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『世界標準の経営理論』ダイバーシティ経営ではペアシステムが必要になる(ペアシステム)

 60万字、800ページを超える本だが、読むのは簡単な本だ。なぜなら、辞書的に必要な部分だけを読めばいいからだ。私の場合、イノベーションについて調べたことがあって本書を手にしてみたが、2つの点が気になった。

1)SECI理論を褒めちぎっている

 SECI理論とは野中郁次郎氏の『知識創造企業』で紹介された方法だが、イノベーションは、「共同化」「表出化」「連結化」「内面化」という4つの組織的プロセスがスパイラルに上昇するときに生まれるという考えだ。もともとは「A Dynamic Theory of Organization Knowledge Creation」という論文から生まれ、しかもそれは、グーグルスカラーで24,000を超える引用があるという。

2)ダイバーシティ経営がイノベーションの項目に入っていない

 企業おけるイングループバイアスがダイバーシティ経営の障壁となるとし、次の2つの種類のダイバーシティのあり方で、パフォーマンスがまったく違うことが、経営学で実証研究されているという。

総論1:タスク型の多様性は組織にプラスの影響を与える。
総論2:デモグラフィー型は組織にプラスの影響を与えない。それどころか場合によってはマイナスの影響を及ぼす。

 タスク型とは、知見、能力、経験、価値観などの多様な人材が組織に集まることを指す。デモグラフィー型とは、多様性とは性別、国籍、年齢などの側面で人材を多様化することを指す。要するに、後者は知の探索につながらず、無意識の偏見(イングループバイアス)が存在してしまうというのだ。

 SECI理論を絶賛する理由はわからないが、ダイバーシティ経営とイノベーションを紐つけず、ミクロ心理学の認知バイアスと位置づけていることには疑問を感じる。おそらく、筆者の基本的なスタンスには、ダイバーシティ経営は難しいという根底があるのではないかと思われる。もしそれが、経営学の実証研究論文から熟成された意識であるならば、解決策は組織論に行く着くことになる。

 なぜなら、現在の日本のグローバル企業において、ダイバーシティ経営が避けて通れるとは思えないからだ。そのためには、デモグラフィー型のグルーピング、もしくはセグリゲーションにならないような仕組みが必須になる。Creative Organized Technologyでは、その仕組みを異質なペアシステムとしているが、最近の野中郁次郎氏もペアシステムに注目しているので、ここで入山章栄氏の意識も変わると推測できる。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。