来たる季節

来たる冬に枯れて落ちる葉は
この秋を謳歌しているのか
緑の中に紅を纏い
鳥達に無言の挨拶をしている

この秋を謳歌していた葉は
夏に乱れていたのか
緑の中に小さな実を隠し
鳥たちに無言で与えていた

あの夏に乱れていた葉は
春に恋をしていたのか
新緑の中に想いを忍ばせ
鳥たちを呼んでいた

春に生まれた恋は
潰える運命にあるのか
長い冬を越えて
鳥たちを呼びながら
また枯れる日に怯えているのか

されば僕らは
身勝手な鳥たちに
軽く会釈をして
自ら地に落ちよう

空の狭い時代になった
いくら空に手を伸ばしても
つかめなかった大切なものはきっと
誰も知らない大地にある

鳥になるくらいなら
草原に寝そべって
世界を見渡すのだ

「どうしたの?」
「いや、ちょっとした夢をみてただけだよ」

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