鳩の餌

 不忍池の周りを歩こうとすると鳩が多すぎて趣を感じる暇がない。自分が鳩が苦手すぎるのか常人であっても許容できぬ数かはわからないがまぁとにかく多い。

 しかめ面で鳩を避けながら公園の中を歩いていると同じようにしかめ面の男が前から歩いてくる。40代、173センチ、少し太ったその男がすれ違いざまに自分の脇へ何かを放り投げた。途端に大量の鳩が集まってきた。

 男が投げたのは鳩の餌である。

 鳩に餌をやる心理というのはなんとなく推察ができる。偏見であるかもしれないが、しかし鳩に餌をやっている人にはやはり共通点があるように見えてしまう。

 もうほとんどライフワーク化してしまっているあの迷惑行為の初日はどんな感じなのだろう。急に思い立つのか。それともその日公園のベンチで座りながら食べていた自分のパンを放り投げてみたところ反応が良く、気づいたらなんか餌を準備し始めていたのだろうか。

 或いは彼らは人の形をした鳩であって何世代もかけて繁栄を目指しており、遠い未来には人に餌やるやつ腹立つわーと鳩がぼやいてるということもあるかもしれない。と思いながら歩いていると歩道の鳩が全然自分を避けてくれないので端の方を大回りで気を遣いながら通行した。

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