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『ハクソー・リッジ』アメリカの憲法における良心的兵役拒否を描いた映画(世界の歴史)

 ハクソー・リッジとは、ノコギリ崖という意味で、第2次大戦の沖縄の激戦地であった浦添市の浦添大公園内の前田高地(日本軍の陣地)を指す。映画の後半は激戦が続くので、日本人からすると、戦争映画に分類されるのだろう。しかし、これはアメリカの憲法における良心的兵役拒否を描いた映画だ。監督は熱心なカトリック信者であるメル・ギブソン。

 キリスト教の展示場のようなアメリカに根付いた宗派で、非暴力主義の宗派がある。クエーカー、エホバの証人、セブンデー・アドヴェンティストがそれだ。彼らはしかるべく申請すると兵役を免除される。具体的にはこの映画の主人公のように衛生兵となり非暴力的任務を分担する。この良心的兵役拒否は、アメリカ憲法で認められた宗教的自由を認めることだ。この考えは、マタイ伝22章にある「神のものは神へ、カイゼルのものはカイゼルへ」を受け継いだものだ。外面的行動はローマ市民として、内面的行動はキリスト教の規範に従えということである。(パウロは偉大だ)

 映画のシーンで上官の命令に従わないため有罪となる裁判シーンがある。刑が言い渡されると、罰を与えられ服役することになってしまう。その直前に、アメリカ憲法には宗教的寛容(良心的兵役拒否)があることを、裁判官はワシントンの上官から知らされる。ビックモータの社員でいうと、上司の命令に従うことが自分の良心を裏切ることになると、降格や配置転換を覚悟で信念を貫くようなものだ。(この映画の主人公のように、信念のある人はいなかったようだ)

 この映画の主人公は実在した人物だ。ヴァージニア州のセブンデー・アドヴェンティスト派の一人だ。菜食主義者ゆえに、コーンフレークを生み出したケロッグ博士もこの宗派に属する。調べてみると、アメリカだけでなく、良心的兵役拒否を認めている国は、ヨーロッパの国々(17カ国)でも認められているようだ。

 この映画の後半はほとんど戦争シーンだが、戦うのは日米の兵士同士で、終わりはリーダーの切腹で描かれている。平田篤胤の国家のために命を捧げた人は、黄泉の国に行くのではなく、英霊となってこの世に存在し続けるとする国家神道を信ずる日本兵と、アメリカ憲法の宗教的寛容からの良心的兵役拒否の戦いともみれる。

 ハクソー・リッジの戦いを調べてみると、浦添村(当時)では人口9,217人のうち44.6%が死亡。特に前田地域では549人が犠牲となり、戦死率は58.8%と民間人の犠牲も多かったようだ。機会があったら、沖縄の浦添大公園なから眺めれるハクソー・リッジに訪れてみたいと思う。

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