野良のハ

https://slib.net/a/23381/  掌編をこちらにも載せています。 …

野良のハ

https://slib.net/a/23381/  掌編をこちらにも載せています。 Twitter→https://mobile.twitter.com/serungipity

最近の記事

『時間』 1

あの人について、私は穏やかな夢を見ることがなかった。 例えば山の中の小屋にあの人が住んでいて、たまに訪ねて行った時には素朴な野菜か何かの白いスープとコーヒーを振る舞ってくれて、丸い小窓から覗けば外には白い蝶々が舞っている。 帰り際に振り向けば、2階の丸窓から微笑みかけてくれる。そんな夢を見ることが無かった。 あの人が出てくる夢といえば、風のない事には風がないのだけど、それは穏やかなものではなくてとても不穏で、また不安で、そして怒りと羞恥に満ちた夕闇に取り残されるあの人を

    • 分岐

      道が見える。 1つや2つじゃない。10も20もそこにある。 どれにしたら納得されるのか、納得できるのか。言い訳や理由を考えるのがいやに億劫で、疲れてくる。 ひとつをとった。あまりに多くて困難な選択であったので、初めからそのひとつしかそこに無かったかのように、漠然とひとつとった。 今に次の分岐がやってくる。 胸の痛みと息苦しさを感じる。 途中、いくつかの脇道が見えた。 無視をすると、全身の皮下がチクチクと痛む。両足は汗で濡れ、首の後ろが重くなってくる。 いくつも

      • 灰色の街、灰色の命

          眠りに落ちる前、人の悲鳴を聞いた。女のものか男のものか、大人か子供かもわからなかった。大勢の悲鳴だと思った。黄色と群青の織り混ざった大きな塊が、赤を溶かしながら蠢くのが見えた。悲鳴が大きくなった。女の悲鳴のほうが多いと思った。 こういうのは、脳が疲れているか何かで情報のバランスが崩れているから、だから何か見えたり聞こえたりするんだ。そう言い聞かせて目を開け、耳を澄ませた。冷蔵庫の振動する音が聞こえた。  ヤマチ。 聞き慣れた女の人の声だった。 驚いた。 僕をヤマチと

        • 議論や、話し合いのとき

          「話し合いで大事なのは内容だし、内容を深めるために率直な意見を出し合えるような『良い雰囲気づくり』に気を配るべきなのに、態度に訴えるのは無意味だったり精神的に優位になりたい『逃げ』の気持ちの現れだと思う。でも何よりも互いに話し合いの環境が整えられないなら時間の無駄だと思う。」 そんなふうに思います。 イジワルな態度をとってみたり、しかめっ面で顔をそむけてみたり、相手の話を遮ってみたり、口調がきつくなってしまったり……そんなことしなくても率直な意見交換ができる人に、カメラの

        『時間』 1

          「礼儀」への思い

          「それって『無礼』じゃない?」 そういう目線が欲しい なんとなく、人は「礼儀」の観点を忘れてる、蔑ろにしてるような気がします。 ある親は、子に対して「あれはやっちゃいけないよ」「これをやったらだめだよ」と色々なことを禁止するわけですけど、数ある理由の中で「危ないから」って強いですよね。説得力があります。 こんな場面があったとします。 親戚が訪ねてきたので居間でなんとなく皆で話している。そこへ5歳の子供が鉄砲のおもちゃを向けたと そこでの叱り方で「弾が目にあたったらどうす

          「礼儀」への思い