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『土 地球最後のナゾ 100億人を養う土壌を求めて』足元の土壌を見直すきっかけになる1冊(環境研究)

 ウクライナとロシアの戦争の原因のひとつに「土」がある。つまり、ウクライナが「ヨーロッパのパンかご」と呼ばれる所以は、ウクライナのチェルノ―ゼムという真っ黒い腐食土が肥沃だからだ。チェルノーゼムという世界で一番肥沃な土は、夏場の乾燥期には植物痛いが分解しにくい。逆に日本のような夏に蒸し暑いと微生物の分解活動はピークを迎えるが、ウクライナや北米プレーリーのような寒く長い冬と乾燥する短い夏の地域では、土に含めれる微生物が植物遺体を十分分解できない。そのため5年かかってもとうもろこしの葉が半分しか分解されないという。チェルノーゼム地域では、微生物の代わりに、ミミズが植物遺体をそのまま食べ、腐植と粘土の団結力の高い通気性、廃棄水性に優れた団子状の土になる。まだ、ジリスやプレーリードックが土を耕す。これらの働きが真っ黒で肥沃なチェルノーゼムを生み出す。

 熱帯地方では落ち葉などの供給量は多いが、キノコなどの微生物の分解能力が高いため、落ち葉や腐植は速やかに分解されてしまう。結果として腐植しにくいのだ。腐植は養分を蓄える力を持っていて、土を豊かにする。おかげでウクライナは大麦、小麦、トウモロコシ、油の原料となるヒマワリの種などの世界有数の産地ということになり、ナチスもロシアもこの地を欲しがるひとつの理由だ。日本が満州を植民地としたかった理由に大豆の生産があるが、食料は人間が生きていくのに必要不可欠なものだ。

 ならば人工的にチェルノーゼムを作れば良いという発想も生まれてくる。しかしそれがなかなか難しいようだ。世界にある12種類の土壌から考えると、乾燥地のチェルノーゼムの灌漑農業、オーストラリアの砂漠度では水が欠乏しやすい。インドネシアの熱帯雨林には水があるが、リンが欠乏しやすい。ところが、日本の土壌にはこの2つが揃っているという。日本は食物自給率を高めるだけでなく、足元にあるこの国の土壌は世界の食料不足に貢献できる、ということを知ることができる貴重な1冊だ。

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