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豊かな土壌動物群集をもつ畑地にそなわる機能(1)


土に生きものがいることの意味

土壌動物が畑地で「生きている」ということは、私たちヒトと同じように、そこで呼吸をし、ものを食べ、糞を出し、周囲のようすを感じて反応する、ということを日常的に行っていることです。そして、この「生きる」ということを通して、有機物の分解、土壌の耕耘、養分の無機化などのさまざまな働きを、周りの環境におよぼしています(たとえば中村1998、藤田 2004)。

土壌生物が豊かな畑にそなわる機能

土壌動物や微生物が豊かな畑では、貧弱な畑とどのような違いがあるのかを、農業と関わりの深い、1)有機物の分解機能、2)生物による密度調節機能、3)資源の有効利用-窒素を例に-の3点について紹介します。

1)有機物の分解機能

土壌動物にはさまざまな食性(どのようなものを餌としているのか)がみられます。すなわち、微生物食性、糞食性、腐食性、捕食性そして雑食性などです。このような餌の異なる生物群集の存在する土壌に有機物が施用されたとします。

施用された有機物は、さまざまな土壌動物や微生物によって利用・分解されます。すなわち、図1に示したように、ミミズやダンゴムシ、ヤスデなどの大型土壌動物は有機物を食べて糞を排泄します。その糞や他の有機物は、トビムシやササラダニ、ヒメミミズなどのさらに小さな中型土壌動物の餌としてかみ砕かれ、糞として排泄されます。これらの糞やかみ砕かれた有機物破片は、さらに小型の原生動物や微生物に利用されます(図1)。

図1 有機物の分解に関与する土壌動物(藤川 1973)

このように、それぞれの段階に応じた土壌動物や微生物の作用を受けて、有機物が円滑に分解され、無機化された窒素やリンなどは植物に吸収・利用されます。土壌中の有機物を起点とした、さまざまな土壌動物や微生物が関与するこのような分解系を、腐食連鎖といいます。

一方、この分解過程のなかで、分解されにくい安定した有機化合物(腐植)も生成され、土壌団粒の形成土壌養分の保持力の向上に寄与するため、その量が増加することによって土壌の物理的、化学的性質が改善されていきます。

他の機能は、2)生物による密度調節機能3)資源の有効利用-窒素を例に-をご覧ください。


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