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芋焼酎な男

そろそろ書かないといけないな。

鹿児島が誇る芋焼酎。もはや説明は不要。紅はるかで作る、サツマイモの焼酎。

大事なので冒頭に言っておこう。私は、芋焼酎が苦手。なので、芋焼酎が好きで、うっかり読もうとした人がいたら、そっと立ち去ってください。これはもう完全なる個人の嗜好なので、反論も受け付けないのでご了承ください。

1杯なら美味しく飲める。暑苦しいほどの芋感、「俺らしさ」を主張してくる。いっときの焼酎ブームに比べたら、幾分、落ち着いてきた気がするけど、そもそも、あまり興味がなくて、落ち着いたかもわかってないな。米や麦の焼酎は好きなんだけど、芋焼酎は1杯以上は飲めない。

ちなみに、日本酒でも純米大吟醸とかも、食事を邪魔してきて主張感が半端なくて、どうにも受け付けない。

芋焼酎な男は結構いる。その暑苦しさ、単純さ、昭和感、ステレオタイプな価値観は男友達としては頼りになる。甘えたら、甘えた分、いやそれ以上に優しくしてくれる。そんな人。

悲しいかな、私はそんな芋焼酎な男に好かれることが多い。それは、彼らが好きな女性というのがすごくわかりやすくて、無意識にその好きなイメージを演じてしまう時があるからだ。楽だからね。一所懸命で、でも友達思いで、明るくて、転んだら、周りに⭐︎(星)が飛び散って、「テへ」って笑う。朝はトーストをくわえながら、「行ってきまーす!」とか言う、天然演じる女子高生みたいな女。そんなお茶目で頑張り屋さんの彼女を周りは温かく見守ってる、ザ・昭和な世界観。「ときめき・トゥナイト」だ。(注:イメージね。してないからね)。ああ、そうか。うちの旦那は芋焼酎な男だったのだ。それが最大の価値観の違いだったのかも。

最近でも芋焼酎男はいた。昔こそ、芋焼酎男が好きそうな女を演じていたけど、もうそんなことは面倒だし、してない。そんな40すぎの女、嫌すぎる。だけど、私に染み付いてしまった、表面的な陽キャラクターというのは、「すごく明るいけど本当は心は泣いてる」と彼らに映るらしく、悲しいかな無駄に刺激してしまう。そう、彼らの大好物は、「表面的には明るいけど、俺しか知らない陰がある。それを守ってあげられるのは、俺だけだ」という価値観。結局、その「愛」と思ってる行為は、完全なる自己満足。主語は「俺」。

例えば私は料理が好きだし、食べるのが好きだ。それを、「子供のために一所懸命頑張ってるよね」って彼らは私を評価する。この上なく、うざい。別に頑張ってないし、好きなものを作って、愛する娘に食べさせたいだけなのに。「仕事帰り、お迎えの時間を気にしながら、自転車を必死で漕いで買い物に行ってそう。大丈夫かな」って、妄想は際限なく続く。こちらが否定すればするほど、「健気に隠そうとしている」と思えるほどの、自己肯定感。ああ、大学のテスト前も、ノート入手のため、「頑張り屋さん」風を演じたのも、自己嫌悪だ。冷静に考えれば、どんだけ不真面目かはわかるのに、「サキの頑張るところが好き」ってどうして思えるのだろう。エロいところとか、もっといいところあるよ? ああ、そうだったね、頑張り屋さんのヒロインが、エロいことなんて考えちゃいけないのよね、顔を真っ赤にして、「もうっ」って言って欲しいのね。 

仕事とかも、私がバタバタと対応していたら、「一所懸命にやってるよね」「頑張ってるところがサキらしいよね」とか評する。いや、お給料もらってるし、その分やってるだけだけどね。と、そのセリフに鳥肌が立ちながらも、手伝ってくれてる分、あまり否定できず「ありがとう」と対応する私も悪いか。だって、いくら説明しても、わかってもらえないのだ。

そういう男は、私に涙を見せようとする。自分の影を見せられるのは、私だけだと言いたいのだろう。例えば、小学校の運動会は、親がこれない子供を見てると泣きたくなるから、行きたくない。帰ったら苦しくなる、とか言う。これは、単に、心理学とかでよく言われる、「課題の分離ができてない」ってやつなんだけど、勝手に同情し、彼らは彼らの世界に浸る。

ちなみに、そういう芋焼酎なママ友さんもいるな。すごく優しいが、自分が想像した、他者の悩みを勝手に背負って、涙を流す。卒園式や授業参観でも感動して泣き、泣かない私に、「サキちゃん、どうして泣かないの?」と極悪非道な人みたいに平気で言う。「どうして、あなたは泣くの?」って思っても言わない私の優しさはわからないのだろうか。

いけない、いけない。いいところがあまり出てこない。

けど、あの暑苦しいほどの人間味には、弱ってる時に本当に温かい気持ちになる。平熱37度ぐらいの優しさは、私が感じる美しさはないけど、安心感を生み出す。

愛なんて、本当は無重力なものだ。見返りも求めないし、届かなくてもいい。わざわざ「俺は愛してる」って言うものでもない、軽やかなもの。それに重石をつける彼らを、「愛されている」と感じる女性もいるし、この世にはそう言うタイプもいないと、世界は回らない。

でも、「古代から他人の主義主張を変えるなんて、おこがましいし無理ゲー。人は人」と言う私の愛するウォッカな男の言葉に激しく頷き、芋焼酎男には、1杯だけ頂いて、にっこりと笑顔で去ろう。

あなたの「愛」というやつを、待っている女の人は他にたくさんいるよって。


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