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【卒展2022 Making Process】 #05 展示計画

展示総括
小池康晴(こいけやすはる)(@yasuharu_koike
多摩美術大学統合デザイン学科5期生
米山貴久・丸橋裕史プロジェクト所属

皆さんこんにちは。今年度の卒業制作展にて展示計画を担当させていただいた小池康晴です。今回は、今年度の展示計画のメイキング及び取り組みについてお話したいと思います。


1.展示に使用する素材

統合デザイン学科の卒業制作展は、普段私たち学生が授業や制作の作業場として使用している上野毛キャンパスで行うのが特徴です。そこでは、白い壁に黒い床といったシンプルな空間に作品を展示するのが主流なので、今年も例年と同じスタイルで展示をする方向に決定しました。

まず最初に取り組んだのは展示するために使用する素材の検討です。普段私たちが使用している上野毛キャンパスの教室には、机や椅子、ホワイトボード、収納棚といったあらゆるものが置かれています。これらを取り払って綺麗な空間を作るために、簡単に組み立てられる壁を建設することにしました。

プロセス1

ここで使用する素材は、骨組みに「2×4(ツーバイフォー)」という木材、壁に白いダンボールを選択しました。
組み立て方法は、2×4の両先端にアジャスターを取り付けて天地に合わせて設置し、柱の間にダンボールを貼り付けるのを基本としました。

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上野毛キャンパスの教室は部屋ごとに天井の高さが異なるため、あらゆる長さの2×4を用意する必要がありました。そのため各自で天井の高さを計測してもらい、その部屋に応じた長さの2×4を手配しました。

さらに、今年度は2×4の原産地であるアメリカに空前の建築ブームが訪れたことにより、日本に向けて輸出される分の2×4の数が不足する事態が起こりました。これによって例年よりも300本少ない1000本までに制限しなければなりませんでした。


2.展示エリアの変更

展示をするためには展示で使う建物を決める必要がありました。例年統合デザイン学科の卒業制作展は、本館・1号館・2号館・3号館の4つのエリアを使用していたので、今年も例年と同じく、そこを展示部屋として使用しようとしていましたが、今年度は校舎の耐震工事の関係で本館が使用できないことになりました。その結果、展示エリアは1-3号館に加えて新たにA棟スタジオと図書館が加わり、例年とは異なった展示配置になりました。

A棟スタジオと図書館。この2つは学科外のエリアであり、今まで展示空間として使用した前例がないことからほとんど未知の状況にありました。新たに展示エリアとして使用するためには、空間の寸法と安全性を確認する必要があったので、これらはより念入りに調査をしました。

このように2022年度の卒業制作展は、木材・展示エリアの制限といった限られた範囲内でいかに展示計画をしていくかが課題となりました。


3.展示計画書の作成

例年と異なったスタイルでどう展示をしていくかが課題となり、次に取り組んだのは学生による展示計画書の作成です。展示部屋を作っていくにはそれぞれの展示内容を把握する必要があるので、学生全員に展示計画書を作成してもらいました。

計画書には作品のイメージや寸法・重量といった数値に留まらず、展示形式や照明の度合い、音の有無や使用する備品名、そして部屋内での展示位置などと多くの内容を把握するために、より細密な情報を記載してもらいました。


4.部屋の割り振り

今回展示計画で一番重要となったのは、展示する作品の部屋割りです。

統合デザイン学科は、グラフィック・プロダクト・インターフェースといった多くの分野に取り組む学科であるため、卒業制作では様々なジャンルの作品が存在してきます。私たちは、色々な作品がありながらも、まとまりのある展示を目指しました。

プロセス2

プロセスとしては最初に作品の仕分けを行い、それをベースに各部屋に作品を割り振っていきました。それぞれ展示計画書に記載してあった内容を参考に作品を整理していきました。

作品を仕分けていく上で最初に着目したのは空間の明暗です。計画時には、自然光・人工照明・暗室・完全暗室と4つのバリエーションを作りました。より学生の希望に沿った空間を提供するために、光量を第一に考えて選別しました。

次に作品のジャンルで仕分けをしました。まとまりのある展示を作るのに重要な作品のジャンルはもちろん、コンセプトだけでなく、使用されている素材や展示形式にも着目しました。特に今年度は展示できるエリアが限られているので、どの部屋にどの作品が適しているか、より念入りに仕分けをしました。

これらを徹底的に討論しながら、各部屋にそれぞれの作品を割り振っていきました。


5.部屋のレイアウト

作品を各部屋に割り振り、、次に部屋内での作品と建設する壁のレイアウトをしました。各部屋のメンバーには展示部屋のレイアウトを作成してもらいました。

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レイアウトの作成は、部屋リーダーを中心とした展示計画会議の中で、部屋全体で調和が取れるよう、展示計画書を参考に考案してもらいました。実際に展示部屋を訪ね採寸等を行い、メンバー同士でお互いの展示位置を確認し、作品同士が干渉し合わないかどうかも確認してもらいました。

レイアウトには、部屋の細部の寸法や建設する壁のダンボールと2×4の数を記載してもらいました。教室の天井の高さは部屋ごとに異なるため、あらゆる長さの2×4を用意する必要があり、各自で計測した高さに応じた長さの2×4を手配しました。また今年度は木材不足で例年より2×4の数が少ないため、必要最低限に留めるよう工夫してレイアウトを作成してもらいました。


6.感染対策

新型コロナウィルスが流行しているため、感染対策を徹底的に実施しました。まず、換気をよくするために全部屋の窓と入口のドアを全開にすること、そして出入りする際には必ず手指を消毒をしてもらえるよう、消毒液を設置しました。また、手や体が触れるような体験型の作品には消毒用品を設置しました。受付時の検温と消毒も徹底しました。


7.備品の貸し出し

展示班は備品の貸し出し管理も担いました。展示計画書に記載してもらった備品は、全員に平等に貸し出す事を基本としました。貸し出す際には、貸し出し可能な備品をリスト化したデータを作って配布し、備品の希望が被った場合は学生それぞれで話し合ってもらいながら進行していきました。また、より希望に沿った配布ができるように、段階的に備品の募集をかけるなど色々と工夫をしました。


8.設営

展示をするにあたって最後の仕上げとなるのが設営です。今まで計画してきた事を全て実行する時で、展示計画の中でも一番忙しかったです。設営は早朝の搬入から始まります。1000本の2×4と1000枚のダンボールを総動員で手分けして運びました。この日はキャンパス全体の大掃除もあったため、それらを一時的に2号館に搬入しました。この時、想定していたよりも多くの学生に協力してもらったので、この最初の搬入は数時間で完了することができました。

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その後は、各部屋で必要な数のダンボールと2×4を運びました。もの凄い量だったので、お互いに協力し合って運びました。実際は数時間で完了すると想定していましたが、例年とは異なり、部屋数が30箇所と多かったため、搬入だけで1日かかりました。

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搬入が終わった後は、組み立て作業をしました。実際に作業していくと、色々と想定外の事態が多く起こりました。設営にかかる時間が予想よりも長く時間がかかったり、各部屋の設営の進行速度に差が生じてしまったりしていました。そこで、早く設営が終わった部屋の学生には、まだ設営が終わっていない部屋のサポートに回ってもらいました。このように学生たちに協力し合って作業してもらったおかげで、無事に卒業制作展を迎えることができました。


9.最後に

今回の卒業制作展は例年と異なった展示風景となり、これまでに比べて作業量が増えたことで、余裕を持って展示を迎えることは困難であったと思います。また、反省点や改善点も多かったです。しかし、展示計画や設営での多くの方々のご協力、学生たちの積極的な行動のおかげで、無事に展示を終えることができました。皆様に心の底から感謝を申し上げます。私自身この1年間が本当に良い経験となり、良い思い出となりました。

来年度もまだ耐震補強工事が続き、本年と同じような展示形式になるかもしれません。
このnote記事が後輩たちの役に立ち、より良い卒業制作展になることを心から願っています。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

展示総括
小池 康晴 

設営・補佐
井田渓一郎 

書記・集計
望月沙弥 

備品管理
高下幹人・丸山孝穂

(編集:海保奈那・蕪木彩加)


3月13日から八王子キャンパスで開催される、美術学部卒業制作展・大学院修了制作展B(ピックアップ卒展)では他学科の作品も同時に鑑賞できる展示となっております。是非ご来場ください!

多摩美術大学 美術学部卒業制作展・大学院修了制作展B(ピックアップ卒展)

会期
3月13日(日)〜3月15日(火)
10:00 - 18:00(最終日15:00まで)
場所
多摩美術大学八王子キャンパス アートテーク
東京都八王子市鑓水2-1723
交通
JR・京王相模原線「橋本」駅北口ロータリー6番バス乗り場より神奈川中央交通バス「多摩美術大学行」(運賃180円)で8分、JR「八王子」駅南口ロータリー5番バス乗り場より京王バス「急行 多摩美術大学行」(運賃210円)で20分
詳細2021年度 多摩美術大学 美術学部卒業制作展・大学院修了制作展B

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