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『世界史の分岐点 激変する新世界秩序の読み方』外務省という役所の性格は参考になった(環境研究)

 新刊が届いたので手に取って読みはじめたら、一気に読んでしまった。橋爪大三郎氏は、中国問題(台湾侵攻)の確率が高いと考えているためか、最近の本は戦争論などに言及することが多い。

 本書でもっとも参考になったことは、佐藤優氏の認識として紹介された外務省という役所の位置付けと性格だ。
 外務省は天皇から直接辞令を受ける親任官の数が160名もいることからも、基本的な意識は「天皇の官吏」で、外務官僚に「皇統(天皇制)を擁護したのは我々だ」と強い自負がある。なぜなら、「天皇および日本国政府の国家統治の権限は、連合軍司令官にsubject toする」を「従属する」でなく「制限の下に置かれる」という機転を利かせ、間接占領にした。我々がいなければ天皇制は崩れて日本国家もなくなっていたという、強い自負を持つ集団が外務省とのこと。

 また、インターネット空間での攻防は性格的に海の地政学に近いので、シーパワー、ランドパワーという従来の地政学の常識にインターネット空間をプラスして見直す必要がある。さらに宇宙法の専門家が日本では青木節子さんしかおらず、国は青木さんひとりにすべて頼っているのが現状で、陸海空+インターネット+宇宙に戦闘が広がる時代に心もとないのではないか、と。

 核融合の技術にも触れているが、日本では政治コストがかかりすぎる。以前のロケットは、日本語表記が「ロケット」と「ミサイル」と明確に別れている政治コストがかからなかった、など興味深い分析だ。現在の日本は、アメリカと中国の両方を付き合おうとしているが、アメリカはまだはっきりとそのことを認識していない。世界はアメリカ、EU、ロシア、中国、インド、その他の国々に多極構造時代になり、アメリカと中国が突出するというのが、本書の結論なので、そこには目新しさはない。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。