豊かな土壌動物群集をもつ畑地にそなわる機能(2)
土壌動物や微生物が豊かな畑にそなわる「生物による密度調節機能」について紹介します。
土壌生物が豊かな畑にそなわる機能
2)生物による密度調節機能
ある生物は他の生物を餌として食べ、別の生物に餌として食べられます。生物群集ではこのような「食う-食われる」の関係が網の目のようにつながり、農地生態系においても、さまざまな「食う-食われる」の関係があります(図2)。
地上部には植物(作物、雑草)を起点に植食性動物 (害虫)、捕食性動物(天敵)とつながる関係(生食連鎖)があります。いっぽう、前述の土壌有機物を起点としたさまざまな土壌動物や微生物(分解者)が関与する分解系、これらを餌とする捕食性動物との関係(腐食連鎖)があります。そして生食連鎖と腐食連鎖は連結し、より複雑な食物網を形成しています。
畑地に複雑な食物網が形成されることで、特定の生物が異常繁殖するのが抑えられています。捕食性動物の食性には、餌の選択性の狭い狭食性と選択性の広い広食性があり、土壌動物にはクモやムカデなどの広食性の動物が多くみられます。すなわち、分解に関わるトビムシやササラダニなどの土壌動物は、多種類の動物を餌とするクモやムカデなどの餌となります。しかも、分解に関わる土壌動物は年間を通じて密度が安定しているため、作物がなく害虫の発生しない時期にも捕食性動物群集の維持に寄与しています。
たとえば、長野県松本市(黒ボク土)でタネバエの発生しやすい6月上旬にエダマメを播種した場合でも、先に紹介した土壌動物群集が豊かでクモなどの捕食者が多い有機農業畑では被害が少なくなりました(藤田 2002)。
これに比べて、土壌動物がほとんどみられない慣行農業畑では、農薬を使用しなければ出芽率は極端に悪くなりました。
これは有機農業畑に常に棲息している捕食性動物が、タネバエの異常発生を抑制しているためと考えられます。
他の機能は、1)有機物の分解機能、3)資源の有効利用-窒素を例に-をご覧ください。
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