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統合デザイン学科院生インタビュー#12カク・シンガイ

カク・シンガイ
多摩美術大学統合デザイン学科大学院2年
深澤直人・長崎綱雄プロジェクト

ー中国出身とのことですが、統合デザインに来た理由は何ですか?
深澤教授のデザインに深く影響を受けたからです。私にとって深澤教授はずっと教科書みたいな人物で、彼のもとで勉強することが夢だったため、統合デザイン学科に来ました。
深澤教授はいつも素晴らしいデザインを作っていらっしゃいます。僕はその美意識やデザインのフィロソフィーに深く影響され、人間の幸せの中にクラシックに流れているファニチャーのレベルを目指すためにデザインをはじめました。深澤先生の代表的な哲学は「デザインの無意識」あるいは「ミニマルの考え方」で、僕は美しい考え方に興味があります。

深澤先生の考え方に出会う前、中国ではどのような事を学ばれていましたか?

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もともと器のデザイナーで、工芸やデザインの知識を学んでいました。自分の作品を作って感動したいという願望と、もっと上手くなりたいという向上心がきっかけで器を制作していましたが、デザインがどういうものかのかはっきりしていませんでした。なので、大学時代に深澤先生の作品と出会い衝撃を受けました。


ー中国の工芸品でカクさんが美しいと思うものはありますか?また、何故美しく感じるのか教えてください。
宋の時代の器は形がすごく洗練されていて綺麗です。実用的な形をしているなど、形の美しさと実用性がうまく融合しています。
もしかしたら、宋の時代の器は中国のミニマルデザインの原点なのではないかと考えます。


ー陶磁器のデザインとインテリアのデザイン、どんなところに繋がりを感じるのか教えてください。
ものを取り巻く空間を作るというところです。インテリアは大きな器だと考えています。器の機能は単純ですが、細いところまで学問があります。お茶やお酒の香りを引き立たせる器だけでもたくさんの種類があり、優れた料理家は食材と器の関係を重視して、お客さんに一番いい空間を提供します。デザイナーの場合は、人間の行動や素材の質感などより複雑な要素を調和させた空間を提供します。
面白い素材はいろいろあると思っていて、大学生時代陶器を作っていたときは『粘土の性格』という言葉をよく聞いていました。やはりどんな素材でも素材の性格をよく理解することで面白いものになれる可能性があると思います。

また、工芸とプロダクトの境界の考え方で影響を受けた言葉は、深澤先生の『Modern craft means design.』です。今の時代はなんでもデザインの考え方が必要です。工芸も、例えば陶磁器なら粘土の性質を理解した上で作る必要があります。今している工芸ではないことでも、似た印象があります。


ミニマルをテーマにインテリア中心の研究をしているとのことですが、それらのどのような部分に魅力や興味を感じていますか?
使う素材の必要最小限量を見出す過程で、モノの性質を正しく認識し視覚や心理的なノイズを削減することがミニマルデザインの魅力です。また、そういったものの中には、時に時間や地域を越えるノーマルが現れることも魅力の一つです。


ー今までに制作した作品について教えてください

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これは『M型スツール』です。 この作品は深澤先生の教えに沿って制作したもので、私のデザインの考え方にとってすごく大事な作品になりました。地面から座面まで貫き通す一本の線は、シンプルな力だけでなく、ベニヤ板という素材の性質を大切に守ってミニマルなデザインの適性を実現させています。

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これは『段ボール犬_だんぼーるいぬ』です。
ダンボールの性質を守って、最小限な加工で犬を表現する課題で制作しました。ダンボールは人にとって身近な素材で、犬も人間に対して身近な存在です。ダンボールに犬のイメージを落とし込み、誰でも共感できるようにしました。教授も耳の部分が良いとおっしゃっていて、僕のお気に入りの作品です。


ー卒制はどんなようなものを作ろうと考えていますか?
今まで続けてる卒制はソファ及び周囲の家具のデザインです。最後は深澤プロジェクトの学生と一緒に、板をテーマに一つのインテリア空間を完成させる予定です。もう一つは自分らしいアーティスティックな作品を考えています。

(インタビュー・編集:白井美輝)

Instagram: @don.gck


次回からは統合デザイン学科卒業生インタビューをお届けします!

統合デザイン学科を卒業した先輩方は今、何をしているのか?
何を学び、どのようにして今の進路に繋がっていったのか、1期生〜4期生の先輩方にお話を伺っていきます!
在学中に制作した作品や、統合デザイン学科での思い出などについても教えていただきました。
卒業生インタビュー第1弾は12月17日更新予定です。乞うご期待!

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