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個人商店の心構え 〜デザインの秘伝05〜

残念なのですが、専門領域の技術には、どんなものにも消費期限が決まっているんですね。

デザインがコモディティ化しているなど言われていますが、実際にプロでなくても誰でも簡単に扱えるツールがあり、それなりにデザイン性の高いアウトプットができる世の中になっています。技術の進化の賜物です。

技術には時価のようなものがあります。当然ですがインフレすれば価値は下がりますし、DTPが写植の仕事を奪ったように、技術革新が起きる事で領域自体が消滅してしまう可能性もあります。

そうなっては商売が成り立たないので、別の専門技術を探して習得に時間を費やします。

どんどんやれることが増えていくので、なんだか強くなった気分になるのだけど、それもまた期限との追いかけっこになってしまいます。

技術は仕事の幅を拡張してくれるのですが、大事なことは技術を通して自分をどのように成長させる事ができるのかになります。

技術を上手に扱えるようになることと、技能として体に染み付いていくことの2つを意識することが大事ということですね。

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会社員としてデザイナーを続けていると、フリーランスとして独立していく同僚の門出に立ち会う事があります。

以前の職場では、そんな同僚に対して「技術の切り売りだけはするなよ」なんて言葉で送り出すことが暫しありました。

技術の切り売りとは何でしょう?
例えば、デザイナーをしていると「ちょっとこれ、お願いできます?」
なんて、小さな頼まれごとのようにデザインをお願いされることって多いと思うんです。そんな時、優しい人は皆やってあげちゃうんですね。
自分の経験の範囲内で完結するので「全然OKです〜」といった感じで軽いものです。依頼した側も喜んでくれますし、こちらも嬉しいです。
しかし、これが技術の切り売りなんですね。

経験の範囲で仕事をしていると、いつの間にか技術の賞味期限が迫ってきてしまいます。技術に自信を持っている人ほどこれをやってしまう人が多いと思うんです。
金太郎飴のように再現性の高いアウトプットを切り出していても、いつか古いものになってしまいます。
大切なのは、金太郎飴のお菓子としての楽しさや魅力、または技術を転用するアイデアです。言ってみれば、飴を切り出す職人の視点ではなく、飴を売る店主の視点が必要なんです。

デザイナーという職業は一人一人が個人商店でなくてはならないと思います。ただ技術を扱っているだけでなく、技術から何を学び取りどのように活かしていくのか。お店としての骨格を一つ一つ組み上げていくイメージでしょうか。成長の伸び代がより立体的に見えてくると思います。

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