ってこないですよね。そういうことをヒントに新しい驚きを生む表現の実験をしていました。


ー自分らしい作品orお気に入りの作品は何ですか?

なめルーペ2

なめるーぺ1

中村・菅プロジェクトで「五感をテーマにした作品」という課題が出た時に、統合デザイン的な視点で食事体験をデザインしたいと思い、体験型のお菓子を製作しました。飴は果物などの味を人工的に再現したものですが「味」ではなく「食感や触感」を再現した飴を作りたいと思い、味が付いたフィルム越しにいろんなところを舐めることで、地球上の形あるもの全てを飴に変換することができる作品を作りました。


ー卒業制作では何をしましたか? 
制作というより実験なのですが、先ほどの「映像を見ているときに、画面に反射した自分の顔を見ているのに意識に上ってこない」などの現象を、なぜ自分は面白いと感じるのかについて考察し「意識のピント」という作品群として発表しました。

意識のピント_軽い

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同じものを見ていても、全然違うものに見える時があると感じたんです。例えば、ノートの上に髪の毛が落ちていて、払ったら実はシャーペンの線だったみたいな。シャーペンの線だと分かった途端に、もう髪の毛には見えない。 その理由は意識のピントがずれてしまうからなんですよ。 作品は観てもらうことを前提として作るので「見る・観る」とは何なのかをちゃんと解き明かしたいなと思い、意識のピントをぐらつかせる体験を作りました。

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これは、音読することで自分の声のピントがずれていく作品です。ひたすらこんな実験作品を作っていました。「意識のピント」という概念に辿り着くまでにとても時間がかかりました。


ー制作をする中でどういったことが大変でしたか?
何が面白いのかを言語化する作業が一番難しかったです。映画の中のキャラクターが突然視聴者に話しかけるといった表現手法のことをメタフィクションと言うのですが、僕はそういう表現が何故か好きだったので、卒業制作ではメタフィクションをテーマにした作品を作ろうと思っていました。しかし教授に、その面白さの本質が何なのかもう少し深掘りしてみるよう言われ、実は自分が本当に面白いと思っていたことは「見ているものの意味が変わる瞬間や、先入観から解放される驚き」だということが分かりました。その答えを導くまでがやはり一番難しかったです。


ー大学に入ってから自主制作を行うようになったのでしょうか?
大学時代はあまりちゃんとした自主制作はしていなくて、小ネタや実験作品を量産していました。音楽もやっていましたね。
自主制作って結構辛くないですか?楽しむためにやっていた制作がいつの間にかに義務に変わってしまっていたりして、僕は結構悩んでいたのですが、就活のためのポートフォリオも作らないといけないので、とりあえず「モチベーションをどうやって上げるか」を意識していました。僕の場合はたとえ小ネタでも自分がワクワクして作りたいと思ったものを作ることが一番のモチベーションになっていましたね。 

例えばこの動画のような、「再生ボタンを押したら魚のように泳ぎ出す」といった実験作品。これも「こんなのあったら面白いな」という純粋な好奇心で作りました。 


ー他に具体的な作品はありますか?

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これは社会人になってから作ったものですが、音を発する人間の体も大きく捉えれば楽器だと思い、花粉症のくしゃみをサンプリングした曲を作りました。

夢の中で聴くための曲

オリジナルソングの中で一番好きなのは、「夢の中で聴くための曲」です。朝、目覚ましのアラーム音が夢の中でも聴こえていることに着目し、「そこは夢の中だ」という歌詞で構成された目覚ましアラーム音を作りました。


ーこれから、どんな制作をしていきたいですか?
やっぱりいい意味で奇をてらいたいですね。直近では夢の中に着ていく用のパジャマを作りたいです。社会人になって3ヶ月くらい経ったあたりで、夢の中の自分がスーツを着ていることに気づきました。この体験を活かして、いつも身につけているものに「ここは夢の中だ」と書いておけば、夢と現実を結ぶコミュニケーションツールが完成するのではないかと考えました。ということで、夢の中に着て行くファッションブランドを作りたいですね。自分が作ったものがいろんな人の精神世界に入っていくと考えると、ちょっとワクワクします。

Twitter:@mmmiyata
Instagram:@mmmiyataa
作品サイト:https://scrapbox.io/RyoheiMiyata/

(インタビュー・編集:野村華花・海保奈那)


次回の統合デザイン学科卒業生インタビューは…!

「環境の中に溢れている美しさに気づかせる作品を作りたい」
圡方悠輝(ひじかた ゆうき)さん
Artist / Designer / 統合デザイン学科研究室 副手
統合デザイン学科1期生 深澤直人・長崎綱雄プロジェクト

統合デザイン学科を卒業し、現在はアーティストとして活動しながら統合デザイン学科研究室の副手として勤務されている𡈽方さん。
多摩美主催の助手展には積極的に参加し、発表する度に「代表作です」と言えるように制作しているそうです。
そんな圡方さんの制作に対する原動力とは?
卒業生インタビュー第2弾は明日公開です!乞うご期待!

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