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アマネムを目指す伊勢志摩旅行記【⑤客室】

これまでの記事
アマネムを目指す伊勢志摩旅行記 【①全体行程編】

アマネムを目指す伊勢志摩旅行記【②伊勢神宮詣編】

アマネムを目指す伊勢志摩旅行記【③アマネムにチェックイン】

アマネムを目指す伊勢志摩旅行記【④アマネムの共用部でのんびり】

共用部でのんびりしていると、いよいよ部屋の準備が整い、部屋に案内されました。


宿泊室の構成

宿泊棟は、大きく分けて「スイート」と「ヴィラ」に別れます。

この2つは簡単にいえば、規模の違いで分けられています。

スイートは99㎡で1ベッドルームの2人用(最大3人)、ヴィラは366〜381㎡で2ベッドルーム、最大6人収容可能となっています。

スイートは12棟、ヴィラは8棟あります。それぞれ、間取りは全て同じですが、部屋から見える風景によってグレード分けされ、宿泊費も若干異なります。

レギュラーとかスタンダードといった言葉は使わず、「スイート」と名付けるあたりも、高級リゾート感を高めるための演出を感じます。

スイート

スイートは、各棟が2部屋1セット(2個イチ)になっており、12棟✕2部屋で合計24部屋あります。先述のように間取りは全て同じ。1ベッドルームで、半露天風呂を備えています。宿泊料が高い順に下記のように分けられています。

・ナギスイート
英虞湾を近くに望む客室

ナギスイートからの眺め
アマネムホームページより

・ソラスイート
英虞湾を遠方に望む客室

ソラスイートからの眺め
アマネムホームページより
(トリミングしました)

・モリスイート
英虞湾は見えず、ガーデンビューの客室

モリスイート
アマネムホームページより
(トリミングしました)

それぞれ魅力的で、価格分けする必要ないと思うのだけど、やはり英虞湾が見えるということが付加価値になるのでしょう。

ホームページでは、99㎡と書いてあるのだけど、実測した結果、部屋内部はどう計算しても65㎡程度です。広いテラスを算入しても、そこまでの広さにはならないんだけどな・・・。実際の数値はさておき、十分な広さを感じる客室です。

ヴィラ

ヴィラも同様に、ナギ/ソラ/モリと、部屋から見える風景によりグレード分けされています。

ツキヴィラのアプローチ

ヴィラは、2020年4月に、新たに「ツキ」が増設されました。露天風呂と内風呂を備えた45㎡ほどの温泉の離れを備えていて、部屋の面積も381㎡と、他のグレードの366㎡より20㎡ほど広くなっています。そしてこのツキヴィラ4棟は分譲販売されていて、その価格なんと7億円・・・。すでに4棟とも完売とのことでした。

姫がお願いしてくれて、ツキヴィラを見学させてもらいました。(いつか買うかもしれないし・・・。)

ツキヴィラのリビング
ヴィラにはキッチンが備わる
ツキヴィラのOnsen Hanare
露天風呂と休憩スペース
ツキヴィラのOnsen Hanare
内風呂

オーナーが滞在しない時には、宿泊棟として貸し出し、収益物件として運用できるように設計されています。施錠できるオーナーストレージがあったり、水回りと寝室がセットとなった2つのゾーンを施錠できて、専用の玄関も備えています。

つまり、リビングを中央に、スイート棟を2棟コネクトしているような構成なのです。例えばオーナーが滞在しながら、使わない1つの寝室ゾーンを貸し出すことも可能です。

これはナギ/ソラ/モリスイートの平面図
1棟がほぼ3等分されていて中央にリビング、左右にスイート棟と同様の寝室スペースが配置されている

もしツキヴィラを投資目的で購入した場合・・・

1泊45万で稼働率50%とすれば、365日✕0.5✕¥450,000.-=¥82,125,000.-

運営費や維持費を払ったとしても、利回り10%近い・・・。(利回り10%とは、10年で投資金額を取り戻してそれ以降は利益になるという、投資家にとって一つの理想的な基準となる数字)

でも、稼働率50%はなかなかハードル高いし、7億もあればもっと確実な投資方法があるので、これを購入する人は相当余裕があるか、アマネムによほど惚れ込んだ人でしょう。

投資目的ではないとしても、自分たちが滞在しない時に上手に運用すれば、別荘としてはかなりお得な物件かもしれません。

何より、アマンの宿泊施設のオーナーだなんて、最高のステイタスです。


ソラスイートでの体験記

今回我々が泊まったのはソラスイート。姫の裏技で、モリスイート予約からのアップグレードでソラになりました。

外観とアプローチ

外観は、他の棟と同様、切妻の銀黒の瓦屋根と黒く塗られた木の壁で、パッと見はなんの変哲もない伝統的な日本の家屋。

なんとなく、懐かしさを感じる風景。
ケリー・ヒルによる日本の風景の解釈が強く現れている。
切妻屋根
普通に見えるけど、こんなに薄くシンプルに収めるのはかなり難しく高度な設計能力が必要なのと、木造で実現するのは無理。実は鉄骨造です。木に拘らないのは、やはり外国人設計者だからか・・・。

エントランスはとても「質素」で、リゾートホテルらしい派手さやギミックはありません。でもこの質素さを実現するためには、相当なデザイン能力と強い意思が必要です。

並び合う2つのエントランス。
質素なエントランス。

しかし、このエントランスを開けて中に入ると、これからの滞在を想像して気分が高揚し、思わず声が漏れるような空間が出迎えてくれます。

外部の質素さは、この空間をよりドラマチックに感じさせるための演出だったのだと思えるほどです。

寝室

パビリオンやレセプション、バーラウンジなど各棟でみられたインテリアの構成が、客室でも徹底されて統一されています。

切妻の屋根は内部にも反映されています。中央付近の棟(むね)は天井が高く、開口部は低く抑えてあります。低いところは2.4m、高い部分は4.8mと、ちょうど倍になっているのは偶然でしょうか。

高低のメリハリ
切妻屋根

また、パビリオンやレセプション棟と同様に、客室でも同様に両端に開口部があり、開放感が徹底されています。これはやはり戸建てだからこそ生み出せる心地よさ。中間期に両方の窓を開け放てば、風が通り抜けてとても快適でしょう。

オーストラリアのオペラハウスを設計したヨーン・ウッツォンによる日本建築の概念を示すスケッチ。ケリーヒルはかなりこのスケッチを意識しているのではないだろうか。


アプローチ側はプライバシーに配慮して、伝統的な目隠し壁により中庭化されています。

外部から覗こうと思えばちらりと見えるくらいの目隠し度。窓を開けている時はご注意を。
なんとなく野放図な庭・・・
デザインされていない感じのデザイン?

開口部が大きいことの問題点は、やはり断熱。開放感と引き換えに、どうしても断熱性能が低下します。

アマネムでは、部屋内側に障子のような内戸が備えられていて、それを閉めればしっかりと断熱された環境を作り出すことができます。障子という、日本建築を代表する要素を、表層的なデザインのためだけでなく、温熱環境の制御のためにも効果的に用いています。

でも、これを閉めずとも、床暖房が効いていて、暑いくらいでした。

3枚引戸の内戸
デスクには、デスクの規模に相応しい開口部が。これはフィックス窓で、開閉はできない。


テラス

テラスは黒で統一され、美しい風景を際立たせます。十分な深さの軒があるので、雨の日でも炎天下の日でも、外部空間を楽しむことができます。

サッシのところで明確に色調が切り替わる

ソラスイートの21号室テラスから見える風景はこんな感じ。近景に緑、遠景に英虞湾が見えて、個人的には大好きな風景です。天気と時間帯によっては英虞湾がキラキラと光り、とても綺麗でした。

設備設計

建築家ならではの細かな視点ですが・・・。設備計画もとても緻密です。エアコンに関しては、天井カセットというものを設置するのが一般的です。そこそこの高級ホテルでも、普通に天井カセットが使われています。

でもこの客室は、どこにエアコンがあると思いますか?一般の方はパッと見、エアコンを見つけることができないと思います。

エアコンはどこ?
普通は、天井にドーンと「天井カセット」がつくか、壁にルームエアコンが設置されます。

実はここ。

サッシの高さである2.4mより上部の壁はふかされていて、この厚みを利用してスリット状の吹出口が設置されています。
エアコン本体は天井裏のどこかに設置されて、隠蔽された配管により、この吹き出し口から温風冷風共に吹き出されるのです。

設備については、照明計画も秀逸です。

間接照明を中心として、明るすぎず暗すぎない光環境をつくりだし、ペンダント(吊り照明)やスタンドを用いて効果的に「光溜まり」を生み出しています。

間接光、スポットライト、ペンダントライト、スタンドライトが適材適所効果的に組み合わされている。

夜は内戸を閉めて照明を楽しんでみてください。内戸を閉めずにサッシだけだと、外が真っ暗なので、ガラス部分が真っ黒になり、ちょっと印象が変わってしまいます。

行灯のようなスタンド
紐は落下を入念に防止するのと、日本らしさを表現するギミックか

照明のスイッチも特別です。

ルートロンというメーカーのもので、日本の建物でお目にかかることは滅多にありません。特に調光機能が秀逸で、コンサートホールなど微妙な調光が必要となる場合に採用されます。国内メーカーのスイッチでは、照度を落とすと、なぜか光がチラつくのですが、ルートロンではそういった現象が起こりません。

国産品に比べてかなり高価なので、そこそこの高級ホテルでもお目にかかったことがありません。さすがアマン。さすがケリー・ヒル。スイッチひとつとっても、こだわりが見られます。

バス

ウェルネス・リゾートと銘打つアマネムにおいて、掛け流し温泉の内風呂は滞在中の楽しみの一つです。全ての客室に備えられています。

掛け流し温泉の証として、ダイヤルが3つ。温水、冷水に加えて源泉のダイヤルがあります。

源泉は60度もあるので、入浴できる温度にするには、時間をかけて冷やすか、水でうめるしかありません。でも水を入れるとせっかくの源泉の効能も薄まってしまうので、少しずつ源泉を出して、時間をかけて自然に冷やすことにしました。

チョロチョロでる温泉がつくる水面のゆらぎも美しい

浴槽はテラスに面して設けてあり、2枚引きのサッシは外部に引き込んで全開口することが可能です。内部にありながら、露天風呂感覚を楽しむことができます。

サッシを全開にすると、浴槽とアウターソファが隣り合い、直接出入りして外気浴を楽しむことができます。

外部の照明はほぼ無いに等しく、
夜のしじまを楽しむことができます。

洗面まわり

高級ホテルは、洗面周りにかなりの面積と予算を割いています。洗面を、ただ身支度を整える機能としてではなく、優雅な時間の演出の場所として捉えているからです。鏡もあるし、あんなことやこんなこともできるし・・・。

手前側の洗面は浴槽側よりも広く、パウダースペースが設けられている。

高級ホテルでは大抵、2セットの洗面ボウルが設置されていて、2人が同時に身支度をすることが可能です。ホテルの場合、チェックアウトタイムまでに効率的に身支度をするために1セットでは渋滞がおこり満足度が下がります。

アマネムの洗面は、2人分が向かい合うように配置されています。

実は正直いうと、この洗面の配置だけちょっと合点がいかず。確かに面積効率はよくなるのだけど、もう少し他のプラン無かったのかな・・・。

鏡は、壁から片持ちで張り出して、宙に浮いているように設置されています。結果、壁に張り付いているよりも小さくなってしまいます。

でも、アメニティや備品のデザインや配置は完璧。使うのがはばかられるほど美しくセッティングされています。タオル、ゴミ箱、コンセント、スイッチ、フックの位置も完璧。

引き出しの中には綺麗にアメニティが並ぶ
ドライヤーはPanasonic・・・
不思議な、そして最高の肌触りのガウン。
ちなみにベッドのリネンも、これまで体験したことが無いほどツルツルで、最高の感触。


収納

美しい空間を作り出すためには、滞在中に必要な備品を、使いやすくあるべきところに収める必要があります。

アマネムはその点でも完璧。でもちょっと規模が小さい印象。

ベッドと正対するテレビの下に、冷蔵庫とカトラリーが収められています。

ターンダウン後の茶器。
美味しくて止まらない「あおさ煎餅」

扉を開けると引き出しが。引き出しの中にはワイングラスや茶器が美しくレイアウトされています。

グラス類
茶器
冷蔵庫はちょっと小さい・・・
ミニバーの充実度もイマイチ

テレビユニットの側面にも縦長の収納があり、ここにはポットやコーヒーメーカーが収められています。

同じランクの高級ホテルに比べて、カトラリーなんかの備品はささやかな印象。あまり派手さやワクワク感はありません。

でもテレビも含めてこうした備品は扉で全て隠すことができます。(側面の収納だけ、閉じた状態を撮り忘れてしまいました)

テレビを見たりカトラリを扱う時は開き、、、
建具を閉めて視界から消すこともできる
リモコンもきちんと収納されている。
電源やAV機器もデスクに彫り込まれて蓋ができるようになっている
TVへのHDMIやUSBの接続もここから
間接照明のための彫込み部分にコンセント

建築、設備計画、備品デザインと収納・・・全てが高い次元で統一的にデザインされていて、美しい空間を紡ぎあげています。

(つづく)

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