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統合デザイン学科4年生インタビュー#09小池康晴

小池康晴(こいけ やすはる)
多摩美術大学統合デザイン学科5期生
米山貴久・丸橋裕史プロジェクト所属

ー現在の主な活動について教えてください。

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造形をすることが好きなので、形の美学や人間工学にも視野を広げて自主制作や卒業作品の制作をしています。例えば、自主制作では「sakazuki」や「タイプライター型トイレットペーパー」を制作しました。

「杯」って「御供物やお酒といった物を入れる」じゃないですか。それを大きくすることで、人を座らせたり物を乗せたりすることができたら面白いのではないかと思い制作しました。「sakazuki」は本来「杯」そのものがもつ機能を拡張させた作品です。

「タイプライター型トイレットペーパー」は、トイレットペーパーの紙をちぎる行為をタイプライターと同じような仕組みにできたら面白いんじゃないかと思ったんです。ただのトイレットペーパーホルダーよりもこういうおもちゃっぽいものがあった方が、トイレの時間も楽しくなるのではないかと思いました。トイレットペーパーにも文字の印刷がされていて、本物らしさが増すような作品ですね。
どちらも面白いプロダクト作りの一環として作りました。


ーものづくりを始めたきっかけは何だったのでしょうか?
僕は小さい頃から動くものに関心がありました。最初はCDプレイヤーが回る様子に興味を持ち始めたのがきっかけで、徐々に家電や車といったように規模が大きくなっていきました。ある日どうしても欲しい憧れている車があって、いくら頼んでも買ってもらえるわけがないので自分で紙や段ボールを使って工作をしました。そこで「ものを作るのって楽しいな」「自分でもっと作ってみたらどうなるんだろう」と思い、制作を続けました。大学に入学してからはデザイン学や高度な技術を学んだので、それらを活用して制作をしています。


ー今までに制作した作品について教えてください

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走行シーン中画質

オリジナルの新幹線を作りました。小さい頃から動くものの中でも鉄道が特に好きで、新幹線をずっと作ってみたかったので、3Dキャドで制作をしました。スピードを出すために流線を帯びているデザインにしたのですが、これはきちんと空気力学のデータを参考に考えたのでこういった形になっています。トンネルに入った時の気圧の空気抵抗を減らすために、非常にシャープなラインにしています。

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これは木でできた「saezuri」という椅子の作品です。鳥が羽ばたく瞬間の形を抽象的な形として表現した作品で、横から見ると鳥がさえずりながら羽ばたいているように見えます。現在、造形的な形をプロダクトに落とし込むことを研究しているので、椅子や家具にもそれを取り入れたらどうなるか実験としてこういった形を作りました。

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こちらの作品は九谷焼でできたアルコールディスペンサーです。九谷焼といって石川県に古くから伝わる伝統工芸品なのですが「今後、九谷焼の未来のあり方をどうマネジメントしていくか」という大学の課題で、九谷焼の作家さんとコラボレーションをして制作した作品となります。僕は形のデザインを担当し、果実を絞っている形を抽象的に表現しました。果物のみずみずしさをより強く表現するためにこのように絞り込んだ形になっています。上部のセンサーが手に反応することで中から消毒液が出てくる仕組みにしました。


ー制作において大切にしていることは何ですか?
普段から手を動かすことを重視しています。手を動かすことによってより経験値が増えたりとか、作業することで得たアイディアを、今後引き出しとして利用するための良いきっかけになるんじゃないかなと思って。無駄に時間を過ごさないためにも常に手を動かすことを心がけて制作しています。

ちょっと時間が空いたらとにかく多くのフォルムをスケッチしていました。いろんなバリエーションを出してアイディアを出すトレーニングを日常でしています。
また、スケッチだけで終わるのではなく、考えたものを3Dキャドに一体化させて実際に形を作るという作業もしています。3Dプリンタで出力して、実際に持ってみて触り心地を確かめたり、形が不恰好じゃないかひとつひとつの微妙な角度まで見てみたり、色々検証しながら制作しています。

最終的には塗装も施し、精度を心がけながら模型を作っています。


ー卒業制作ではどのようなものを作られる予定ですか?
僕は「鉄道に求められる美のあり方」という作品を制作しようと考えています。今の鉄道のデザインというのは様々なバリエーションがあると思うのですが、それぞれ形がバラバラなので、1つの会社のブランディングイメージとして、統一感のある、アイデンティティを揃えた形状にするのが目的です。鉄道の美意識を基にして形を表現しようかなと考えています。最終的なアウトプットは、20分の1のクレイモデルを数体と、その背後にイメージボードを並べた展示になる予定です。

現段階では、ひとつひとつの機能を分析しつつ形を作っていく作業をしています。普段から、スケッチをするにしてもただ造形を彫刻的な要素だけで終わらせるのではなく、きちんと造形に意味があるということを考えながらデザインをしています。なので、今回の作品も実際に製図を描いて人間と車両との関係も考えながら、デザインをより言語化できるよう意識しています。

実際に3Dキャドで立体化させて、このラインで大丈夫かな、と色々細かい部分の検証しながら、様々な種類の形を制作しています。

卒業生制作というのは、自分のやりたいことができればいいなと考えていて、4年間で学んだ知識やデザインスキルを取り入れて制作した方がいいんじゃないかなと思います。

(インタビュー・編集:海保奈那)

Instagram: @yasuharu_koike


次回の統合デザイン学科4年生インタビューは…!

「音楽とビジュアルの相互作用を探求する」
山下奏(やました そう)
多摩美術大学統合デザイン学科5期生
中村勇吾プロジェクト所属

音楽を軸にCDのアートワークや、ミュージックビデオ、ライブ映撮影、ビデオジョッキー(VJ)をしている山下さん。
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4年生インタビュー第10弾公開中です!


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