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統合デザイン学科卒業制作インタビュー#04渡邊美里さん

似顔絵

渡邊 美里(わたなべ みさと)
多摩美術大学統合デザイン学科5期生
中村勇吾プロジェクト所属



_卒業制作で制作した作品の紹介をお願いします。

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私は『変身フォント』という人が文字に変身するアニメーションを大文字アルファベットと数字を一式、制作しました。それぞれが違った現れ方、変身の仕方、消え方をします。

こちらのアニメーションフォントはLINE STOREで販売しているので、実際に使用できます。


_この作品を作ろうと思った経緯について教えてください。

2年生の授業の課題でアニメーションを制作したのが楽しかったので、その頃から漠然とですが、卒業制作では手描きアニメーションを作りたいなと思っていました。

3年生の時はそれを意識して、課題作品もなるべくアニメーションに寄せて色々な描画ソフト、フレームレートや描き方を試していました。

しかし、今までほとんどアニメーションに触れてこなかった事もあり、技術不足な面が否めず作業効率も悪く、3年次の作品ではあまり動きや絵のクオリティを自分の納得のいくレベルにまで上げることができませんでした。

「アニメーションを作るってこんなに地道で大変なものなのか」と改めて実感して、もっと時間をかけて自分なりのアニメーションを完成させてみたいという気持ちが強くなっていきました。

4年生になって卒業制作が始まり、はじめは手描きアニメーションに何か機能を持たせようと、時間の経過を表すアニメーション(カウントダウン、ストップウォッチ、時計など)や、計測結果と同期するアニメーション(温度計、数取器など)を制作しようと考えていました。

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その試作として作っていた動画の中に人が数字に変身するアニメーションがあり、なんとなくそれが自分では気に入っていたので、それらをもっと時間をかけて形にしてみたいと思いました。
そこから、人が文字に変身するアニメーションの制作を決めました。

こちらは5月時点での試作です。初めは数字だけの予定だったのですが、アルファベットも作ったほうが用途も動きのバリエーションも広がりそうだという事で、アルファベットと数字一式のアニメーションフォントを作ることにしました。 


_テーマが決まってからどのように制作していったのか、制作過程をお聞きしたいです。

人が文字に変身するアニメーションをアルファベットと数字一式描くと決めたのが6月頃で、まずは11月末までに一式作りきる事を目標にして、少しずつアニメーションを描き進めていきました。

制作の途中、自分の作品に対して「単純すぎるのではないか」「これを良いと思って見てくれる人はいるのだろうか」と思い悩んだりもしましたが、小さいアイデアだったとしても毎週何かしら進めて発表し、フィードバックをもらって反映することを繰り返しているうちに、少しずつ先生やプロジェクトのメンバーの反応も良くなっていったので、前向きになれました。

そして制作を進めている中で、人が文字に変身するという単純な作品だからこそ、細部へのこだわりやバリエーションを持たせることが大事なポイントになると思い、服装や変身の仕方だけでなく、現れ方や消え方にもバリエーションを持たせました。
全体の雰囲気を壊さないようにと、配色にもこだわりました。

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一通りの文字のアニメーションができた後は、細部の調整やアニメーションフォントを使用しているシーンをまとめた紹介映像の制作に取り掛かりました。

その期間では、After Effectsを使いながらアニメーションフォントを使って表示する単語や文を何にするか、並べ方、字間、文字の出るタイミングやスピードなどを検討しました。

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その頃に「実際に使えるようになったらいいね」という話になり、ちょうどLINEの『LINEクリエイターズマーケット』でアニメーション絵文字の販売が開始されていたので、これを機に思い切って登録してみる事にしました。
 
LINEのアニメーション絵文字を登録する際のガイドラインでは、絵文字一個当たりのフレーム数は20枚以内という制限があったので、入場退場のシーンのカットや、24fpsから10fpsに変更するなどしてフレーム数の調整をしました。

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LINEの絵文字申請が終わった後は、引き続き映像の調整やアニメーションのブラッシュアップをしながら展示について考えていきました。


_展示空間はどのように考えていきましたか?

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アニメーションを制作する時点で、モニターは2台借りて、1台はアルファベットや数字が一個ずつ変身していく様子を順番に流し、もう1台の画面では単語や文章に並べた状態や使用シーンなどの動画を流そうと決めていました。

細々としたアニメーションだったので、それを展示するにはなるべく大きいモニターが適していると思い、大学で借りられる中で1番大きい55インチのモニターを使わせていただきました。

映像以外に展示したものとしては、人から文字に移り変わる過程を見られるように、四コマ漫画のようにアニメーションのフレームを壁に並べて貼りました。


_展示を行った感想を教えてください。

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展示が始まる前までは、「誰にも見てもらえなかったらどうしよう」と思っていたのですが、立ち止まって見てくれる人がいたり「可愛い」と言ってくれたり「面白いね」と笑ってくれたり、写真や動画を撮ってくれたり、変身フォントのポーズのモノマネをしてくれているのを見て、凄く嬉しくなりました。

全文字を一個ずつ順番に流すモニターの映像は5分以上あるにもかかわらず、最初から最後までしっかり見てくれる方もいて、それも本当に嬉しかったです。

2日目からはキャプションの横にLINEの変身フォント購入ページのQRコードを置いてみたのですが、ありがたいことに想像していたよりも多くの方々が購入して下さいました。また、友人が変身フォントを使っているLINEのスクショを送ってくれたりと、販売してみて良かったなと実感しました。

展示の準備では周りの方々にすごく助けられました。本当に感謝しています。


_この作品を通して、今後やっていきたいことなどあれば教えてください。

私は計画を立てたりコツコツと何かに取り組んだりする事が苦手なのですが、今回の卒業制作では楽しんで出来た事もあり、とても良い経験になりました。
純粋に楽しむ気持ちを大切にしながら、今後も色々なアニメーションを描いてみたいなと思います。

(インタビュー・編集:海保奈那・蕪木彩加)


今回インタビューした作品は、3月13日から八王子キャンパスで開催される、美術学部卒業制作展・大学院修了制作展B(ピックアップ卒展!)でご覧いただけます。
他学科の作品も同時に鑑賞できる展示となっております。是非ご来場ください!

多摩美術大学 美術学部卒業制作展・大学院修了制作展B(ピックアップ卒展!)

会期
3月13日(日)〜3月15日(火)
10:00 - 18:00(最終日15:00まで)
場所
多摩美術大学八王子キャンパス アートテーク
東京都八王子市鑓水2-1723
交通
JR・京王相模原線「橋本」駅北口ロータリー6番バス乗り場より神奈川中央交通バス「多摩美術大学行」(運賃180円)で8分、JR「八王子」駅南口ロータリー5番バス乗り場より京王バス「急行 多摩美術大学行」(運賃210円)で20分
詳細:2021年度 多摩美術大学 美術学部卒業制作展・大学院修了制作展B

次回の卒業制作インタビューは…!

「THE GOD OF WEB-KARMA」
葉競航(YE JINGHANG)
多摩美術大学統合デザイン学科5期生
佐野研二郎・小杉幸一・榮良太プロジェクト所属


歪んだネットの現状を風刺した映像作品を制作した葉さん。
宗教の要素をネットと結び付けて映像に表現したいと考えたそうです。
なぜ宗教を結び付けようと考えたのでしょうか?
卒業制作インタビュー第5弾は明日公開です!乞うご期待!


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