引き算の時代、人口減少社会における2つの選択(インサイト、環境研究)
2024年からは50歳以上の人が日本の人口の50%を超え、2025年には約800万人いる全ての団塊の世代(1947~1949年生まれ)が後期高齢者(75歳以上)となることで、国民の5人に1人が後期高齢者という超高齢化社会を迎える。つまり、人口減少社会の現象が如実に現れてくるのが2024年からということになる。
2024年からは考え方を人口減少社会に合わせたものにしていかないと、「あれっ、今までと違う」ということになってしまう。たとえば経営においては、インフレでコスト高の環境では余計なことはやらない、引き算の発想が重要になる。品揃えの削減、営業時間の短縮など。目に見えるカタチ(賃金を上げても人が集まらないなど)で人口減少を肌で感じることが多くなるからだ。
そんなときに参考になるのは、人口の少ない国のビジネスだ。ここではイスラエル、スウェーデン、韓国のビジネスを比較して考察してみよう。
イスラエルのテクニオン研究所のベンチャー企業に脊椎損傷の人向けのReWalkという歩行補助ロボットがある。日本では安川電機が販売しているが、謳い文句は「脊髄損傷による下肢麻痺者の歩行を実現します」だ。つまり、脊椎損傷の人だけを顧客ターゲットとしているのである。当然、900万人のイスラエル国内市場(日本の団塊の世代は800万人)だけではビジネスにならないので、グローバルマーケットがターゲットになる。
同じようなロボットビジネスが日本にもある。
それはサイバーダインという会社から開発販売されているHALだ。HALのニードは次の3つある。
1)福祉や医療分野の動作支援
2)工場での重作業支援
3)災害現場での復興支援活動など
日本の人口は1億2千万人と中途半端で、1)2)3)のそれぞれでそれなりのマーケットがあるということから総合的な展開になってしまう。
イスラエルのReWarkと日本のHALを比較すると、機能は別にして、顧客創造のターゲットが違うことはもちろんだが、マーケットの規模は次のように比較できる。
A)グローバルに散らばる脊椎損傷の患者の集計
B)ドメスティックな医療現場、工場現場、災害現場の集計
日本の人口が右上がりであれば B)は成立するので、B)のマーケティング方針で日本で市場シェアを拡大してからグローバル展開することも成り立つ。しかし、人口減少社会になると、B)は成立しにくくなってしまう。だから、B)の中のどれかを選んで A)のようにグローバル市場に展開しようとすると、当然のことながら困難な壁がいくつかあり、B)に戻るエネルギーがステークホルダーから働いてしまう。
黒部の人に聞いた話だが、ファスナーのYKKはグローバル展開するとき、さまざまな困難から日本市場に戻った方がいいという圧力が働くと、創業者であった会長が机を叩いて怒ったという。つまり、ファスナーというニッチな商品は A)であるからこそ、強みになると考えたのだろう。
グローバルニッチトップという発想はイスラエルだけではなく、人口1,000万人のスウェーデンなどにもある。
人口5千万人の韓国のコンテンツビジネスの考え方も3つのフェーズを経て同じ考え方になっている。
人口減少社会の中で、一時的に売れる売れないという表層の現象はあるにせよ、根底に流れるものは、日本で拡大していく市場は、いずれが消滅する高齢者市場しかない、ということになる。グローバルに活路を見出すのであれば、最初からグローバルニッチトップを目指す、という2つの方法しかないのではないだろうか。
Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。