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シャリタツはサーナイトexデッキにおいて何をするか

変幻の仮面環境の後期頃からシャリタツ入りのサーナイトデッキを見かけるようになった。

特性は見れる枚数が1枚減ったポケギア

サーナイトのサイコエンブレイスは超ポケモン以外にはエネを付けられず、デッキとのシナジーはあまりなさそうだ。
にもかかわらず、時には輝くゲッコウガを押しのけてまでサーナイトのギチギチのデッキ枠に割って入ったりしている。

一体こいつはどんな奴でどんな動きをするのか。
サーナイトというデッキの構造や目標とする動きみたいな視点も含めて迫っていきたい。


とにかくベンチに出しやすい

シャリタツはとにかく出しやすい。ポフィンの片方からも出るし、ボウルタウンからも出る。
同じ潤滑油的な役割をするポケモンにゲッコウガがいるが、こちらは上記2枚からは出すことができない。

シャリタツ1、ポフィン4、ネスト2、ボウルタウン1みたいな配分だったとして、初手8枚のうち、これらのいずれかがある確率は70.59%だ。ハイボ2枚を含めていいなら79.02%まで上がる。
ゲーム関与に高い再現性がある。これは非常に大きな点だ。

入れ替えるギミックは特段採用されない

シャリタツを相棒に据えているタイプのドラパルトexデッキには緊急ボードが多く採用されている。デッキによっては、ポケモン入れ替え(入れ替えカート)、プライムキャッチャーなども入っている。

一方、サーナイトデッキにおいてはこれらのカードは採用されていない。
グッズや道具によらずに、手札のエネを手張りすることによる「逃げ」でシャリタツを出す/逃がす、というのが想定される運用である。

このことから次のことも言える。

先手において有用

サーナイトデッキの序盤の目標として、先手2ターン目・後手1ターン目エボリューションがある。

先手番のシャリタツはこの動きを害しない。スタートポケモンを手張りで逃がして、シャリタツを前に立てる。生きて帰ってくれば次の先手2ターン目にシャリタツに手張りしてエボリューションを宣言する。
この間もシャリタツは特性を2回起動できている。デッキの大きな動きとも符合しつつ、非常に有用な働きをしている。

一方、後攻においては、この動きはできない。手張りはエボリューションの宣言のために費やさなければならず、バトル場のポケモンを逃がすためには使えない。
後攻の方がこの辺シビアだ。

もっとも、後攻1ターン目にエボリューションができないような、事故ってしまっている手札の場合にはシャリタツを使うことになる。
この場合、動きの下振れを救うのにシャリタツは貢献している。

なお、シャリタツ自身がスタートポケモンになる確率について、1積のポケモンがスタートポケモンになれる確率は3.95%程度である。
ない訳ではないが、まぁアテにはできない確率だ。

序盤のペパーを探せる

サーナイトデッキにおいてシャリタツが採用される理由として大きいのが、序盤におけるペパーの重要性だと感じている。
先手2ターン目・後手1ターン目エボリューションがデッキの目標だと述べたが、ペパー1枚でこれがほぼ達成できるからだ。

ポフィン+エボリューションの組み合わせで持ってくることによってポケモン側が調達できるし、エネの側がないならポフィンを大地の器に変えてやってもいい。

先ほど先手のシャリタツはエボリューションまでに2回特性を起動できると書いたが、2回の起動でこいつは上12枚見ることができる。
2ターン目までに初手7枚+2回のドローで、合計21枚を見ていることになる。4積みのペパーに触れられる可能性は83.13 %と非常に高い。実際には大地の器やポフィン等でデッキが圧縮された状態でシャリタツのめくりが入るのでより高い確率となることが多そうだ。

事故を解決する

本題は恐らくここだ。
シャリタツはデッキの下振れを救いうる。

サーナイトデッキにおける事故とは何か。
日々様々な形で困った初手は来るのだが、言語化すると概ね次の通りになると思う。

①ペパー・ナンジャモを引けず、展開に必要なカードが足りない(特に十分なキルリアも出せずにリソースも増やせない)
②サーナイトの進化ラインに係るポケモンが展開できずに、アタッカー/対策ポケモン/非ボール系のグッズ、が滞留している

①と②がそれぞれ原因・結果の関係だったりもするので切り離して考える実益も特段ないが、要は、いずれもペパー(によってもたらされるポフィン+エボリューション)が引けていないゲームは事故りやすい。

それをシャリタツは解決しうる。例えば、先行1ターン目に唯一のネストボール/ボウルタウンだった場合には、サーチをシャリタツに充ててしまっていいだろう。
ペパーを含まない初手8枚+シャリタツ1枚が除かれた残りの山札から、
・1ターン目:40.38%(山札51枚の上6枚に4積みのペパーが1枚以上ある確率)
・2ターン目:41.05%(山札50枚 同上)

2回の試行により結構な期待値でペパーに触れることができる。ペパーがヒットしなくても次善にナンジャモにも触れうる。
初手にキルリアがあった場合、ゲッコウガが採用されている場合…など最適解が変わりうる条件はあるにせよ、とにかくシャリタツが1枚採用されることによって、任意のポケモンサーチカードから、これ位の下振れの下限を設定できる。

(これは大変に余談だが、シャリタツが一生懸命にペパーを呼んでいる様や、見かねたナンジャモが駆け寄ってくる様などは想像するにいい絵面だ。緊急ボードをつけたシャリタツのイラストが好きなのだが、フレーバーみが溢れた奴なのでシャリタツは気に入っている)

運用には2エネ必要

2ターン目エボリューションに向けた、サーナイトが必要とするリソースの内訳について、シャリタツが関与する場合は以下の通りになる。

1ターン目
・任意のポケモンサーチカード/シャリタツ自体
・エネ1(場のポケモン逃がす用)
2ターン目
・エネ1(エボリューション宣言用)
・2匹のラルトス
・エボリューション

2ターン目のリソースはペパー・ナンジャモによって調達してもよいのだが、重要なのはターンを跨いで2エネ必要ということだ。2ターン目のペパーから大地の器を打つのでは1ターン目のエネが足りない。
ただ出せばいい輝くゲッコウガと違い、シャリタツを運用するのにはハードルがある。

さらっと書いたが、どれくらいの確率でシャリタツを動かせんだろうか。ちょっと考えてみる。
要は初手8枚に①エネが2枚以上あるか、②大地の器があればいいという話だ。
(エネに関しては、初手に1枚あり、2ターン目のドローで1枚引いてもよいのだが、初手の時点でないと1ターン目に行うサーチの判断的には好ましくない)

超・悪エネ計10枚、大地の器2枚、という一般的なサーナイトの配分だと、
①39.98%、②25.08%の計65.06%となる。ちょっと怖い確率だ。

シャリタツを動かすという観点からならエネよりも大地の器の方が偉い。仮に1枚ずらして、超・悪エネ計9枚、大地の器3枚にすると、
①34.39%、②35.42%の計69.81%であり、配分を変えただけで4.75%上がる。

まぁシャリタツがスタートポケモンの場合は、1エネでいいし、
そうでなくても、任意のポケモンサーチ、1エネ、ポフィンという初手ならペパーから、
任意のポケモンサーチ、1エネ、エボリューションという初手ならナンジャモからシャリタツを運用できるので、ここで出した数字以上に使えはしそうだ。

ベンチ枠圧迫が問題とならないケースが多そう

シャリタツの運用のされ方としては、専ら1ターン目にポフィン等から呼ばれて(場にいたポケモンが手張りで逃がされ)場に出され、ターンを跨いで2ターン目にエボリューションの宣言役となる。
つまり、バトル場に無防備に居座ることとなるため、エボリューションの返しに落とされることとなる。この点、輝くゲッコウガ等の盤面に残る前提のシステムと違い、シャリタツはベンチ枠を圧迫せずに済む。

エボリューションの返しのターンに、相手が裏呼びからキルリアなどをバトル場に出させて、場のキルリアが落とされることもあるだろう。
その場合にはシャリタツは存命するが、場のポケモンが落ちたのを契機に再度バトル場に出せる。シャリタツを逃がせる手張りエネさえ工面できれば特性をもう一度使えるため、悪い話ではない。
以降、場のポケモンが落とされるのを契機に、逃げエネ1枚と引き換えにサポートを探すマシーンになる。中・終盤はボスやフトゥーが偉いのでベンチ1枠分の仕事はするだろう。

一番問題なのは、裏呼びからマナフィ等を前に出された後にベンチ狙撃される場合だ。この場合にはベンチ枠圧迫の問題が生じてしまう。シャリタツの特性も使えないので最悪だ。
新弾のキチキギスexは汎用的なベンチ狙撃要員で様々なデッキへ採用が考えられるため、このようなシチュエーションもひょっとしたら頻出するかもしれない。

対策ポケモンとのバッティング

サーナイトは立ち上がりの遅さ故に、特定アーキタイプへの対策ポケモンが採用される。
どれくらい入るかはまちまちだが、例えば、ロストに対してはハバタクカミ、もっと広く止めれるクレッフィ、殴り出しが早いexデッキに対してはミミッキュといった具合だ。

こいつらは共通して、バトル場に居座ってこそ、という特性をもつ。
シャリタツは居座る必要こそないものの、ポケモン入れ替え等のギミックがないために、これらのポケモンとバッティングしてしまう。

クレッフィなどの対策ポケモンを前に立てるゲームにおいては、シャリタツは序盤にゲーム関与させることができない。

後は、ベンチにシャリタツを事前に呼んでおいて、バトル場のポケモンが気絶するのを契機に場に出す、みたいな運用をそのゲーム中するかどうかだ。次のターンにボスが欲しい場合にはぜひ検討したい。
「バトル場に出す」択は他にも、キルリアorサーナイトを出すことで、マシマシラ用に逃げエネ2個分のダメカンを供給するプレイもある。手札状況やベンチ枠にも気をやりながらプレイングを検討しよう。

シャリタツ採用のサーナイトデッキを見る

サンプルA群

6月8日 TOURNAMENT OF DOOM!(139名)1位、
6月6日 Late Night SPE - NA (NAIC Prep)(128名) 2位、
6月4日 Free Entry ║ Deck Out Mondays(226名) 1位
(3大会とも同一リスト)
6月1日 Peladão da Baixada #112 • Path To The NAIC(56名) 3位、
5月28日 Sunny's Weekly #156 Sunny's Birthday Masquerade(128名) 1位
(2大会とも同一リスト、↑のリストからフワンテ1→改造ハンマーに)

ナンジャモが3なのだ!(4枚採用が多い)
これは私の解釈だが、シャリタツを採用するスロットは4枚目のナンジャモを削ることによって作ったのではないか!

サポートを欲してシャリタツを採用しているのに、その為にサポートを削るのは一見、本末転倒にも思えるのだが、実はサーナイトデッキにおいて、ナンジャモ1枚をポケギアに置き換える試みがこれまでにされたことがある。
以下はクリムゾンヘイズ環境において書かれたnoteの抜粋である。

ポケギア
夢幻杯以降、ナンジャモ4枚に変更してしばらく練習してたが、ゲーム中に使うのは最大2回が多いことで余分に感じてた(リファインのコストになりがち)。また、後攻1ターン目にナンジャモを使ってエヴォリューション引けお祈りをしてる自分がいた。なら、まずはエヴォを使えるように意識しようと考え、タウンデパートやエヴォリューション3枚目なども試した。ただ、タウンデパートはリザ側が喜んで森の封印石を手札に加えてきたり、エヴォ3枚目は序盤以降リファインのコストにしかならないことから、実質ペパー5枚目としてポケギアに辿り着く。結果的に序盤にペパーを持ってない時にペパーを引ける可能性を高めたり、終盤ではボスを引き込むための手段として終始活躍するカードであったからマジで試してほしい!

【全文無料】無限杯3位、CL愛知6-3|サーナイトexデッキ解説とげきす@ポケカ

引用箇所以外にも非常に記載が豊富であり、現環境でも活かせる記述が沢山あるので、ぜひ、上記引用の記事はご一読いただくことを強くお勧めする。

さて、ポケギアの問題点として、ポケギアそれ自体も直引きする必要があったが、シャリタツはサーチからアクセスでき再現性が高い。
加えて、先手番で運用できる限り、ポケギアよりも多い山札の上12枚を見ることができる。

後手番の苦しさこそあるがシャリタツは上記の構築思想をより高い確度で補強できているのだ。

サンプルB

6月7日 NAIC 2024(2,692名) 3位

大地の器3!(2枚採用なことが多い)、超エネ7!(8枚採用が多い)
シャリタツの運用には2ターンに跨って2エネ必要なことを指摘したが、この大地の器3からは初手に直引きしてこの2エネを賄うという意思を感じる!

さっきからオタクがデッキのカード1枠でキャッキャ盛り上がっている様を見せて申し訳ないのだが、私はこうした意思を感じるデッキ構築が堪らなく好きなのだ。

ちなみに、こっちはナンジャモが4枚しっかり取られている。
サポートがない初手だった場合、残り52枚の山札から上6枚見て、目当てのカードが7枚(ペパー4+ナンジャモ3)だった場合、1枚以上ある確率は60.80%だが、これが8枚(ペパー4+ナンジャモ4)なら、1枚以上ある確率は66.15%になり、5.35%あがる。

サンプルC

ポケモンジャパンチャンピオンシップス2024 TOP8

サンプルBにも共通する論点であるが、気になるのは、クレッフィが採用されていること!輝くゲッコウガが採用されていないこと!の2点だ

クレッフィについて、既に指摘した通り、このポケモンはシャリタツとバッテングを起こす。
同居しているとプレイング上の問題が発生するが、自分が事故っているときはシャリタツ、回りそうな時で相手に刺さりそうならクレッフィを立てるという運用になるだろう。

勿論、自分の展開が多少不自由でもクレッフィを立てることはありそうだ。
例えば、ミライドン対面なんかは、相手のミライドン・イキリンコ展開を許すと、せっかく前にシャリタツを立てたとしても後攻1ターン目にぶっ飛ばされて、生きてターンが返ってこないことが想定されうる(そういう意味ではサンプルA群のリストにはミミッキュが代わりに採用されている)

ゲッコウガについて、別にシャリタツと二者択一的ではない(現にサンプルA群のデッキでは同時採用している)のだが、
比較点としては
①シャリタツはサーチしやすい(ゲッコウガはポフィン・ボウルタウン非対応)
②ゲッコウガはハバタクカミ・ミミッキュと併用できる。クレッフィとはシャリタツ同様併用できない
③ゲッコウガは1度に上2枚を掘る、シャリタツは1度に上6枚を見れる
④ゲッコウガは継続的にエネをトラッシュに送る、シャリタツは2エネのみ
⑤ゲッコウガは盤面に残り続ける、シャリタツは基本討ち死に

最も重要な違いは①の出やすさの違いだ。
サンプルB・Cのリストはネスト1-ボウルタウン2(ゲッコウガ採用のサンプルA群はネスト2-ボウルタウン1)の配分になっている。

ボウルタウンは序盤のキルリア展開に貢献するのは勿論だが、特にサンプルB・Cのリストはマシマシラ2枚採用だったりと、継続的にポフィン非対応のポケモンを引っ張ってこれるのが偉いのだ。
スタジアムなので、ジャミングタワーを割る役割が担えるのも大きい。

このようにゲッコウガの出にくさはデッキ構造にも影響を与えてしまう。
まぁ一方でゲッコウガにもカイでサーチできるという唯一性も勿論ある。

シャリタツ採用は要はペパーを引き増す試みだが、ペパーのような役割を担うカードとしてカイを併用するというのも、初動の安定という同じ視座に立ったアプローチの1つである。
現にペパーとカイを散らして初動のサポートを厚くとったリストが結果を残している。

6/1【土】ポケカ四天王シマダダイチ PJCS使用構築

私はサーナイトのデッキリスト収集が趣味なのだが、リストの大部分が同じなように見えて、こうした細部の部分でデッキビルダー達の創意が垣間見えるのが非常にいい。

終わりに

事故らないデッキはすべてのカードゲーマーの宿願である。
私も事故は大嫌いだ。勝ち負け以前に楽しいプレイ体験を大きく損なう。

シャリタツはポフィン・ボール・ボウルタウンから事故を解決する試みの1つであり、大いに注目している。
サポートを引けていないゲームは本当に身動きが取れなくて負けうる。デッキの1枠をシャリタツに割くだけでそういったゲームでも立ち回れるようになるのなら検討の意義は大きい。

今回はサーナイトデッキという枠組みの中でシャリタツを検討したが、シャリタツが採用されるというのは結構すごいことだと思う。
何せ、サーナイトは緊急ボードも入れ替えカートも採用していない。シャリタツの為にデッキが犠牲にしているものが全くないのだ。

手張りエネの価値の低いというサーナイト特有の事情は勿論あるにせよ、序盤に殴らない(攻撃機会をエボリューションに割く)ポフィン4積みのデッキは潜在的にすべてシャリタツを採用する余地があるという話になってくる。
こいつはひょっとしてロトムVくらいの汎用性に満ちたやつなのかもしれない。

(この記事はこれで終わりでお賽銭箱だけ置いておきます。次はサーナイトデッキのエネルギー配分について記事を書きたいと思っているので励みになります)

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