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とぶためにうたうウタ の章

「フン・フン・フ〜ン、鹿のフン〜、を、踏んだ〜♪  フンだけに」

ペコルくん(中年のおっさん)は、
今日も、ごきんげん、フフフン・フン

いつものように鼻唄をウタいながら、おさんぽをしておりました。


そんなふう
テクテク歩いておったところ
道端にしゃがみこんで
シクシク泣いている女の子がおりました。


それを見かけたペコルくん。


そーっと、
何気に、
全力で、、、



見ないフリして
過ぎ去ろうとしました。


以前、
子どもたちと話をしてたら
大人のヒトに
すごい表情で睨まれて、


まあ、それが、とっても怖くって
おしっこをチビりそうだったことを思い出したからです。



というより
「実は、あの時、怖くって、実際、少しチビった」と
ペコルくん(中年のおっさん)は
後日、語っておりましたが。。。


と、
全力で見ないフリして
その場を立ち去ろうとしていたところ、


大きな叫び声が鳴り響きました



「ちょ、ちょ!行っちゃうの?!
ほら!ワタシ、おもいっきり泣いてるでしょ!
ほったらかして行っちゃうの?!!!」



シクシク泣いてた女の子が
と大声で叫んで、


うらめしそうに
「ジーッ」と
こちらを見ております。


「ありゃま〜」


ペコルくん(中年のおっさん)
「まいったな〜」と
アタマをポリポリ。


『やれやれ仕方ない』という様子で
女の子に近づいていって、訊ねました。

「どうしたの? 鹿のフンを踏んで、クツ汚れちゃった?

ほら、見てよ、ボクの靴。

実は、まあ、ボクも、さっき鹿のフン踏んだばかりでね、ボクが踏んだフンは、結構フレッシュだったから、割とクツ汚れちゃったけど〜、ほらね。 

まあ、でも、洗っちゃえば平気だから。

だいたい人生、そんなことも3日に2日くらいは、よくあることだから。

と言いつつ、ほんとはね、ボクの場合、昨日も一昨日も、その前も、おんなじ場所で、ふんじゃってたんだけどね、テヘヘ。


でも、まあ、ボクも、そんな感じだから、大丈夫! 鹿のフン踏んだくらい大丈夫、大丈夫! じゃあね!」


と、立ち去ろうとすると


女の子、


「全然、そんなんじゃねーし!」


と叫び


「ぜんぜん鹿のフンとかふんでないし!そんなこと一言もいってねーし!


っていうか、クツ、ピカピカじゃん、クツ! みたら、ピカピカなのわかるっしょ、クツ!」


とブチキレて、
地団駄ふんで
プリプリ、プリついてます。


「(内心)あちゃ〜、また地雷、踏んじゃったな〜、色々よく踏んじゃうんだよな〜、ボク」


「ギョ、ギョめ〜ん」
と、ペコルくん、アタマをポリポリ。


そう、
悪気はないつもりなのですが
ペコルくんは、
会話が苦手で、忘れっぽいしで


よくズレたことを言ったり
地雷を踏んでしまい
相手をイライラさせたり、怒らせちゃったりを
してしまうのでした。



「やー、まいったな〜」


そんなふうに
怒られながら
アタマをポリポリしていると



なんとなく
いつものように


ペコルくんの中で
イノーリンと
一緒におさんぽしていた風景が
だんだん思い出されてきました。



それは、
そう、

その昔、
ペコルくん(中年のおっさん)が
まだまだ小さくて、かわいかった頃のこと、


この女の子みたいに
泣いちゃったり
プンスカしたり、
プリプリ、プリついたりしたペコルくんに


イノーリンが
よく一緒に、さんぽしてくれて
たくさん話を聞いてくれた、そんな風景。


そんな時には
イノーリンは
いつも微笑みながら、
たくさん話を聞いてくれたものでした。


そんな思い出は
フワフワの綿あめのような、クッションのような、

おおきなお空の、おおきな雲ような、、

そんな、とってもとっても
おおきなものに包まれているような、
おおきな、おおきな思い出でした。


フワフワと
そんな風景に包まれながら
そんなことを思い出して、



ペコルくん(中年のおっさん)は、
あの時のイノーリンのように
女の子に、尋ねてみました。


「、、、どうしたの?なんかあった?」



「まず、それやし!」
女の子は、泣きながら、
あいかわらずプリつきながら、
でも、ヒトツ合格と言わんばかりに返事を返してくれました。



なんだか、ちょっと満足してくれてる様子、ではありそう


ペコルくんは、うれしくなりました。


(ん、これは、良し、OKだったみたいだな)


そうすると
プリプリしてた女の子は、


次に
急にシュンとなって、
「実は、、」と
しんみりとなって、黙ってしまいました。


「あらら」



何か喋るのかなと思ったのですが
シュンとなってまま、、


ペコルくん(中年のおっさん)は、
待ってみることにしました。



特に、何を言おうか思い浮かぶこともなかったし、
かく言う、ペコルくんも、
人一倍、すぐコトバが出てこず
コトバがまとまるのに
全然まったく、時間がかかるタイプだったからです。


「ふむふむふむ〜、まあ、なんか〜、考えてるのかな〜。そうかもな〜、コトバにするのって、ムツカしいもんな〜。すぐ、わいてこないもんな〜、勇気もいる時もあるだろうしな〜」位にしか思わなかったからです。


そんなふうにしていると
すこしたって
やっと、
女の子が
口を開きました。


「実は、、、今日、学校でね、、『ワタシは、おっきくなったら、いろんなところに行ってみたい、いろんなところを旅してみたい!』って言ったの。そしたら、先生やみんなに『おまえみたいな、弱虫に、そんなことができるワケがないだろ!』って笑われちゃったんだ、、」



ペコルくん(中年のおっさん)は
ちょっとびっくりして
「フフフ」と微笑んでしまいました。


そしたら
女の子が
「なんで笑うの!」と
またプリついたので



すぐに「ギョめん、ギョめん」と謝って、
そして、こんなふうに続けました


「そっか、そっか、そうだったんだね〜。

実はね、その昔ね、ボクもさ、
君くらいの年の頃にさ

同じようなことを言われたことがあってね、
その時のことを、思い出しちゃってね」


「そなの? おじさんも、そんなことあったの?」


「そ〜さ〜、あったさ〜。おじさんにもあったよ〜、だいだい、おじさんは、いつも、そんなんばっかりだったよ〜」


「そなの?」


「だよー、だよー。でね〜、でね〜、でもね〜、その時ね、ボクの大好きなオトモダチさんがいてね、そんな時はね、よく一緒にさんぽしてくれててね、その時ね、ボクにね、こんな風に言ってくれたんだー。


んとねー、まずはね、こんなふうに言ってくれたんだー、


それはね、
『ん〜、そうなんだねー、ペコルくん、、、それは〜、キミは、とってもステキなことを言ったね!』って、、、


まずね、そう、言ってくれたんだよー!」


「え? そうなの? これはステキなことなの? ワタシは言っても大丈夫なことだったの?言っちゃダメなことじゃなかったの?」


「そうさ、そうさ〜。ぜんぜんダメなことじゃないんだよ!それは、とってもステキなことなんだ!言ってよかったことなんだよ! だってね、ボクも『それはとってもステキなことだ!』ってね、そんなふうにね、教えてもらったんだから!」


「・・・」


「それからね、その人は、こういうことも教えてくれたんだよー。


その一緒におさんぽしてた時がね〜、ちょうど夕陽が輝いているところが、すごくキレイでね〜、


そこを、鳥さんたちが飛んでたのさ、


そしたらね、それらを指さして、オトモダチさんはね、こんなふうに質問してきたんだ


『ペコルくん、鳥さんたちをよく見てごらん。鳥さんたちはさ、どうやって飛んでる?』って。


だからね、ボクはね


『羽をパタパタさせて飛んでいるよ』って言ったらね、


『フフフ、たしかにその通りだね、、


そう、正解さ、まったくそのとおり、ただね、もし良かったら、それに、もう少しね、プラスして、つけ加えてもいいかい?


よく見るとね、


鳥さんたちはね、風の流れを読んで、それを活かすように、羽をつかって飛んでいるように見えないかい? たとえば時に向かい風だったりだと、上手に受け流しながらさ、時に追い風だったりしたら、風を背中に味方にして、そんなふうにして飛んでいるようにも見えないかい?。自然の流れを上手に受けながら、飛んでいる、そう、見えたりもしないかい?』


『ホントだ!なんか、そんな感じだよ!』




『そうなんだ、だからね、ペコルくん、


そう、だから、ボクらの世界では、鳥さんたちは“風の流れとともにあるヒトたち”と呼ばれていてね


『風の声の尋ね方、風のコトバの読み方を、風のウタへ耳を傾けるすべを、風の流れとともにあるヒトたちに尋ねよ』ってね、そんなふうにも言われているんだ。そんなコトバが、あるんだよ。


もし鳥さんがそんなふうにして飛んでいくんだったら、もしかしてヒトの生き方も同じようなところがあるんじゃないか?ってね、


だって同じ自然の世界のもとにいる仲間だからね、



それでね、こうも言われてるんだ


そう、たしかに世界には、いつだって、どこだって、さまざまな風が吹いている。風が吹いて無い、時や場所なんて、なかなか無いかもしれないのさ。そして、それは時に、強い風、逆風、向かい風かも知れない、、


だからね、ボクたちも、その風の流れを、よく見て、それを活かし飛んでいくんだよってね、ボクも、そう教えてもらったのさ。



でね、それを教えてくれた、ボクらのおじいさんは、こうもいってたのさ


『だからな、イノーリン。どんな風だと、飛べるのか?それを、すこしずつ、試していくんだ、少しずつ、少しずつでいいんだ。ただな、イノーリン。時に、向かい風があまりにも強い時は、鳥も飛び立てない、強すぎる風が吹けば、じっと待つ。それも学ぶべき風の読み方のヒトツさ。それが自然さ。そんな時は、いくらでも待っていいし、待つ必要がある時もある、のさ。色んな風の流れを学ぶのさ』


そう、その時にね、おじいさんは、そんなふうにして、こういうことも一緒に、教えようとしてくれたんじゃないかなって思うんだ。



もし人の世界で、他の人から色んなことを言われたりして、自分や自分の心に強い向かい風だったりが吹いた時があるかもしれない。実は、その時は瞑想の読み方を、風の声の聞き方のヒトツを学んでいる最中なのかもしれない、ってこと。


そうして、さまざまな風のコトバが読めるようになることで、風のウタが聞こえるようになりだす。そうして、時が熟すことで、ボクら、大空に舞い上がれるようになる、そんな時がきっとやってくるんだ、だから今、強い向かい風のコトバを学んでいる途中なんだ。』ってね。


だからね、ペコルくん、君も、もしかしたら、そうかもしれない。ボクは、そう、思うんだ。


長ったらしいボクの話は、今はよくわからないかもしれない。でも、いつかわかる時がくるかもしれない。


まあ、だからね、とにかくボクがいいたいのは、ペコルくんは、いつだって大丈夫だよってことなんだ!』ってね」


ペコルくんは、
また一人でベラベラと喋りまくっていたことに気づき
ふと我に返りました。



そう、こんなふうに
ペコルくんは、
いつのまにか一方的に
ベラベラしゃべってしまうことが
よくあるのです。


「あちゃー、またやっちゃったな〜」


あわてて
女の子の様子を見てみると、


よだれを垂らさんばかりに
ホゲ〜とした顔で
ボーッとなっており
時が止まっていたようになってしまってました


「ありゃりゃー」


そうしたところ
女の子は、我を取り戻した様子になり
言いました。



「おじさん、、割と、っていうか、
そうとう、おしゃべりだね!」



笑いながら。


「(あ〜、助かった〜、よかった。まあ、悪くなかったかな?だったら、いいんけど〜。)」


ちょっと気まずくなった
ペコルくん(中年のおっさん)は


イノーリンとの
話を聞いてくれた
女の子にプレゼントしようと


大事にとっておいた
おやつの焼き芋を、
ポケットから取り出しました。


そうして、
焼き芋をプリッと2つに割ると
6対4くらいの大きさになってしまいました。



ペコルくん(中年のおっさん)は不器用なため
だいたい、いつも、キレイに半分に割れないのです。


「くそ〜、またか〜」


ペコルくん(中年のおっさん)は
とても残念な気持ちで


「はい」

と6割の焼き芋を女の子にあげました。


半分に割れなかった時には
大きな方をあげるように、と
ペコルくんは自分で決めていたからです。


「なに?わぁ、焼き芋だ! おっきーね、ありがとう! あれ、残念そう?どうしたの? そっちと交換しよっか?」


ペコルくんは残念じゃないフリをして、残念を振り払うように言いました


「ううん、ぜーーんぜん、残念じゃない!まーっ、たく残念じゃない、、


 残念じゃないけどね、、、んとね、んとね、、、おやつの焼き芋の一番美味しい食べ方、知っている?」


「???」


「フフフ、おやつの焼き芋はね、おさんぽしながら、食べるのが、いーっちばん美味しいんだよ!!」


「?? おさんぽしながら食べて、いいの?」


「いいよ、いいよ、いいんだよ! だってね、おやつはね、おさんぽしながら食べるのが一番おいしいんだから!」


そうして
女の子とすこし、一緒にあるきながら


焼き芋を食べると


女の子が


「わぁ〜!ホントだ! おいしー!!」


「へへへ」


「これも、オトモダチさんに教えてもらったの?」



「へへへ、、、これは逆さ! ボクがイノーリンに教えてあげたんだ!おやつの焼き芋はおさんぽしながら食べると、いっちばん美味しいんだよ!って、ボクがイノーリンに教えてあげたんだよ!」


ペコルくん(中年のおっさん)は
『世界で一番おいしい、おやつの焼き芋の食べ方』を教えてあげた時の、


イノーリンが
「ホントだ!」と、
とてもびっくりしながら
美味しいそうに言った時の笑顔を


フワフワとゆらめく
焼き芋の湯気の中に
イノーリンの笑顔が
浮かんできたのを
幸せに眺めながら



「やっぱりおさんぽしながら食べるおやつが一番おいしいね」と語りかけながら、、


ちょうどその時、
鳥さんたちのが、
とおくのお空に、群れをなして羽ばたいていくのが見えました。



もしかしたら、何羽かは、あの日見た、鳥さんたちが、
または、その子どもたちが交じっているかもしれません。



今日も、もうすぐ、あの日と同じような、すごくキレイな夕陽が見られそうです。


そしてまた、
あの日と同じように
風がウタを響かせています。


「フフフ、、、」


そんな風のウタを聞きながら



ペコルくんは
いつものように
また、おさんぽを続けるのでした。



マガジン連載中:キンガノカケラ



【おまけ】















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