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配偶者の収入と扶養範囲

パートやアルバイトで働く主婦(主夫)の中には、夫(妻)の社会保険の扶養や税金の扶養控除を受けられる扶養範囲内で働きたいと考える人も多いと思います。

現在(2022年3月時点)、103万円や130万円などの「収入の壁」は6種類あると言われています。

扶養控除には、健康保険や厚生年金などの「社会保険上の扶養控除」と、配偶者控除・配偶者特別控除の「税制上の扶養控除」の2つがあります。

ちょっと、難しい社会保険や税金の話。
夫(妻)の扶養範囲で働くとしても、扶養範囲を外れてしまわないように制度について少し知っておきましょう。

「扶養」とは?

「扶養(ふよう)」とは、親族から経済的援助を受けている人です。夫(妻)の扶養になると扶養控除(一定金額の所得控除)が受けられます。

被扶養者は、夫(妻)などの扶養になることで、健康保険や厚生年金の保険料の支払い義務が不要(ふよう)になるだけではなく、納税者(夫または妻)の所得税も控除を受ける事ができます。

その条件について確認しておかなければ、被扶養者が一定の収入を超えてしまうと扶養から外れてしまうので注意しましょう。

なお、控除を受ける納税者本人の合計所得金額が1,000万円を超えた場合は、配偶者控除/配偶者特別控除は受けられません。今回、下記モデル家庭を例に考えてみましょう。

【モデルケース】
東京都在住、全国健康保険協会に加入
夫(40歳)・・・会社員(年間給与700万円以下)
妻(38歳)・・・パート従業員
子ども・・・小学生2人
※夫も妻もその他の収入なし

所得税の基礎知識

所得税の対象となる課税所得は給与収入(額面)から給与所得控除額と所得控除額を差し引いて計算します。

給与所得控除額とは、給与所得者の給与から一定額差し引くことのできる控除額です。

所得控除額とは、基礎控除、社会保険料控除や医療費控除、配偶者控除などを考慮して所得税の対象となる金額を計算する際に収入から差し引くことができる金額です。

【課税所得の計算】

夫の給与所得控除額は180万円です。

※「所得」は、「給与所得控除」を引いた額です。

夫の基礎控除額は48万円です。

※「所得」は、「給与所得控除」を引いた額です。
※「所得」は、「給与所得控除」を引いた額です。

夫の給与が年間700万円のため、妻の年間給与が103万円(所得48万円)以上になると配偶者特別控除の金額の適用になります。

所得控除の部分に関しては、夫は会社員なので、厚生年金や健康保険、介護保険、雇用保険料などが控除対象となります。プラス、基礎控除や配偶者控除の控除額も対象となります。

妻の収入と扶養範囲

夫(妻)の扶養範囲内で働きたいと考えているのであれば、自分の年収がいくら以上になると扶養範囲外になってしまうのか把握しておく必要があります。

①100万円の壁

妻がパートで得た給与が年間で100万円(所得45万円)だった場合、所得税の基礎控除額48万円の範囲内のため、原則として所得税が非課税となるほか、住民税も非課税となります。ただし、住民税は自治体によって非課税となる所得が異なるので、収入が100万円でも課税対象となる場合もあります。

【税金と社会保険、扶養への影響】
夫の扶養範囲
住民税:課税なし(※自治体によって課税対象となる場合有)
所得税:課税なし
社会保険:保険料負担なし
配偶者控除:38万円

②103万円の壁

妻がパートで得た給与が年間で103万円の場合は、給与所得が48万円となり、住民税のみ課税対象となります。103万円を超えると所得税の課税対象となるため扶養配偶者の給与を103万円以上いかないように働きたいという人も多くいます。

【税金と社会保険、扶養への影響】
夫の扶養範囲
住民税:課税対象
所得税:課税なし
社会保険:保険料負担なし
配偶者控除適用:38万円

③106万円の壁

妻がパートで得た給与が年間で106万円を超えると、パートの勤務先の社会保険に加入が必要になる場合があります。
※被保険者資格取得の基準(4分の3基準)

妻が自分で社会保険に加入しなければいけなくなる収入の壁(妻が自分で社会保険に加入し保険料を支払うことになる)なので、夫の社会保険に扶養で加入していたいという人は働き方に気を付けたい部分です。

妻の1週間の所定労働時間及び1か月の所定労働日数が常時雇用者の4分の3以上の場合、妻の働いている事業者(パート先)の社会保険に加入する事になります。
また、4分の3に満たなくてもパート先で下記条件下で働いた場合もパート先の社会保険に加入しなければいけません。(※1)

 ⑴1週間当たりの所定労働時間が20時間以上
 ⑵1カ月当たりの賃金が88,000以上あること
 ⑶雇用期間の見込みが1年以上であること
 ⑷学生でないこと
 ⑸下記いずれかに該当する
  ・従業員数が常時501人以上の事業所(特定適用事業所)で働いている
  ・従業員数が常時500人以下で社会保険への加入が労使で合意がなされ   ている事業所(任意特定適用事業所)で働いている
注意:2022年10月からは⑶「1年以上→2か月超」、⑸「従業員数が常時501人以上の事業所→従業員数が常時101人以上の事業所」に変更になります。更に、2024年10月からは⑸「従業員数が常時101人以上の事業所→従業員数が常時51人以上の事業所」に変更の予定です。
厚生労働省_社会保険適用拡大特設サイトより

【税金と社会保険、扶養への影響】
夫の扶養範囲
住民税:課税対象
所得税:課税対象
社会保険:保険料負担なし
配偶者特別控除:38万円

④130万円の壁

(※1)前述の106万円の壁で4分の3基準に満たない場合、妻が働いているパート先が特定適用事業所に該当せず、給与130万円未満で被保険者である夫の年収の2分の1未満であれば、夫が加入する社会保険の被扶養者となれます。

妻の給与が130万円を超えると妻が自分で社会保険に加入しなければいけなくなります。夫(妻)の扶養で働いている人が「130万円の壁」と言い、130万円を超えないように気を付けて働いている理由です。

【税金と社会保険、扶養への影響】
働き方(4分の3基準)によっては、夫の扶養範囲外になる
住民税:課税対象
所得税:課税対象
社会保険:(※1)に該当する場合は、夫の扶養範囲外となり、保険料負担有(健康保険+厚生年金)
配偶者特別控除:38万円

⑤150万円・201万円の壁

妻のパート給与が年間130万円を超えると夫の扶養から外れてしまいます。では、「150万円の壁」や「201万円の壁」と言われるものが何の壁なのかというと配偶者特別控除の適用に関する年収の金額です。

【妻の給与が150万円を超える場合】
妻の給与が150万円を超えると配偶者特別控除額が少なくなるボーダーラインです。妻の給与が150万円までの夫の配偶者特別控除額は、夫の給与が700万円で妻の給与所得が95万円(妻の給与150万円の場合)なので、38万円です。

【妻の給与が201万円を超える場合】
妻の給与201万円(給与所得132.7万円)までが夫が配偶者特別控除を受けられるボーダーラインです。

妻の給与が202万円を超えてしまうと夫は配偶者特別控除が受けられませんので「201万円の壁」と言われているラインになります。

会社員は知っておきたい税金と社会保険

税金と社会保険では年収に含まれる項目が異なります。

税金の場合、賞与や家族手当、残業手当などは年収に含まれます。通勤手当は月額15万円まで非課税になるので15万円までは年収に含まれません。

一方、106万円の壁(月額88,000円×12)と言われる社会保険の加入要件には、賞与や残業手当、通勤手当は含みません。

130万円未満の方では、労働の対価として受ける賞与や残業手当および通勤手当などは年収に含まれます。

年収130万円未満という要件に関しては、夫の加入するそれぞれの健康保険組合で個別に判断基準が設けられていることがあるので夫の扶養範囲でいるためには、その基準を確認しておく必要があります。

働き方も多様化している時代ですが、夫(妻)の扶養範囲内で働きたいという人は、「収入の壁」についてオーバーしてしまわないように制度を理解し、夫の社会保険の扶養の基準を把握しておくようにしましょう。

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