無職日記 健康になりたい

毎日必ず飲むのは2種類の錠剤、状況に応じて2種類の眠剤、頓服の抗不安薬、加えてサプリメントを少しと、身体の調子が悪ければ市販薬を飲んでいるが、精神状態は不安定で何も手につかない。

市販薬はODしてもいいけど処方薬はやめようねというルールを自分に課していたのがいつ頃だったかもう思い出せない。市販薬を断ったはいいが、気付いたら処方薬に依存していた。不安で倍量飲み、自我が暴走して駄目だとわかっているのに酒が止まらない、眠れずにネットを彷徨い人に迷惑をかける、コントロールできない自分のせいで他人を傷付けてそれによって自身も傷ついて、突然寝て、起きたら全てを忘れている。脳を置き去りにして肉体だけが走っていたようなよくわからない疲労感しか残っていないのに、その時発した声にも言葉にも俺の感情が乗っていることが憎たらしい。身体だけならまだしも、内側まで侵食されているような。魂を抜かれて、自分ごと持ってかれた気分だ。
人に「昨日こんな事を言っていた、悲しかった」と言われたが何ひとつ覚えていなくて、謝るしかなかった。虚しいなと思った。こんな小さい粒の幾つかに人間関係を壊されそうになるのが怖かったが、この粒じゃなくても俺はこれまでの通院生活の殆どを、薬に振り回されていたような気もする。

薬があると薬を飲んでいるから大丈夫だと思えるが、作用が期待通りに表れないと、焦って量を増やしてしまう。焦るのは薬の先に解決手段がないからだ。薬を飲む以外にやることがない。せめてすぐにぶっ倒れて眠れたら楽だが俺は「成果をあげないと眠れない」と考える癖があるので、何もできていないままで寝るのが怖くて、せめて一つでも生活のタスクを終わらせていないと安心して眠りにつけない。だから不安な時にもつい、寝逃げできる薬よりも一時的に興奮したあと落ちるような薬を選んでいた。その"一時的に興奮"している時間にやる気が出て何か成し遂げられたらいいなあと、自分に期待してしまうのだ。洗濯物を干すとか机の上を片付けるとか簡単なことでいいから。

俺は己の過剰評価を金輪際やめろ。現実の自分に夢を見るのを止めろ。興奮して狂ってやる事といえば酒を飲み、傷を作り、人に暴言を吐き、泣き喚いて、更に薬を飲む、それだけだ。薬を飲んだって何もできないし何も変わらない。それなら潔く、何もせず汚い身体のまま汚い枕に顔を埋めて寝て、体力の回復に努めた方がマシだ。
健康になりたい。今だって寝た方がいいのに、何もできてないので怖くて眠れない。やはり俺はしんどい死にてえと思いながらでも無理矢理働いて、身体を動かしていないと駄目みたいだ。身体が疲れていれば家事ができていなくて家中荒れ放題でも「俺はやれることをやった」と思いながら酒を飲めるし、無職である時期よりもずっと早くアルコールが回って、現実から目を逸らして気絶できる。

人に精神的なケアをさせているなと感じる。
昔の自分は心配されたり注意を引いたりする事が嫌いで、とにかく目立ちたくなかった。幼少期から身体の調子が悪くてもなかなか自分からは言い出せなかったし、不登校になる前の学生時代は自意識がバグっていて、机の間を通って一人ずつプリントを提出に行くのにも心臓がバクバクしていた。椅子から立ち上がる音は大きすぎないか、この歩き方で合っているのか、呼吸の仕方でさえ不自然じゃないか気を遣ってしまい、そんなに静かでもない教室で息を止めて歩いた。
多分そういうのを変な方向に拗らせたのかネットで承認欲求モンスターとなりツイッターでウケることばかり考えて、自虐ツイートをしてODしてなんとなく「そういう人なんだ」と思ってもらえた。しかし健康なフォロワーに人生を面白がられて不健康なフォロワーには同調されるだけで、積極的に好意を表明してくれた人は少なかった。俺より面白い精神病患者はツイッターやnoteにたくさんいる。やがて飽きられた。俺もウケようとする事に疲れた。ツイッターを消した。そしたら本当に数少ない、ネットに書いてない事を知ってるような人達に向けて、だるい言動ばっかするようになってしまった。ツイッターやめたらフォロワーという概念ではなく個人に向けて、そういう面倒くささを発揮するようになってしまった。

対等な関係でいたいのにそうできなくさせているのはいつだって自分で、情けなくて悲しい。どうでもいいことでこっちの意見が通らなかっただけで突然落ち込んで困らせて、「なんで俺はこんな風にしかできないんだろう」とつらくなって話を終わらせる。泣こうと思っていないのに勝手に涙が出てくるのでそのままぼうっとしていると、また数日前にかけた迷惑を思い出して絶望的な気分になる。
これも、意識してないだけで試し行動の一つなんだろうか。愛着障害とかなんか他の名前があるんだろうか。知らないしどうでもいいけど、頓服を急いで飲んでも良くならないので、病んで後悔して反省して、相手がうざがるぐらい謝罪して、眠剤に手をつけるしかない。

いまも関係が続いている人は二人しかいないが、どちらにも「もう俺を切ってくれ、関係を終わらせてくれ」と懇願したことが一度、二度はあると思う。これは試しているのではなく本心で、自分がいる事で他人の人生が悪くなってしまうと本気で思っている。
孤独は寂しいが、自分が誰かの荷物になるぐらいなら一人の方がましだ。

この記事は当初「ODを辞めたい、減薬したい、自傷したく無い」という題名だったが、書いている間に人間関係のなかで反省しなければならないことも体調の事も色々考えてやめた。
薬が俺を苦しめるが、薬が無ければ生きられないと思う。
死にたいね。

しかし今の俺にとって死は、数年前の一番つらかった時よりも少し遠い所にある感じがするから、一度でいいから健康になってみたい。この人生で気苦労がなく安心してのびのびと暮らせた時期なんて一瞬たりとも無かった気がする。ほんの少しでいいから健康体験をしてみたい。
俺の生活習慣的には絶対朝と夜に分けて薬類を飲んだ方がいいのに、今「朝決まった時間に起きるなんてどう考えても不可能」という理由で全てを夜に飲み込んでいるので、まずは夜寝て朝起きるところから始めたい。太陽の光を浴びて、布団で横になっている時間を少しずつ短くできたらいいなと思う。

世間の同世代は大学を卒業して新卒で働いてそろそろ後輩とかも入ってくる時期かと思うと頭が痛くなってくるが、そんな俺の人生に登場する事なんて無いであろう架空の同級生について考えるのは辞めて、俺は俺が目指す生活に向けてできそうな事を、なんとかマイナスからやっていくしかない。人生に前向きになれなくても、生きていくという苦しさを抱えたままでも、健康的な暮らしが送れると信じたいし、それを自分自身が証明したい。





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