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食虫植物1

官能的な話であり、そもそも倫理などはハナから欠落しておりますので、不快感など身の危険を感じたら、今すぐお帰りいただきますよう、よろしくお願いいたします。

この話はフィクションです。そもそも、フィクションとノンフィクションの境界などあるのだろうか。私の頭の中の空想か、実際起こったことなのか、書き手である私でさえわからない。ドラえもんの最終回は、のび太が病院で植物人間になっていて、ドラえもんなど存在せずに、ただ全てがのび太の空想であった、なんて話を聞いたことがあるけれど、日常の生活からマンモスが登場するほどの壮大な話まで、のび太にとってはそれは全て真実であろうし、そののび太が語るドラえもんは、本当に存在してるかのように、思うのだから。どっちでもいい。

ましてや、ここで顔も知らない女がいくら書いたところで、それは永遠に事実にはならない。ビーツもお弁当も娘の話も写真でさえも、どこかで誰かが書いたことを、拝借して自分のことのように書いてるとも限らないのだから。

繰り返しますが、これはフィクションです。私の頭の中に起こったことをここに記してるだけのことです。

昨日こんなLINEがきた。

「お姫様は明日、横浜駅に9時半に来れるのかな?」

一体、kはどうしたというのだろう。お姫様なんて、そんな言葉、発したことないでしょう。ここ数日、サクラドロップスのように、カラフルで甘い会話の飴を私の口に一粒ずつ入れ、カランカランと心地よい音を私の頭に響かせてくる。やはりkは何か媚薬を飲んでしまったのか。もしくは、特定の筋肉を刺激する筋トレをすると、このような甘い言葉を囁いてくれるツボのようなところがあるのか。そうなら教えて欲しい。

「はい♡馬車が遅れなければ。王子様は9時半に着けますか?」

服装に迷っていた。kが好きなタイトスカートもいいだろうし、モーブピンクのセットアップも、前に「着てきて」って言ってたし。でも、この一言で決まった。モーブかスモーキーピンクというのかわからないけど、そういった色のチュールスカート。お姫様が着るやつだ。階段の上がり下がりの時は少し持ち上げないと、下手すれば転倒するほどのフワッフワのやつ。会社に着てくと、椅子のローラーで何度か踏んでしまうやつ。

全身、甘甘にするのは私の好みではない。下が姫なら、上は革ジャンとかカジュアルかつ辛口にする。そうだ、最近クローゼットで発掘した、GUESSのタイトなssのGジャンにしよう。普段見てない服だからこそ、いいのだ。なぜか、この組み合わせで会社に行った時にはkはリモートか休みかでいなかったから。

kは「サキはなんでも似合うし、おしゃれ。色んなサキをコレクションしたい」と言っていた。もっとも、博士が愛した数式のように、翌日には綺麗サッパリ忘れている男なので、それを本当に言ったかなどわからない。私の妄想でしかない。

今日は2人だけの忘年会だ。お酒も飲まないし、焼肉や宴会メニューなどない。ただただ、全てを忘れ、解放し、お互いの体を貪る。もちろん今までの逢瀬もそうだったけど、今日は特別。ラブホテルのような背徳感による興奮を私はあまり感じないし、太陽の光から遮断される空間にいたくない。だから、いつも明るい光が差し込むシティーホテルで会ってきた。

でも今回はkから提案があった。「いろんなことから解放されたいって思ってるのに、声を押し殺すっていうのはなんか違うって思うんだよね。サキには解放してほしい。だから、今回はラブホテルにしない?」そう言ってkは、「こういうところはどう?」と色々と提案した。

こんなに自分が愛されてるのだと気が付き、涙ぐんでキーボードで打つ文字が滲む。「愛してる」なんて陳腐な言葉だ。言葉にして発した瞬間に、全てが陳腐化して、美しい花が灰色に染まり、石膏のごとくボロボロと崩れ落ちる。だけど、最近は交じり合ってる時に、愛してるという言葉が出てしまうし、kからもミラー反応のように同じ言葉が返ってくる。「かわいい」「綺麗」と言う言葉だけが、私のインプットからではなく、kから自然発生しているものだった。

私はそもそも私以外の人がどう思ってるのか、あまり興味がない人間だ。

ただ、自分が美しいと思ってる人や行為をみると、興味を持って、相手と一体化したいという欲求が生まれ興奮する。それは、自分が持ち得ない美しさを持ってるという点で、嫉妬に近いのかもしれない。そしてそれを自分のものにしてしまいたい。いや、擬態化という表現の方がしっくりくるかも。その美しい行為を自分の奥へと取り込み、牛のように反芻した上で、自分のものとして外に出したい。これは性分だろう。小中でもモノマネは得意だったし、何かを演じるというのは、私の中ではごくごく自然に日常的に行われるものだった。

今日はkと2人だけの忘年会なので、いつもとは違う雰囲気を楽しみたかった。天蓋ベットがあり、お風呂も室内もドレッサーもどこかオリエンタルな雰囲気があるところ。kに食べて欲しい料理を持ち込める、キッチン付き。部屋に入るなり、色んな備品や配置を探検隊のようにお互いが自由に確認する。色が変わるジェットバス付きのお風呂。kは私を撮影することが頭にあるのだろう、いつものように照明の具合を真っ先に確認していたように思う。

昭和のクイズ番組のような、電球が鏡の外枠に散りばめられた女優鏡のようなところで、私は3時間の愛撫を終えた後に、化粧をし直した。コンタクトレンズに関係する備品も配置され、至れり尽くせりの女優鏡だった。蛍光色のように明るいわけでもなく、オレンジ色の電球が、見たくもないシミや毛穴をちゃんと隠してくれる。

「そんなの直しても、またすぐ落ちるのに』。

そう言って、後ろから私の体を指でなぞる姿が鏡に映る。

「少しでも綺麗でいたいという女心よ。ほら、プレゼントも物をそのまま渡すより、無駄だとわかってても、ラッピングされると嬉しいでしょ?」

「ほう。うまいこというね」

「あら、最もこれはkが言ったことなんだけどね。覚えてないでしょうけど」

「覚えてない(笑)。言わなきゃいいのに、サキが自分で思ったこととして言えばいいのに」

「あのね、言葉っていうのは変形するのよ。kの言葉だったかもしれないけど、私の中に取り込まれ、私が発した言葉はもうあなたのものではないの。私の言葉よ」

そう言い終わるや否や、「生意気だ」と言って口を塞がれ、直した化粧も虚しく、また犯される。

人がどう思っているのかに興味がない。でもだからと言って、自分こそが真実であり、正義だとは全く思ってない。全く。同性を求める人も、結婚相手に性的に興奮できる人も、誰も求めてない人(状況でも)、パートナーも心から愛しつつ、同時に他の人を愛せる人も。私が美しいと思ったら、私の中では皆等しく美しい。基準などないし、優劣もない。法律もない。

そう、美しさ。私だけが感じる美しさ。それを吸い取りたいという欲求が誰よりも強いだけなのだ。ワインな女という文章を書いてたけれど、それは強欲な私が、全ての要素を吸い尽くしたいという欲求に駆られて書いただけのこと。極めて自分勝手なことだと思う。

「サキの中に入れると、ものすごく吸い付かれる。軟体動物のようにクネクネ動いて、サキの外側とは無関係に動いてる別の生物のようでもあるし、そうするとその妖艶な姿は魔女なのかもしれないとも思う」

「随分失礼なことを平然と言うわね」とムッとして抗議した。でも、それは確かにそうなのだ。kが発する言葉も滴る汗も私の口や膣の中で動くそのものも、全部全部、吸収したい。最初はkが所有していた思想やその思想からくる言葉、その魂や思想を内蔵している身体。私の体の奥で全て吸い取って、さも、もともと私の中にあったかのように、私の血となり肉となる。食虫植物なのかもしれない。真っ赤な花を咲かせる植物。その花を咲かせるために、ありとあらゆる美しさを喰み続ける。

私は食虫植物なのだ。そこに倫理や正義など存在しない。

倫理ってなんなんだろう?例えば「法的に結婚した相手に生涯ずっと愛し続ける」こと「だけ」が倫理であり真実の愛? でも宇宙から見た時にもそうなのだろうか?ちっぽけな人間が管理しやすいように法律というものを作り、それに当てはまる人間こそが「正」としてるように思ってしまう。もっというと、不倫というだけで何週間もワイドショーで時間を使う日本という国限定の「倫理」や「正義」であって、では一夫多妻制で生活してる何処かの住民は、倫理がなく、間違っているのだろうか? 私は頭が良くないので、正義の鉄拳を振りかざされると、「はて?」と思考が停止してしまう。

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