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フィンランド暮らしで気づいたこと ー9年ぶりに振り返るー

今から9年ほど前になるのですが、フィンランドのヘルシンキに1年間留学をしていました。自分の人生において、多大な影響を与えられた経験だったなと思います。フィンランドで暮らす中で、優れているな、面白いなと思うことが多くあったのですがこれまで記録できてなかったので、改めてまとめてみたいと思います。


9の気づき

【ポイント①】 人の暮らしと自然の近さ

都市のヘルシンキでも、人々の暮らしと自然との距離感が近く、常に自然と隣り合わせの環境でした。ヘルシンキのど真ん中には、広大なヘルシンキ中央公園(代々木公園の約20倍の広さ)やトーロ湖などがあり、フィンランド一大きな街の中でも、常に自然を近くに感じることができました。

人の暮らしと自然の近さ

よくフィンランドの友達は、大学の課題に疲れたら、「ちょっと森に行ってくる」って行って、大学の裏にある自然の中に散歩に行ったりしてました。
何かを深く考えたいとき、悩んでいる時、リフレッシュしたい時、などなど、森はいつも近くにあり、人々を包み込んでくれる存在だと感じました。


【ポイント②】 漠然とした安心感

日本にいた時は、周りの友達(20代前半)を見渡しても将来に対して "漠然とした不安感" を抱えている人が多くいるように感じました。(自分の周りがたまたまかもしれないですが)
一方でフィンランドにくると逆で、将来に対して "漠然とした安心感" を持っている人が多いように感じました。

漠然とした安心感

そこには様々な要因が重なっていると思います。特に学生は、学費が無料なのもあり大学をすぐに卒業して就職しなくてはならないプレッシャーがなさそうでした。20代はゆったり自分の好きなことや一生を通じてやりたいことを見つけながら、20代後半で初めて就職する人も周りには多くいました。短期的な経済を考えると、日本のように早く一括で就職してもらった方がいいかもしれません。一方、長期的に見るとフィンランドの方がジョブマッチング率がおそらく高く、それにより生産性が高くなっている可能性もあるじゃないかなと推測しました。(参考:フィンランドの1人あたりGDPは日本の約1.3倍


【ポイント③】 大人たちのワークライフバランス

これは家庭にもよるのかもしれないですが、自分のホストファミリーは子供たちを幼稚園に自転車で送る時間に会社に行き、子供たちを迎えにいく時間には仕事を終えて家に帰ってきていました。家に帰ったら子供達とたくさん遊んで、子供たちが寝静まった後に残りの仕事を少ししていました。

大人たちのワークライフバランス

そのため、子供たちが寂しいと感じる時間はあまりなさそうでした。家族生活が人生の中心にあり、その合間に仕事を添えているという感覚に近い印象を受けました。


【ポイント④】 政治との距離の近さ

大学の友達との雑談の中でも政治の話はよく出てくるし、日本と比べて圧倒的に政治との距離が近いと感じました。そのためか、選挙ポスターを見ていても若い人も多く立候補している印象でした。

政治との距離の近さ

これはたまたまですが、身近な友達が立候補していたり、ご近所に政治家が住んでいて交流することがある友達もいました。日本に比べてフィンランドはコンパクトな国なので、身近な人が政治の世界にいることも、可能性としては低くないんだなと思いました。それも政治を近く感じる一つの理由だと気づきました。


【ポイント⑤】 先生との関係性

これは逆に日本などアジア圏が特殊なのかもしれないですが、フィンランドは先生との関係性がフラットでした。
日本では、先生や大学の教授は敬う対象の『縦の関係性』で、授業などでも"教えてもらう" という感覚が強い気がします。一方、フィンランドの大学では、お互いに学びあう『横の関係性』もしくは『少し斜め上の関係性』でした。

先生との関係性

背景としては、"敬語がない"というのは影響としてとても大きいと思います。敬語は、毎秒言葉を発するたびに相手を敬う態度を見せる形態なので、それがないだけで先生との関係は近くなっていたなと感じます。縦の関係よりも横の関係の方が、生徒が先生に対して受け身にならずより主体的に発言できるので、授業などの中での学びは多いように感じました。


【ポイント⑥】 義務教育の授業のあり方

フィンランド人の友達から話を聞いて驚いたのが、義務教育の授業形態でした。日本では各教科の授業があり、それぞれの分野の先生から学んでいくという形でした。一方、フィンランドの授業は、その友達曰く、1年間で一つのテーマがあり(例:『チョコレート』というテーマ)、そのテーマを元に各科目を月ごとに学んでいくという話でした。

義務教育の授業のあり方


例えば、1月はチョコレートの歴史を学び、2月はチョコレートの調理方法を学ぶ。3月はチョコレートと国際社会や物流を学び、4月はチョコレートを化学的な視点から学ぶといった形です。実際の現実社会は各教科で簡単に切り分けられるものではないので、単にそれぞれの科目を詰め込み形式で学ぶのとは対照的に、物事をさまざまな角度から捉える多様な視点と、別の新たなテーマに対しても自走して学んでいける力が育まれるいい教育のあり方だなと思いました。(参考:クロスカリキュラムというらしいです)


【ポイント⑦】 人と人との距離感

自分の所属する大学では、挨拶はハグをするのが普通でした。自分は慣れないので最初は抵抗ありましたが、徐々に慣れていき普通になっていきました。ハグは、より相手との関係を親密にするのでいい文化だなと思いました。

人と人との距離感

ただ、他の記事などを見ると、フィンランドはパーソナルスペースが広く、ハグ文化は家族などの身近な人にのみ行うということが書かれているものもありました。自分の大学はデザインスクールでオープンな考え方の人が多いかつ、他のヨーロッパやアメリカなどインターナショナル生徒が多く所属していたのでハグ文化が強かったのかもしれないです。フィンランド人の友達は、フィンランド人でも特に若い人はそういうオープンな文化を取り入れているという話をしていたのを覚えています。


【ポイント⑧】 恋愛観

恋愛についても、友達と話してて日本と違うなと思いました。(ただこれも、フィンランドというよりヨーロッパ全体の話かなと思います)
日本は"告白"や、"プロポーズ"などによって階段を一つずつ上がっていくイメージですが、こちらではそういう境界は明確にはなく、スロープをやんわり登っていくような形でいつの間にか恋人になっているイメージでした。

恋愛観

日本は良くも悪くもステージが変わるのでメリハリがつく一方、こちらはスロープ形式なので、下りるのもハードルは低く離婚率も高いようでした。(参考:日本の離婚率は約35%に対し、フィンランドは約56%


【ポイント⑨】 死生観

北欧には『死者は森へ還る』という死生観があるみたいです。
実際に、自分のフィンランド人の友達は、若い時はヘルシンキなどの比較的都会で暮らし、年を重ねるごとに北の方に移動して、より森に近いところに移動して最後は森で死にたいと言っていました。

死生観

どのくらい本当にそういう行動をとっている人がいるのかはわからないですが、フィンランド人にとって森は、小さい時から死ぬ時まで寄り添う特別なものなんだなと感じました。


あとがき

以上、フィンランドで暮らしていて興味深かったことについて、ポイントに絞ってまとめてみました。フィンランドに来る前は、『サンタ』『ムーミン』『幸福度高そう』などの漠然としたイメージしかなかったですが、1年暮らすと色んなことが見えてきて面白かったです。日本で本を読むだけではわからない、1次情報を取りに行く大切さも改めて理解できました。
そして実は、現在改めてフィンランドを訪問しています。(2024年7月時点)
今回は、上記ポイント②やポイント④あたりを中心に、他の北欧諸国と比較しながらもう少し深堀りできたらなと思っています。

(現在の北欧での発見はこちらで発信👉 https://www.instagram.com/hyggelife_yohei/


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