「ハネムーン」を読んで
吉本ばなな著「ハネムーン」を読み終えたので、感想を書きたいと思う。私はこの本を1月28日から読み始めて、中には10ページしか読めなかった日もあったけれど、大体1日30ページずつ読んだ。読み終えるのに8日かかった。活字が苦手な私にとっては、結構頑張ったことだ。リーディングトラッカーというものを使うと読みやすくなると聞いたので自作してみて、初めて使って読んだ。読了できたのは、そのおかげもあったと思う。
※感想はネタバレを含みます。
この小説はタイトルの通り「ハネムーン」にまつわる話だった。ただ、普通の新婚同士の関係の二人ではない。登場人物のまなかちゃんと裕志の家は物心ついた時から隣合っていて、まなかちゃんの家で飼っていた犬のオリーブを介して何となく二人は一緒に居るようになる。裕志の両親は二人とも裕志が幼い頃に裕志を捨てて信仰を追い求め、外国に移り住んでいて、家にはおじいさんしかいなかった。そんな事情に子どもながらなんとなく気づいてしまったまなかちゃんは、ある日「裕志、心の中だけでも、うちの子になるって決めたら。私、いつも窓の鍵を開けておくから、どんな時でも私の部屋に入ってきていいから。」と裕志に言う。そんな感じで、それから裕志はまなかちゃんの家族と家族同然となる。やがて、二人はオリーブの死、更におじいさんの死を経験する。この小説はその経験やそれを乗り越えてゆく二人が描かれている。二人にとってのハネムーンは、単なる新婚旅行ではなく決して喜ばしい始まりではなく、逃げることから始まった。オリーブやおじいさんの死を紛らわすためのようなもの、二人の心を癒すためのものだった。
好きだった文章を紹介する。
”子供は、気を使って無理に話し続けるということを知らないから、時として大人よりもロマンチックに沈黙を味わう。なにも言わないことによって、完璧にわかち合う。” ー吉本ばなな「ハネムーン」
”なにかが治っていく過程というのは、見ていて楽しい。季節が変わるのに似ている。季節は、決してよりよく変わったりしない。ただ成り行きみたいに、葉が落ちたり茂ったり、空が青くなったり高くなったりするだけだ。そういうのに似ている、この世の終わりかと思うくらいに気分が悪くて、その状態が少しずつ変わっていく時、別にいいことが起っているわけではないのに、なにかの偉大な力を感じる。突然食べ物がおいしく感じられたり、ふと気づいたら寝苦しいのがなくなっていたりするのはよく考えてみると不思議なことだ。苦しみはやってきたのと同じ道のりで淡々と去っていく。” ー吉本ばなな「ハネムーン」
”「私はね、今もまなかがいることで心が豊かな部分はあるのよ。離れていても、大きい娘がいるんだってね。それに、まなかっていう名前は、自分の人生の中心にいてほしいって意味をこめて、私がつけたんだもの。それからね、私はお父さんと嫌いで別れたわけじゃないのよ。」” ー吉本ばなな「ハネムーン」
本当は読み終えて、忘れないうちにすぐ感想を書こうと思っていたのだけれど、なかなか手をつけられず日が空いてしまった。そのせいか、感想があまり思い浮かばない。ただ、この前に読んだ同じ著者である吉本ばななさんの「TUGUMI」の方が私にとっては面白く感じた。今回はちょっと内容が暗かったからかな。理由は分からないけれど、でも読んでよかった。それは確かだ。人やペットの死について考えさせられたというか、感じることがあったし、人と人が別れる時にはバッドエンドとは限らないということを知ることができたから。私もまなかちゃんや裕志のように丁寧に、そして素直に生きていきたいと思った。あと、まなかちゃんが庭を愛しているように、裕志がオリーブを心から可愛がっていたように、私も自然や生き物ともっと密につながって生活したいと思った。自然についてはこれまで読んだ吉本ばななさんの小説全ての感想として言えることだな。何だろう。本当に感想をどうしても上手くことばにできない。これじゃ、あらすじをただ書いただけの文章になってしまう・・。読み終えてからあるもやっとしたものは確かにあってそれを書きたいのだけれど。悔しい。まあ、いっか。ことばが見つかったらその時また書きます。裕志とまなかちゃんと新しく飼う犬とがいつまでも一緒に穏やかにそして、楽しく暮らせますように。
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