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『シナリオ・シンキング 不確実な未来への「構え」を創る思考法』ドメスティックなシナリオになってしまう危惧(環境研究、未来予測)

 ハーマン・カーンの「シナリオ・ライティング法」、ピーター・シュワルツの「シナリオ・プランニング」、そして、シュワルツの部下たちの方法論を学んできたが、部下のひとりであるキース・ヴァン・デル・ハイデンから学んだ元オムロンの西村行巧さんの「シナリオ・プランニング」の解説本。

 シナリオ・プランニングを未来予測ではなく、「不連続な変化を組織のメンバーの多くが体感、認識し、変化への適合力をつける手段」として位置づけ、オーガニゼーションラーニングのひとつのツールとしている。

 「われわれはこうすべき、われわれはこうしたい」というときにシナリオという言葉が使われるが、シナリオ・プランニングでは「環境」と「われわれ」は分けて考える。これは、十分にメンタルモデルを意識した上で、「環境」と主観的な意志の表出である「戦略」を分けたいからだとしている。

 南アフリカのモンフールのシナリオを「合意形成を目的とした事例」とし、予測型でない複数のシナリオの必要性、多数の参加者のメンタルモデルが反映された多様性のあるシナリオの必要性の意義を説いている。要するに、適応型シナリオ・プランニング(未来を理解するためのプランニング)でなく、変容型シナリオ・プランニング(未来に影響を及ぼすためのプランニング)の必要性を説いているということになる。

 おそらく、本書の内容から類推すると西村行巧さんはファシリテーションを得意とするのだろう。ただ気になるのは、シナリオ・プランニングの元祖であるピーター・シュワルツが、ダイバーシティを重要視し、人種の多様性からメンバーを選んでいることだ。そうでないと、複数のシナリオがドメスティックになってしまう。大企業がその会社内の人だけ、日本人だけで構成されていて、シナリオ・プランニングになるのだろうか、という疑問が残る。その点がほとんど触れらてていないので、可視化されたシナリオを社内共有し、そのときだけ刺激を与えるレベルで留まってしまうのではないかと危惧してしまう。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。