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農地に適した栽培しやすいタネができる自家採種に挑戦しよう

有機農業で使うタネは、栽培しやすい地域に残る在来種やその土地で採種され代々ほぼ同じ形質が受け継がれた固定種を優先するように心がけましょう。


栽培しているタネの成り立ち

私たちが日々食べている農作物は、もともと野生植物からヒトが長い時間かけて選び出して作り出したものです。タネを播いても一斉に発芽しなかったり、収穫時にタネがこぼれ落ちたりする野生植物がもっていたヒトにとって不都合な性質を、栽培を通して都合のよい性質の品種へと遺伝的に変化させてきました。現在、私たちが目にする栽培作物は、多くのヒトが関わって選抜された歴史的産物でもあります。

自家採種したタネにそなわる能力

自家採種をしたエダマメのタネと市販のタネとを自家採種をした畑で比較栽培しました。
平年時には生育に差が見られませんでしたが、播種後降水量が極端に多い年には、市販のタネではタネバエの被害がひどく、ほとんど発芽しませんでした。しかし、自家採種したタネでは被害が見られませんでした。

自家採種を続けることで、その畑の性質(土壌や気象条件など)にあった環境適応能力を備えたタネになっていくのでしょう。この能力を利用して、肥料を与えず、耕起をしないなど作物にとって厳しい条件の畑で採種することで、少肥で育つ根張りのよいタネを選抜することも可能です。
さらに自家採種をすることで購入するタネを減らすことができ、栽培に関わる経費の削減にも繋がります。

作物の一生を知る

スーパーの野菜売り場に並ぶ商品としての根菜類(ジャガイモ、ニンジン、ダイコンなど)、葉菜類(ハクサイ、キャベツなど)、果菜類(トマト、キュウリなど)を見ていても、それぞれの作物の一生(タネからタネまで)に思いをはせることはまずないと思います。しかし栽培を手掛けると、作物のどの生育段階で収穫しているかに気付き、さらに採種を行うことで、作物の一生を知ることができます。

採種は特別ことではなく、古くからその土地土地にあったタネを、ヒトが生きるために、守り育てられてきた技術なのです。

参考図書

中川原敏雄・石綿薫『自家採種入門―生命力の強いタネを育てる』農文協、2009年
中川原敏雄「有機農業の育種論」中島紀一・金子美登・西村和雄(編著)『有機農業の技術と考え方』コモンズ、2010年、164-190ページ
有機農業参入促進協議会監修、涌井義郎・藤田正雄・吉野隆子・大江正章『有機農業をはじめよう!――研修から営農開始まで』コモンズ、2019年

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