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花開くことは不確かだから期待するのだろう

「来年もまた綺麗な花を咲かせておくれよ」誰かに悟られぬように小さな声でそっとつぶやく。あたりには誰もいないのに、どうして小声になったんだろう。日差しを見上げながら思考を巡らせる。

花に語りかけていることへの羞恥心でも、自分に似つかわしくない台詞を言ったからでもなかった。「僕はいつ花開くだろうか」そんな不安がずっと胸の奥底にあった。

未来はあまりにも不確かで半歩先も見えない。来年花を咲かせるかすら不透明だ。おそらく世界で一番自分の開花に期待する僕ですら、その不確かさに嫌気が差すほどだ。

自分の放った一言が心にじわじわと食い込む。食い込んだ言葉は簡単に抜けず、どんどん血が滲んでいく。そして、血が滲むに連れて、不安や焦りが傷から溢れ出てくる。

僕の花が咲くかどうかは誰にもわからない。もちろん僕にもわからない。都合よく、傲慢かもしれないけれど、この不確かさを可能性に読み替えておこう。
梅のように小さくも凛とした強さを持った花を咲かせることを夢見て。

日差しを浴びる梅に花はもうほとんど残っていない。春はすぐそこだ。

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