28日目:「ドイツ語」とは中二病アクセラレーター(100日目に40歳になる猪瀬)
40歳になったら英語を学び始めると30歳になったときから決めていた。なので来年からは少しずつ英語での発信もしていくつもりで、まずは手始めにInstagramの投稿から変えていこうと密かにたくらんでいる。
英語にはない日本語の魅力を一つあげるとしたら、それは漢字とひらがなとカタカナという3つの表現方法の組合せによる見た目のカッコよさだ。
例えば、創り込まれた世界観が大好きな小説に「境界線上のホライゾン」という作品がある。このタイトルは漢字、ひらがな、カタカナの順で並ぶ。
画数によって密度の高い漢字とスッキリとした印象で意味を伝えるカタカナ、そしてそれらを繋ぐひらがな。とても綺麗だ。字面に緩急の付いたリズムを感じる。
また、他言語の音を拾ってカタカナにすることでその言葉の概念を取り込こもうとする日本語の吸収性も面白い。カタカナであれば外からやってきた言葉だと無意識に区別できるのは便利だ。
これが英語になると「Horizon on the Middle of Nowhere」と当然ながらすべてがアルファベット表記。字面は私の英語の感性がまだ養われていないせいかのっぺりとした印象がある。
ただその代わり、英語になることでホライゾンと境界線の関係はon、the、ofによって日本語以上に可視化されて意味はより理解しやすくなった。この英語の曖昧さを許さない姿、嫌いじゃない。まるでロジカルなビジネスマンだ。
そんな英語を来年から学ぼうと決めているわけだが、実は過去にもう一つ気になっていた言語があった。それがドイツ語だ。
① 「ドイツ語」 とは
辞典で「ドイツ語」を引くと収録されていなかった。それではと「ドイツ」で調べてみる。
どいつ【何奴】
■意味
「どの者・だれ」や「どれ」の意の、ぞんざいな言い方。〔憎悪・軽蔑などの気持ちを込めた場合にも、親しみの気持ちを込めた場合にも使われる〕
出典 :『新明解国語辞典(第8版)』(2020)三省堂
違う、そうではない。ということで「語」で引いてみる。
ご【語】
■意味
①言葉(づかい)。〔狭義では、単語を指す〕
②〔コンピューターで〕計算・記憶・転送などに際して、一まとまりとして扱われるデータの大きさ。ワード。
出典 :『新明解国語辞典(第8版)』(2020)三省堂
そう「ドイツ語」とは言葉だ!(そのまま)。意味を綴るとはほんとに難しい……ドイツ語はドイツで使われる言葉と言いたくなるが、オーストリアなど他の地域でも使われているわけで。そういった知識はあいにく持ち合わせておらず、辞書編纂の難しさを垣間見た。
② 私の釈義
ドイツ語とは中二病アクセラレーター
30歳のとき、英語とドイツ語どちらを学ぶか悩んだ理由はドイツ語の音が私の心に突き刺さったからだ。忘れかけていた大切なもの、失われた中二病の心を取り戻せと言わんばかりの言語だった。
有名どころをあげてみよう。
・シュバルツシュバイン
・ヴィンケルメッサー
・クーゲルシュライバー
意味はそれぞれ、黒豚、分度器、ボールペンだ。なにげない日常がドイツ語になったとたん中二病的世界で埋め尽くされる。
私の大好きなワインのブドウ品種ピノ・ノワールさえもドイツ語になるとシュペートブルグンダーになってしまう。この突然やってくる「バ」や「グ」といった濁音と「シュ」のような摩擦音が私の耳を喜ばせる。
以前、有機化合物を中二病の入り口として取り上げた。あちらは物質名になるのでどうしても単発的な中二病へのいざないになってしまう。しかし、ドイツ語は言語なので表現するものを中二病ぽいワードに変換できる可能性を秘めている。だから都道府県名すらこうなる。
この訳が適切であるかどうかわからないものの故郷の栃木県はロスカスタニエになり、新潟のノイエラグーネにいたってはもうあの作品の世界観だ。
ドイツ語を学んだら毎日が楽しくなるのではないか。そんな伊達と酔狂な気持ちが、使う人の多い言語を学んだほうが実益に繋がりやすいという実用性重視の観点と対立した。
最終的に目的と手段を整理して、仕事やプライベートで活動することになるであろう英語圏をまずは優先することに決め、ドイツ語は単語を調べて遊ぶ程度に留めて言語の習得まで攻めない。そのような納得のさせ方をした。
あれから10年が経ち、いまでも英語を学ぶ決意には揺らぎはないが銀河英雄伝説を観終えた後は私の血が騒ぐ。ラインハルトがファイエルで撃ち落としたのは敵艦ではなく私の心だ。
■ 辞典は読み物!!
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