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交通機関の移動中の会話は、喫煙所の会話と同じ

いま住んでいるシェアハウスの友人が新しいシェアハウスに引っ越したので、数名で遊びに行く。東京の湾岸にある埋立地。電車からバスに乗り換えて向かう。

バスを降りると、海の先に煌びやかなタワマンが並び立っている光景が飛び込んでくる。これはたしかに栄華の象徴だ。「東京」を感じる。少し歩くとららぽーとがある。車道の幅が広い。タワマンが並び立つ光景とは売って変わり、このあたりの景色は日本のそこら中に存在する郊外のように見える。

鳥の目と虫の目なんて言うが、栄華とは鳥の目で見た景色にしか存在しないのかもしれない。近づくと消えてしまう、蜃気楼のような煌めき。永遠に捕まえられない青い鳥。この部屋から東京タワーは永遠に見えない。

同じ虚構の街なら、僕はどうしても高円寺のようなサブカルという名の虚構を選ぶ人間ではあるが、まあそれも一長一短か。

シェアハウスに到着。マンションの一画がシェアハウスになっていて、共有のラウンジ部分はまるでモデルハウスのように綺麗だ。リビングのような空間は、間接照明で薄暗く、余計なものがほとんど置かれていない。ホテルのラウンジのようなテーブルが並んでいる。

壁に固定されたテレビをつけると、バラエティ番組が流れはじめる。空虚な笑い声が清潔な部屋に響く。アンバランス。

モデルハウスのようなキッチンでキムチ鍋と豚骨スープの鍋をつくり、モデルハウスのようなリビングでみんなで食べて飲んだ。マンションのカタログの中に入ったかのような気分になる。

とはいえ馴染みのメンツなので、すぐに前の家で飲んでいるときと変わらない気持ちになる。場所よりも人で空気感は決まってくるのだなと実感。

住んでいる人たちはとても感じの良い大人たちで、住心地が良さそうだと思った。

終電が近づき、帰路につく。GOでタクシーを呼ぶ。帰りのタクシーと電車で少人数で会話をする。シェアハウスの外で会うと、普段話さないような話になり、違った面白さがある。

交通機関の移動中の会話というのは、基本的には好きではないが、相手によっては思いがけない話ができることもある。僕はタバコは吸わないが、交通機関での会話は、喫煙所での会話と近いものがあるように思える。思いがけない話というのは大事だ。この日も、シェアハウスの友人の、なかなか話さないような、普段考えていたことを知ることができ、良い時間を過ごせた。


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