[外国企業決算を読む(8)] RTX
RTXの概要
レイセオン・テクノロジーズ、と言った方が「ああ、知ってる」と思う方が多いかもしれません。
つい最近、2023年7月17日に社名をレイセオン・テクノロジーズからRTXに変更したばかり。レイセオンとユナイテッド・テクノロジーズが経営統合してレイセオン・テクノロジーという世界最大規模の軍事メーカーが誕生して3年余り(経営統合が完了したのは2020年4月3日)、会社の中で権力闘争的ないろいろがあったのではないだろうかと勘繰っちゃいます。日本製鉄も、新日本製鐵と住友金属工業が合併した当初は「新日鐵住金」という社名だったのに、気づいたら住友の名が消されていたし😨。こっちこそ間違いなくいろいろあったと思いますが、ま、それは今は脇に置いておきましょう。
RTXは、もともとユナイテッド・テクノロジーズ傘下にあった航空機エンジン製造のプラット&ホイットニーと航空機用電子機器製造のコリンズ・エアロスペース、そして兵器を製造するレイセオンの3部門で構成されています。レイセオン製の兵器と言えば、地対空誘導弾「パトリオット」、巡航ミサイル「トマホーク」など。
売上高は670億ドル(2022年実績)で、ロッキードマーチン(660億ドル、同じく2022年実績)、ボーイング(666億ドル)をわずかだが上回っており航空宇宙・防衛産業で首位。
本社があるのはバージニア州アーリントン郡。アメリカ合衆国の首都ワシントンD.C.のすぐ隣。さすが世界最大の軍事企業、連邦政府の御用達感がバシバシ伝わってきます。
レイセオンはかつてダウ工業平均にも採用されていました。でも2020年8月末に、エクソンモービル、ファイザーとともに指数から除外されました。
財務情報
RTXは4つの部門で構成されています。
Collins Aerospace
コリンズ・エアロスペース。RTXを構成する部門の1つ。航空機関連部品を製造、販売している。Pratt & Whitney
プラット・アンド・ホイットニー。RTXを構成する部門の1つ。航空機エンジンを製造、販売している。RIS
Raytheon Intelligence & Space。RTXを構成する部門の1つ。サイバーセキュリティ関連製品やサービスを提供している。RMD
Raytheon Missiles & Defense。RTXを構成する部門の1つ。ミサイルなどを製造している。
また決算資料を読むにあたり、以下の製品やサービスの名前は知っておいた方がよいでしょう。
AIM-9X
Sidewinderとも呼ばれる空対空ミサイル。AMRAAM
Advanced Medium-Range Air-to-Air Missile の略。AIM-120とも。中距離空対空ミサイル。
知っておきたい専門用語
auxiliary power system
補助動力装置。
航空機の各部に圧縮空気、油圧、電力などを供給するために、推進用のエンジンとは別に搭載された小型エンジン。avianics
航空電子工学aviation
航空工学、航空機産業classified booking
機密扱いの製品やサービスの発注、予約fleet inspection
航空機の検査
その他知っておきたいワード
aftermarket
製品販売後に生じる様々なニーズに対応するための市場。消耗品の販売や部品交換、製品の保守や修理、機能追加など。backlog
受注残Commercial OE
Commercial Original Equipmentの略。
OEMのOEと同じで Original Equipment の日本語訳は「納入先の商標」。RTXの場合、航空機部品を製造している Collins Aerospace や航空機エンジンを製造している Pratt & Whitney が、納入先の商標で部品生産する場合がある。organic growth
事業売却や事業買収の影響を除いた売上や利益の成長。会社が持っている本来の成長実力値を表している。直訳すると「有機的な成長」で、これでは何のことかわからないが、米国企業の決算では割とよく見る言葉でもある。ユニリーバは同じ意味を表すのに Underlying Growth という表現を使っていて、私にはこちらの方がわかりやすい。YoY
Year-over-Year。前年比。YTD
Year-to-Date。年度の初めから今日まで。
具体例
参考にしたニュース記事
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?