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『パレスチナを知るための60章』ビジネスの可能性としてパレスチナ人を考察している「章」がない(パレスチナ)

 明石書店がこのようなシリーズ物を出版しているとは知らなかったが、その道の専門家が、パレスチナの歴史と現代を60章に分担してまとめたガイドブック的な書籍。私自身がパレスチナで興味があることは以下のように山本七平氏と加瀬英明氏の対談にあるようなパレスチナ人の可能性についてだ。

 加瀬:また、アラブの民衆の眼を外へ向けるのにも役立った。そのくせ、サウジやヨルダンの王家はパレスチナ人は嫌いでしょうね。PLOに対しては、きっと洋服の着方から話し方からすべて、イスラエル人よりも、嫌いだと思う。

 山本:パレスチナ人はレバント系で農民ですから、サウジやペルシア湾岸とはやかり合わないらしいんです。それを知っているから不安があると思うんです。華僑と同じ位置にあるという人もいるんです。しかしペルシア湾の小国ではパレスチナ人が逆にその国を押えて、どこの国かわからない国もあります。一口話ですが、ある国では次官からバスの運転手までパレスチナ人でその国の人は大臣と下層民しかいない。もっとも大臣も実務はパレスチナ人に握られていて、その国が中国を承認したとき、その国の首長が、新聞を見てはじめて「ははあ、おれの国は中国を承認したのか」という、笑い話があるくらいです。皮肉なことに、かつてユダヤ人が占めていた位置は、たいていパレスチナ人が占めているんです。(『神のいる国』より)

 パレスチナ人は、砂漠のアラブ人と違い教育熱心で、現実的で実務的なことから、湾岸諸国で医師や教師やエンジニアなどで活躍している。ヨーロッパにおけるユダヤ人と同じような位置付けだ。私は、イスラエル人やパレスチナ人が日本のグローバル企業で働くことは日本のグローバル企業にプラスになるのではないか(ソーダストリーム社のように)、という仮説を持っている。残念ながら本書には、その観点からの「章」はなかった。

 最後の60章には、米国がパレスチナ問題を「ヨルダンとの何らかの協力関係」の中での解決を考えている、とあるが、私もこの意見には賛成だ。水やエネルギーがイスラエルに支配された状態のままでは国家になることは不可能だし、自力でパレスチナがそれを得ることも難しいだろう。パレスチナ人難民を70%か抱えるヨルダンとの連携が果たせ、EUのようにお互いが自由に往来が可能になるならば、グローバル企業も投資しやすいヨルダン領内に産業が起こる可能性もあり、それに連帯したパレスチナにもメリットがある。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。